関節リウマチ患者における瞑想、マインドフルネス、ヨガの効果について【Journal Club 20230405】

The Effect of Meditation, Mindfulness, and Yoga in Patients with Rheumatoid Arthritis
関節リウマチ患者における瞑想、マインドフルネス、ヨガの効果について

著者 Laura Slagter, Koen Demyttenaere, Patrick Verschueren and Diederik De Cock in Belgium
雑誌名 Journal of Personalized Medicine (IF:3.508)

<サマリー>
関節リウマチ患者における心身療法は付加価値を示す。

P: 関節リウマチ患者
I: 瞑想、ヨガ、マインドフルネスなどの心身療法(Mind-body therapies; MBTs)
C:
O: 何に効果があるのか

 ※マインドフルネスとは、過去の経験や先入観といった雑念にとらわれることなく、身体の五感に意識を集中させ、「今、瞬間の気持ち」「今ある身体状況」といった現実をあるがままに知覚して受け入れる心を育む練習のこと。仏教における瞑想がベースになっている。瞑想は、腹式呼吸や呼吸と連動したおなかの動き、五感を使う体験などを通して、過去や思考、感情にとらわれない心を育成するもの。

 <セッティング>
・ 4つの科学データベース(PubMed、Embase、Web of Science(コアコレクション、中国語・韓国語コレクション)、CINAHL)内

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・システマティックレビュー(的な記述研究?)

<Population、およびその定義>
・RA患者
・瞑想、マインドフルネスまたはヨガによる介入

<主なアウトカム、および、その定義>
・これらの介入にて何が改善するか。

<解析方法>
・KU Leuven Libraries-2Bergen-Learning Centre Désiré Collen(ベルギー、Leuven)のBiomedical reference librariansが各データベースの検索文字列の作成を支援した。
・各データベースの検索文字列は、瞑想、マインドフルネスまたはヨガについて説明する用語とRAの組み合わせ。
・重複の除去にはEndnote 20.1を使用した。
・2名の独立した査読者(L.S.とD.D.C.)が、Rayyan QRCIを用いたすべての研究を、第1にタイトル/アブストラクトに基づき、第2にフルテキストに基づき審査した。コンセンサスが得られない場合は、3人目の上級査読者(K.D.M.)に相談した。
・収録されたフルテキストの参考文献をスノーボールで検索し、追加研究を確認した。
・このSLRのプロトコルはPROSPEROに登録された(参照番号CRD42021264779)
・品質評価。
縦断的研究にはMethodological Index for Non-Randomized Studies(MINORSツール)が用いられ、非比較的研究と比較的研究の最大合計スコアはそれぞれ16と24であった。
横断研究は1件で、これにはJoanna Briggs Institute Critical Appraisal for Analytical Cross-Sectional Studies(JBI)が使用され、最大総スコアは8であった。
ランダム化試験にはPhysiotherapy Evidence Database(PEDro)が適用され、このツールは11のスケールで採点された。

