「Polymyalgia rheumatica」
The Lancet 2013;381:63-72
Kermani TA, Warrington KJ
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23051717
疫学
①生涯有病率:女性2.43% 男性1.66%
②50歳以上に後発し、平均年齢73歳
③人種差:北ヨーロッパに多い(スカンジナビア諸国:50歳以上では112人/10万人)
病因
①遺伝的因子と環境因子が関与
②細胞内接着因子、IL-1R antagonist、IL-6などに関与する免疫調節遺伝子多型が示唆
③HLA-DRB1との関連も示唆
巨細胞性動脈炎
①GCAの40-60%がPMR合併 PMRの16-21%がGCA合併
②両疾患とも免疫異常による慢性炎症を呈し、IL-6の上昇を特徴とする
③GCAの臨床症状がなくとも潜在的に側頭動脈に炎症像が見られることもある
明らかな血管炎所見はなくIL-2,IL-1,IL-6などのmRNAの転写産物がみられる
GCAではインターフェロンγ産生T細胞が血管組織に観察される
④側頭動脈生検はPMR全例に行う必要はなくGCAの症状を有するものに推奨
臨床症状
①朝のこわばりが30分以上持続、安静でも増悪する
②左右対称性
③全身倦怠感、食欲低下、体重減少、発熱などの全身症状は40‐50%にみられる
④頭痛、顎破行、頭皮痛、視力低下、頸動脈痛、四肢跛行などはGCAを疑う症状
⑤手足の腱鞘滑膜炎による腫脹/浮腫はPMRでもRAでもSNSPでも生じる
⑥血清反応陰性であっても主関節と手指の症状が優位であればRAを疑う
⑦悪性腫瘍随伴症候群では通常典型的な症状を欠き、少量GCの反応も不良のことが多い
⑧手関節、膝関節に軽度の滑膜炎が見られることもある(1/3の患者で末梢関節炎あり)
⑨MP関節の滑膜炎は25%の患者にみられるが骨びらんはなくGCで速やかに改善する
⑩手関節滑膜炎にMP関節やPIP関節の滑膜炎の合併があれば高齢発症RAの可能性
⑪末梢関節滑膜炎の頻度
RA:84% PMR:39%
⑫PMRでは足部の関節炎は通常みられない
診断
①ACR/EULARの2012Scoring algorithm
4点以上 感度:65% 特異度:78%
超音波所見含め5点以上 感度:66% 特異度:81%
超音波所見は1)、2)をそれぞれ1点とする
1)1関節以上の肩三角筋滑液包炎、二頭筋腱鞘滑膜炎、肩甲上腕滑膜炎
かつ、1か所以上の股関節関節炎または転子部滑液包炎
2)両肩関節の肩三角筋滑液包炎、二頭筋腱鞘滑膜炎、肩甲上腕滑膜炎
②CRPはESR(6-20%の患者は正常)よりも勝る
③画像診断
<関節超音波>
疾患特異性の観点から超音波検査は推奨
他の肩関節疾患との鑑別は特異度89%(RAに対しては70%と低い)
特に炎症反応正常なPMRでは役に立つ
<MRI>
肩関節の変化(超音波と同所見)に加え、頸椎棘突起間の滑液包炎を検出
<PET>
肩、股関節、頸椎腰椎の棘突起間に集積 血管炎の精査目的にも有用
治療
①15-20㎎のGCで2-4週
2-4週おきに2.5㎎ずつ10㎎/日まで減量 1-2年内服継続するケースが多い
②mPSL 120mg/回筋注を3-4週おき
その後は20㎎/回を3-4週おきに2-3か月継続
③MTXの併用効果は文献により様々
一定の見解はない(7.5㎎/週で効果なし~10㎎/週で効果ありなど)
現段階ではGC単剤で再発するケースやGCの副作用が懸念されるケースに限定すべき
④AZPがGC減量に有効との報告もある(N=31と少なく、35%がdropout、観察期間全体ではGCの量に差がない)
⑤IFX+GC vs IFX vs GCでは再発率に差がなかった
⑥少量GCで速やかに改善する??
・129名のPMR、少量GC開始後3週間で26%の患者に疼痛が残り、29%に30分以上の朝のこわばりが残った。 また、3週間で完全寛解が見られたのは全体の45%のみ。
・125名のPMR、少量GC開始4週間で完全寛解に至ったのは71%のみだった。
⇒GCに対する速やかな反応を臨床的診断基準に含むことへの懸念もある
予後
①再発は50%にみられる
②再発or長期GC必要患者のリスク
1)初期のPSL量が多い、2)急激なGC減量、3)女性、4)CRP高値、5)IL-6高値
IL-6を活動性の指標とする報告もある
③後に診断がRAへ変わるケース:2-30%と報告は様々 慎重なfollowが必要
担当:高橋 良
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昭和大学リウマチ膠原病内科では、毎週水曜日にJournal Clubを通じ新しい知見を得る機会を設けています。