タイにおける関節リウマチ患者の生物学的製剤の継続と中止に関する要因の検討【Journal Club 20170913】

Drug survival and reasons for discontinuation of the first biological disease modifying antirheumatic drugs in Thai patients with rheumatoid arthritis: Analysis from the Thai Rheumatic Disease Prior Authorization registry

 

Pongthorn NARONGROEKNAWIN

Division of Rheumatology, Department of Medicine, Phramongkutklao Hospital and Phramongkutklao College of Medicine, Bangkok

International Journal of Rheumatic Diseases 2016 Nov 5

 

bDMARDの維持率を評価し、bDMARDで治療したRA患者の寛解および中止に関する要因を明らかにする。

 

PRDPAに登録されたRA患者256人

E

C

ORA患者の寛解および中止に関する要因を明らかにする

 

 

1.セッティング:どのような場所で研究したか?

タイのナショナルレジストリーであるRDPAレジストリーから対象を選択した。

 

2.研究デザインの型:過去起点コホート

 

3.Population、およびその定義

1987年ACR分類基準または2010年ACR / EULAR分類基準を満たし、

最初のbDMARDを少なくとも1回投与した患者を対象とした。

レジストリーに登録する前にbDMARDを使用していた患者(ETN.IFX> 3ヶ月、RTX> 6ヶ月)は、この分析から除外した。

RDPAデータベース 2009/12月-2014/10月を使用。

 

4.主な収集項目

年齢、性別、体重、身長、罹患期間、朝のこわばりの有無、DAS28-ESR、RF、ACPA、結核、ウイルス肝炎についてのデータを回収した。

 

5.主なアウトカム、および、その定義

一次・二次無効、重篤な副作用、寛解・低疾患活動性維持、アドヒアランス、死亡

 

6.解析

寛解の独立した予測因子の検討ではCox比例ハザードモデル

 

 

7.結果

  • Patient demographics(Table 1)

・RDPAに登録されたRA患者450人のうち、すでにbDMARDsを投与されている194人が除外され、256人が対象。

・bDMARDsの内訳:RTX(45.7%)、ETN(33.2%)、IFX(21.1%)。

・平均年齢58.4歳、女性83.2%、RF陽性(80.9%)、ACPA陽性(78.7%)

・除外された患者(194人)は研究対象集団と類似していたが、罹患期間は有意に長かった(データ非公開)。

 

  • Remission rates and predictors of remission (Table2)

・figure1:1年おきのDAS28の推移。

・多変量解析では男性の性別のみが寛解の独立した予測因子であった[ハザード比1.9(95%信頼区間 1.05-3.45)]。

・RTX、IFX、ETN間で寛解率に有意差はなかった。

 

  • Drug survival rate

・bDMARDの5年継続率継続はRTX(49.7%)、ETN(25.3%)、IFX(21.5%)。

・薬物中止は、RTXと比較して、IFX:HR2.89(95%CI 1.5-95.25)、ETN:HR2.50(95%CI 1.52-4.12)。

bDMARD中止の最も多い原因は、inadequate response(41.4%)。

・inadequate responseによる薬物中止:RTXと比較して、IFN HR9.65(95%CI 3.17-29.35)、ETN HR8.70(95%CI3.01-25.18)。

・serious adverse eventによる薬物中止:RTXと比較して、IFX HR4.38(95%CI 1.43-13.44)、ETN HR2.21(95%CI 0.74-6.61)。

IFXとETNでは有意差なし。(Table4)。

 

  • Serious adverse events leading to discontinuation

256人の中でserious adverse eventによりbDMARDSを中止したのは22/99(8.6%)

RTX 5/117(4.3%)、IFX 8/51(14.8%)、ETN9/85(10.6%)。

→結核、結核以外の感染症、悪性腫瘍

 

8.どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?(箇条書きにて記載。論文中の記載から抜粋、および、自分考えたものを記載)

・タイでは結核感染が多く、RTXが好まれる。通常は第一選択とはならない。

・RTXの有効性は抗TNF阻害薬に匹敵する。

 

9.Limitation

・3剤以外のbDMARDsでの検討がされていない。

・本研究の1年後の寛解率は、通常の1年後の寛解率(16-37.5%)よりも低い結果となった(7.2%)。

・bDMARDsを開始する基準が、csDMARDsを3剤は使用していなければならない。

・寛解と関連するといわれる年齢、運動機能、疾患活動性、PSL、MTXなどについての検討がされていない。

・本レジストリーは主に有効性に関するデータを収集しているため、感染症などの有害事象が過小評価されている可能性がある。結核の発生率は一般集団と変わらず、悪性腫瘍は一般集団よりも低い結果となった。未知の原因となった脱落等の存在が疑われる。

・bDMARDs以外に使用した薬剤の記載がない。

 

10.この論文の弱点

・観察期間が短い(悪性腫瘍の発症などをみるためには)

・bDMARDsの使用基準が日本と異なる。

・中止に至る有害事象について感染、悪性腫瘍以外のものが検討されていない。

・寛解と関連するといわれる年齢、運動機能、疾患活動性、PSL、MTXなどについての検討がされていない。

 

担当:猪狩雄蔵

 

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