Journal Club【20121226】

No.19

「Risk factors for relapse of antineutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis」

Walsh MF. et al

Arthritis Rheum. 2012 ;64:542-8.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21953279

 

<目的>

・ANCA関連血管炎(AAV)の再発リスクを検討する

 

<患者>

  • ・これまでのAAVの4つのstudyにエントリーされた535人のAAV
  • ・NORAM: early systemic non-renal WG
  • ・CYCAZAREM/CYCROPS; generalized
  • ・MEPEX: severe glomerulonephritis
  • ・観察期間は診断から18か月(MEPEXのみ12か月)
  • ・再発は血管炎の症状の増悪に対し治療の変更を行ったものと定義

 

<結果>

・53%がGPA

・再発は38%(201/535人)でみとめられ、25%(133/535人)が死亡

・再発リスクとして診断時に

①心血管病変

②PR-3ANCA高値

③血清Cr≦100μmoles/l(1.13mg/dl)

④GPAがあげられ

・血清Cr>2.26mg/dlと高度の腎機能障害を有する患者では再発リスクが低かったとしている。

 

<考察>

① これまでの研究でPR3ANCA陽性、GPAが再発リスクとして報告されている

② 本研究で新たに示されたこととして、

1)心血管病変が再発リスクを高める

2)高度腎障害(poor renal function)は再発率を下げることが示された

③ ②の結果がこれまでの研究で証明されなかった理由として、

a)心血管病変合併患者が少ない

b)心血管病変の評価がされていないを挙げている

④ 高度腎障害などの活動性の高いAAVが再発しやすいという懸念に対し免疫抑制療法を強化することがむしろ再発を減らすことにつながっている可能性がある。腎病変は予後不良因子で死亡率を高めるが、死亡原因の多くは治療により感染症を合併しているケースがほとんどを占めている。

 

Limitation)

① これまでのAAVの再発リスクの検討としては規模は大きいものの、さらに大規模な検討を要する

② clinical trialから患者を抽出しており純粋なinception cohortではない

③ より長期の観察期間と経過中の臨床所見を検討すべき

 

担当:高橋良

 

No.20

「Combined Pulmonary Fibrosis and Emphysema Syndrome in Connective Tissue Disease」

Cottin V, et al.

Arthritis Rheum. 2011;63:295–304

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20936629

 

<方法>

・多施設でCTD合併のCPFEをretrospectiveに集計した(フランス)。
・Inclusion criteriaとして以下の4つを満たす者をエントリー。

1)  HRCTにて牽引気管支拡張症and/or蜂巣肺を認めるびまん性肺疾患
2) 小葉中心性and/or傍隔壁性の気腫性変化をHRCTで認める。LAAは隔壁はないか1mm未満と定義。

3) 明らかな原因のあるILDは除外する。特に過敏性肺臓炎、薬剤性、PCP。
4) 膠原病の診断がつく。ACRの診断基準。

・これらの臨床的特徴や検査値について検討

 

<結果>

①     CPFE+CTD vs idiopathic CPFE

CPFE+CTDの方が女性に多く年齢が若い。DLco、Kcoが高い。生存率に差はない。

②     CPFE+CTD  vs  ILD+CTD

CPFE+CTDの方が男性に多く喫煙者である。生存率に差はない。

 

<Discussion>

①     CPFE+CTDの方がidiopathic CPFEと比較して重症化しにくい。

②     CPFEは様々なCTDで起きてくるが、RAに最も多い。

③     PHはCPFEの予後を左右する。CPFE+CTDではILD+CTDと比較してPHのリスクが高い。

 

<limitation>

①     レトロスペクティブスタディ

②     グループサイズが小さいため多変量解析を行えていないため、グループごとの生存率の差が明らかではない。

③     気腫性病変と浸潤性病変の半定量的評価ができていない。

 

<結論>

CPFEは膠原病に伴う肺病変であり、特にRAやSScに多く、喫煙中もしくは喫煙歴のある患者に多い。

 

担当:古屋 秀和

No.21

「Perioperative care for patients with rheumatic diseases」

Bharath M. Akkara Veetil and Tim Bongartz

 Mayo Clinic, USA

Nat Rev Rheumatol 2012;8:32-41

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22083219

 

**周術期における心疾患のリスク評価、周術期における抗リウマチ剤の管理、周術期におけるAPS患者の管理についてのreview

 

<周術期における心疾患のリスク評価>

  • ・RAやSLEは心血管系の合併が多いとされている。RAの心血管イベントによる死亡率はHR1.61と高値となっている
  • ・そのため膠原病疾患の患者さんでopeが必要である場合に、心血管系の評価が必要である。
  • ・ACC/AHA2007ガイドラインに準じて評価をしていく

