Journal Club【20130227】HIV患者での大動脈の炎症

 

「Arterial Inflammation in Patients With HIV」

Sharath Subramanian. et al

MR-PET-CT Program and Department of Imaging, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, Boston, Massachusetts

JAMA. 2012;308:379-86

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22820791

 

HIV患者において大動脈の炎症をFDG-PETにて検討したcross-sectional study

 

<背景>

l   HIV患者にて心血管イベントが多いといわれているが、原因ははっきりとしていない

 

<対象>

l   2009-2011年にMassachusetts General Hospitalに受診した81例。

l   HIV患者が27例、1つ目のcontrol群として性別、年齢、Framingham risk score(FRS)をマッチさせた27例(Non-HIV FRS matched controls)と、2つ目のcontrol群として性別、年齢をマッチさせ動脈硬化病変がある27例(Non-HIV atherosclerotic controls)で、18F-FDG-PETを用いて血管壁の炎症と冠動脈CTを用いて冠動脈の石灰化をcross-sectionalに検討した。

 

<方法>

l   main outcomeは、動脈壁の炎症の有無とし、上行大動脈へのFDP取り込みと静脈への取り込み比(TBR)を計算して炎症の定義とした

 

<結果>

l   HIV例の病勢はよくコントロールされており、全例で抗HIV薬の投与を受けていた。

l   FRSはHIV群、Non-HIV FRS matched controls群ともに低値であった。

l   大動脈壁の炎症はHIV群にてNon-HIV FRS matched controls群より高かった(2.23 vs 1.89, p<0.001)。しかしNon-HIV atherosclerotic controls群とでは同じような値であった(2.23 vs 2.13, p=0.29)。

l   心血管リスクを調整しての解析でも大動脈壁の炎症はHIV群にてNon-HIV FRS matched controls群より高値であり(p=0.002)、ウィルス量、カルシウム沈着、喫煙、LDLcho、FRS値にて層別解析を行っても同様の結果であった。

l   HIV患者群で大動脈壁炎症とsCD163に関連が見られた(p=0.04)が、CRPやDダイマーとの関連性は見られなかった。

 

<Discussion>

l   FDGはactiveなマクロファージに取り込まれ、動脈壁へのFDG取り込みとプラークへのマクロファージへ浸潤程度との相関関係が以前報告されている。また、TBRとCVDリスクの上昇も報告もある。

l   またマクロファージの活性化マーカーであるsCD163と動脈硬化との関連性も報告されている。

l   上記から、HIV患者においてマクロファージの活性化が動脈硬化に何らかの影響をきたしている可能性が示唆された。

l   limitationとしては、単球とマクロファージ活性化についてはsuggestできるものの炎症が増えているととの因果関係に断言はできない試験デザインであること、抗HIV治療薬自体が動脈壁への炎症に関与している可能性について不確かであること、女性の割合が比較的に少ないこと、まずHIV群を抽出した後にコントロール群を画像のデータベースから選択する方法が適切でない可能性があること、が挙げられた。

 

 

 

「雑感」

動脈硬化のような軽度の炎症を拾ってしまうPETであるのであれば、大動脈炎との違いはどのように行えばよいのであろうか。またSLEの動脈硬化などの早期発見に使用できる可能性があると思われる。

 

 

担当:矢嶋宣幸

 

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