<結果>
・PubMed、Embase、Web of Science(コアコレクション、中国語、韓国語コレクション)、CINAHLでそれぞれ585、280、481、181件の文献を入手し、合計1527件のレコードが得られた。重複を除去した後、941件のレコードが残った。
・タイトル/アブストラクトに基づくスクリーニングの結果、71件の論文にさらに絞られた。全文をスクリーニングした結果、最終的に23件の研究が含まれた。
・各研究とその主な特徴を表 1 にまとめた。合計で、23件の研究のうち13件(57%)がランダム化比較試験であった。
・表2では、QOL、機能性、疲労、抑うつ、不安、痛み、ストレス、睡眠など、アウトカムごとにツールを分けて示す。
・このレビューでは、14/23(61%)の研究が介入としてヨガを適用していた。ほとんどの研究によると、ヨガの介入はRA患者のQOL(SF-36、WHOQOL、EQ-5Dで測定)を改善するようであり、活力、全身状態、身体機能、自己効力感におけるより良い結果によって証明された。
・ヨガは、RA患者の痛みに対して、まだ明確になっていない効果がある。4つの研究 で、痛みのスコア、痛みの障害、痛みの強度、慢性的な痛みの受容、痛みに関する自己効力感の改善が見られたが、3つの研究では痛みのレベルに変化がなかった。複数の痛みに関する質問票(視覚的アナログスケール、単純記述式痛み強度スケール、痛み障害指数、ウェルビーイング測定フレームワーク調査)が用いられたが、一貫性は見られなかった。
・ヨガは2つの研究では疲労スコアの改善が見られたが、他の2つの研究では疲労スコアの変化が見られなかった。
・ヨガは4つの研究ではRA患者のうつ病の症状が有意に減少したことを観察したが、2つの研究では、この効果は認められなかった。
・ヨガの介入はRAの疾患活動性マーカーの減少を引き起こし、ほとんどの研究がDAS28スコア、ESR、炎症関節数、朝のこわばり、CRP、RF、リンパ球数、尿酸値に改善を示した。2つの研究では、DAS28スコアの改善は見られなかった。
・ヨガは炎症性マーカー(IL-1a、IL-6、TNF-_、CTLA4)の低下と抗炎症性マーカー(TGF-_)の上昇が観察された。
・ヨガは心と体のコミュニケーションマーカー(BDNF、DHEAS、_-エンドルフィン、サーチュイン)を上昇させ、精神-神経-免疫軸への影響を示した。
・ヨガは、コルチゾール、メラトニン、セロトニンレベルの改善により、ミトコンドリアの機能を改善した 。一方、1つの研究では、コルチゾールレベルへの影響は認められなかった。
・マインドフルネスに基づく介入(MBI)を用いた研究が6件。マインドフルな気づきと受容の治療、マインドフルネスに基づく認知療法(MBCT)、マインドフルネスに基づく感情調節療法、マインドフルネスに基づくストレス軽減(MBSR)であった。
・マインドフルネスに基づく介入は、VASで測定した痛みスコアの改善だけでなく、痛み関連の破局感や痛み対処の効力といった代理アウトカムによる研究でも、改善が見られた。
・マインドフルネス介入によって確立された朝のこわばりや関節の圧痛の持続時間が減少した。
・マインドフルネスは、CRPや腫脹関節数などのRA疾患活動性マーカーは改善しなかった。
・マインドフルネスはストレスの軽減に役立った。この心理的苦痛の減少は、ウェルビーイング、うつ病、不安に対するマインドフルネスのポジティブな効果と解釈できる。

<結果の解釈・メカニズム>
・RA患者に対する瞑想、マインドフルネス、ヨガの効果について検討した。
・その結果、3つのMBTは、患者が報告する心理社会的アウトカムだけでなく、疾患活動性マーカーやスコアなど、複数の領域で様々な効果を発揮することが明らかになった。うつ病を再発したRA患者は、うつ病を再発しない患者よりもマインドフルネス技法の恩恵を受ける可能性がある。
・マインドフルネスや瞑想よりもヨガの方が、DAS28スコア、朝のこわばり、罹患関節、CRP、炎症マーカーなどのRA疾患活動性マーカーの点でより良い結果につながる。
・マインドフルネス介入は、痛みの認識、朝のこわばりの期間、関節の圧痛を改善するが 、客観的なRA疾患活動性パラメータ(CRPや腫脹関節数など)の改善は示されていない。

<Limitation>
・3つのMBTを必ずしも区別していなかった。各介入(すなわち、瞑想、マインドフルネス、ヨガ)には、やはり様々なサブタイプがあった。
・ほとんどの研究でサンプルサイズが小さい。介入期間、介入専門家、フォロー期間のバラつきが大きい。
・1994年から現在までの間に実施された研究を調査したが、最近の研究は8件のみである。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・現在行っている標準的なRA治療で改善できない問題に対し、このような治療を併用することで、患者のQOLのさらなる改善が見込める。

<この論文の好ましい点>
・RAに対する心身療法のシステマティックレビュー(的な記述研究?)
・ヨガ、瞑想、マインドフルネスについてそれぞれ解析していること

<この論文にて理解できなかった点>
・解析を行った各種のツール。

担当:三輪裕介

 

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