Journal Club【20140625】骨粗鬆症治療においてテリパラチドとデノスマブは併用が良いのか、単独が良いのか?

Teriparatide and denosumab, alone or combined, in women with postmenopausal osteoporosis: the DATA study randomised trial.
Tsai JN1, Uihlein AV, Lee H, Kumbhani R, Siwila-Sackman E, McKay EA, Burnett-Bowie SA, Neer RM, Leder BZ.
Lancet. 2013 Jul 6;382(9886):50-6. doi: 10.1016/S0140-6736(13)60856-9. Epub 2013 May 15. 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23683600
 
骨粗鬆症治療においてテリパラチドとデノスマブは併用が良いのか、単独が良いのか?

 
【背景】
骨粗鬆症治療薬の併用療法において、BP製剤とPTH製剤の併用はPTH単独より効果が劣り、anabolic agentsとの併用療法は有効性が確立されていないのが現状である。この研究ではテリパラチドとデノスマブの併用および単独療法を評価した。
 
【方法】
2009年9月~2011年1月までの間に45歳以上で閉経後3年以上経過している骨粗鬆症の女性患者で骨折リスクの高い患者(Tスコア<-2..5と50歳以降の骨折、両親の50歳以降の頸部骨折、甲状腺機能亢進症、腕を挙げた状態で椅子から立てない、現行の喫煙、T<-1.0で脆弱性骨折の既往)を登録しランダム化比較試験をMassachusetts General Hospitalで行った。 
除外基準は高Ca血症、副甲状腺機能亢進症、25OHD濃度<50nmol/L、骨の病気、貧血、悪性腫瘍および放射線治療既往、重症の心・肺・肝・腎障害、精神病、過度の飲酒、登録6ヶ月以内のGC、BP、3ヶ月以内のSERM、カルシトニンおよび静注BP、PTH、ストロンチウムの投与歴のある患者とした。Caは1200mg/日、VitDは25OHD濃度>50nmol/Lになるように摂取させた。 
患者は①テリパラチド20μg/日、②デノスマブ60mg6ヶ月1回投与、③テリパラチド+デノスマブ併用に1:1:1で割りつけられ、骨密度と骨代謝マーカー(OC、P1NP、CTX)が0、3、6、12ヶ月で評価された。主要評価項目は12ヶ月における腰椎骨密度、2次評価項目は大腿骨近位部骨密度(total hip、頸部)、橈骨遠位端1/3骨密度と3, 6, 12ヶ月におけるOC、P1NP、CTX値とした。
 
【結果】
100人が登録され6人が解析前に、2人が解析後に脱落し計92人で解析が行われた(Fig.1)。どの群も似たような患者背景であった(Table.1)。
12ヶ月において腰椎骨密度は全ての群で有意に増加し、併用群(9.1±3.9%)ではテリパラチド単独群(6.2±4.6%)およびデノスマブ単独群(5.5±3.3%)より有意に高い増加を認めた(Fig.2,Talbe2 )。
テリパラチド単独群とデノスマブ単独群には有意差認めなかった。大腿骨頸部骨密度はデノスマブ単独群と併用群でベースラインより有意に増加したが、テリパラチド群では有意な骨密度の増加は認めなかった。12ヶ月における骨密度の増加は併用群(4.2±3.0%)がテリパラチド単独群(0.8±4.1%)、デノスマブ単独群(2.1±3.8%)より有意に高かった。テリパラチド単独群とデノスマブ単独群には有意差認めなかった。total hip密度におていは12ヶ月において、テリパラチド単独群よりデノスマブ単独群で有意に骨密度が増加していた以外は、頸部骨密度と同様な結果であった。橈骨遠位1/3骨密度はテリパラチド群でベースラインより有意に低下した。12ヶ月においてはテリパラチド群と比較すると併用群とデノスマブ単独群(p=0.0009)で有意に増加していた。
 
骨代謝マーカーについては、テリパラチド単独群のみ血清OC、P1NP、CTX値がベースラインより全ての測定時に上昇していた(Fig.3A)。
OC値はデノスマブ群においてベースラインより全ての測定時で減少しており、併用群においては6ヶ月、12ヶ月時においてベースラインより有意に減少していた(Fig.3B)。
P1NPについては、デノスマブ単独群と併用群では全ての測定時においてベースラインより有意に減少し、3ヶ月時は併用群よりデノスマブ単独群において有意に減少していた。CTX値についてはデノスマブ単独群も併用群も全ての測定時でベースラインより有意に減少していたがデノスマブ単独群と併用群に差は認めなかった。治療と関係する重篤合併症は認めなかった。
 
【考察】
併用群は単独療法より腰椎、大腿骨近位部(total hip、頸部)の骨密度を有意に増加させた。また12ヶ月における大腿骨骨密度の増加はこれまでの骨粗鬆症治療薬と比較しても高かった。この研究において併用群ではCTX値が示すように急激かつ持続的に骨吸収は抑制され、これはデノスマブ単独と同様な結果であった。また、骨形成マーカーのOCとP1NPがデノスマブ単独群より併用群の方が弱い抑制であった。
つまりデノスマブとテリパラチドの併用では骨形成の抑制はデノスマブ単独より低く、骨吸収の抑制はデノスマブ単独と同等であるため単独群より骨密度が上昇すると推察している。RANKLを介した破骨細胞の活性化にはPTHは関係ないかもしれない。
 
これまでBP(アレンドロネート、ゾレドノロート)とPTH製剤の併用療法を検証されてきた研究では併用の優位性は認めていなかったがデノスマブとテリパラチドの併用療法は骨折リスクが高い患者の有効な治療になるかもしれない。
 
Limitation: 骨折リスクは評価していない。既存のBP+PTH製剤の研究と同じデザインでなく用量も異なる。一都市、白人が主体、長期的な有害事象は検証されていない。
 
担当:若林 邦伸

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