 

*「心疾患」とは、不安定狭心症、非代償性心不全、重症な不整脈、重症弁膜症

*「低リスク手術」とは、眼科領域、皮膚表面、乳房領域、内視鏡

 

<抗リウマチ剤の管理>

♦プレドニゾロン♦

  • ・相対的な副腎不全を引き起こす可能性がある反面、大量のカバーによりSSIや創傷治癒遅延などを誘発する可能性がある。
  • ・ACTH負荷試験はステロイドカバーする群をピックアップし、table1に従ってカバーを行う
  • ・著者らは、手術前に10mg以下減量するようにし、さらにACTH負荷試験にて不十分な反応であった場合にのみステロイドカバーを行っている

・ステロイドカバーの容量

軽度ストレス ステロイドカバー量
 ソケイヘルニアope       大腸内視鏡           軽度発熱状態          軽度中等度嘔気嘔吐       胃腸炎

ハイドロコルチゾン25mgか

メチルプレドニゾロン5mgを

ope日のみ点滴

中等度ストレス ステロイドカバー量
 開腹胆嚢摘出術         半結腸切除術          重症な発熱疾患         肺炎              重症の胃腸炎 ハイドロコルチゾン50-75mgか  メチルプレドニゾロン10-15mgを  ope日に点滴          その後1−2日で通常量に戻す
重度ストレス  ステロイドカバー量
 大きな心臓や胸郭の手術     膵癌手術            肝切除             膵炎 ハイドロコルチゾン100-150mgかメチルプレドニゾロン20-30mgを  ope日に点滴          その後1−2日で通常量に戻す
最重症ストレス ステロイドカバー量
 敗血症性ショック ハイドロコルチゾン50-100mを6−8時間ごとか          フルドロコルチゾンを50μg+0.18mg/kg/hの持続点滴をショックが改善するまで行う、(数日から1週間程度が多い)その後は徐々に減量しつつ、バイタルやNa値をfollowする

 

 

♦メトトレキサート♦

  • ・大きなコホート研究では、周術期でのMTX継続投与群では感染のリスクは増えかった。
  • ・また、ope2週間前よりMTXを中止した群にて8%の再燃があった(継続群は0%の再燃率)
  • ・ハイドロキシクロロキンやアザチオプリン、スルファサラジンと同じようにopeの際は継続しても安全であると考える

 

♦生物学的製剤♦

  • ・TNF阻害剤と感染との関係がなかったとの報告と、なかったとする報告とが混在し現在のところは結論がない
  • ・TNF阻害剤使用中のRA患者では一般的には感染リスクが上昇することがRCTで証明されているため、現時点ではope前は中止することが妥当ではないかと考えられている。
  • ・ope前に半減期の5倍の期間の中止を薦めている報告もあるが、再燃の可能性があり、筆者らは手術前の1回の投与をスキップしope後1−2週間後に再開する方法を選択している
  • ・リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、アナキンラなどはstudyがなく不明であった

 

<抗リン脂質抗体症候群の管理>

・APSでは、opeにより血栓のリスクが増大したり、抗凝固剤による出血のリスク、凝固因子消費による血小板減少、劇症型APSに至る事がある。

・周術期でのAPS管理の報告はないが、ACCPやNICEのガイドラインを参照として管理を行いことを提唱している

・APSは高リスク群に入り、ワーファリンは5日前に中止、治療量の低分子ヘパリン皮下注か未分画ヘパリン点滴静注を使用し、ope前は低分子ヘパリンは24時間前に、未分画ヘパリンは4時間前に注意をする

・ワーファリンは止血がなされていれば24-48時間後再開とするのを薦めている

・侵襲の強い手術で出血のリスクが高い場合は未分化ヘパリンをope後24時間以降に再開。出血のリスクをさらに減らすのであれば48-72時間以降に再開した方がよい。

 

<NSAIDsの管理>

・ NSAIDsや抗血小板剤の内服にて周術期に1.5倍の出血リスクとの報告がある。

・ 抗血小板剤については、低リスクであれば7-10日前に中止をするべきだが、最近の冠動脈ステント挿入歴など高リスクの方では継続しせざるを得ないが出血には要注意である。

・ NSAIDsはope前に半減期の5倍の期間は中止した方がよい。

 

 

担当:矢嶋 宣幸

 

 

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昭和大学リウマチ膠原病内科では、毎週水曜日にJounal Clubを行っております。

 

 

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