Journal Club【20130911】DMARDs(非Bio)の使用中のRA患者は悪性腫瘍のriskは高まる?

Risk of cancer in patients receiving non-biologic disease-modifying therapy for rheumatoid arthritis compared with the UK general population

ILouise K. Mercer et al.

Rheumatology (Oxford) 2013;52:91-98

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23238979

DMARDs(非Bio)の使用中のRA患者は悪性腫瘍のriskは高まるのか? 

[目的]

・非Bio使用中のRA患者の癌発症割合を一般UK人と比較する。

 

[方法]

・Bio-naiveで非Bio DMARDs治療を受けているBSRBR(British Society for Rheumatology Biologics Register)登録しているUKのRA患者。

・2002-2009年に施行。

・癌のSIRは年齢、性別を調節し、UK一般人と比較。

・研究開始以前の癌の有無は、NHS-IC(National Health Service Information Centre)の癌レジストリーから抽出した。

・非メラノーマ皮膚癌を除き、UKの癌の99%以上を網羅している凄いレジストリーである。

・Followは死亡(NHS-ICの登録からデーターを引用し、疾患名はICD-10に従う)、Bio導入、2009.12.31か最終来院日までフォロー。

・6か月毎に3年間にわたり、質問し、治療変更、Bio導入などを調査した。

・RAの疾患活動性評価:DAS28

・HAQ、既往並びに現在使用しているCyA, AZA, CYC, NSAIDsも調べた。

 

[結果]

・3771人のRA。13315人年のフォロー。背景はTable 1。

・182癌が報告され、156固形癌、26骨髄orリンパ増殖性癌(Table 2&3)

全SIR                                   :1.28(95%CI 1.10-1.48)

肺癌                                     :2.39(95%CI 1.75-3.19)

ホジキンリンパ腫                 :12.82(95%CI 4.16-29.92)

非ホジキンリンパ腫              :3.12(95%CI 1.79-5.07)

前立腺癌                              :0.35(95%CI 0.11-0.82)

婦人科生殖器癌         :0.35(95%CI 0.11-0.90)

その他はTable 4

リスクなし:癌の既往の有無、RAの罹病期間(3-10年)、NSAIDs使用、DAS28, HAQ

リスクあり:現在の喫煙と既往の喫煙は非喫煙と比較して2倍以上、罹病期間3年未満、AZA, CyA, CYCの使用歴

 

[議論と限界]

・ざっくり言って、DMARDs使用中のRA患者は癌の発症率が28%高まる。

・AZA, CyA, CYCの使用歴があると、65%高まるが、その患者さんはDMARDsの使用割合が低い。

・RAの癌の経過にHLA-DRB1が関与するという話があるが、BSRBRのデーターにはない。

・前立腺癌と婦人科生殖器癌の発症率が低くなる理由は不明。

・NSAIDsによる大腸癌抑制効果と同じ理由を考えたが、今回の研究ではNSAIDsは関与なし。

・リンパ腫はこれまでもRAで発症率が多いことは報告されており、とくに変わりなし。

・肺癌は喫煙か。

・本研究の強みはNHS-ICの癌レジストリーと比較していること。

・限界は、実はBSRBRの登録自体、もともとBioの登録を主に行っており、その一部を拝借している。なので、母集団に問題あり。悪性リンパ腫発症に関連性があるMTXについての情報が記載されていない

 

[結論]

・RAの癌リスクは一般人と比較して全般的に高い。

・特に、肺癌、リンパ腫(ホジキン、非ホジキン共に)

・TNFのようなBio治療中の人の癌リスクとの比較検討も必要だね。

注)現在、日本ではBioを使用中の患者さんの癌発症前向きコホート(SECURE study、MD大 針谷教授が主任)が進行中です。

  当院もそのStudyに参加しております。

                         担当:三輪裕介

 

 

**********************************************

・昭和大学リウマチ膠原病内科では毎週水曜日にJournal Clubを通じ新しい知見を得る機会を設けています。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、若手医局員の教育に注力しております。詳細はこちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、研究するための時間を確保するprotect time制度を開始いたしました。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、他医療機関での研修を年に1週間行っております。こちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、広い視野を持てる医師を育成したいと考えております。医療コミュニケーション教育理論の勉強会を行っております。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、手稲渓仁会病院の岸田先生による感染症専門医による感染症コンサルテーションを年に3−4回行っております。詳細はこちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、今年度から新たにケースベースの膠原病勉強会を開始いたしました。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科にて研修された研修医の先生の感想を掲載しております。こちらをご参照ください。

 

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始