「Association between vaccination for herpes zoster and risk of herpes zoster infection among older patients with selected immune-mediated diseases」
Zhang J, Xie F, Delzell E, Chen L, Winthrop KL, Lewis JD, Saag KG, Baddley JW, Curtis JR.
Department of Epidemiology, School of Public Health, University of Alabama at Birmingham, USA.
JAMA.2012 ;308:43-9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22760290
免疫抑制剤や生物学的製剤を使用している60歳以上の膠原病患者さんでは帯状疱疹ワクチンは使用できる？
＜対象＞
・RA、乾癬性関節炎、乾癬、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患で60歳以上の免疫抑制剤を使用している症例
・免疫抑制剤には、TNF製剤(infliximab, adalimumab, etanercept, certolizumab, golimumab)、non-TNF製剤(abatacept, rituximab)、その他のDMARDs(MTX, hydoxycholoroquine, sulfasalazine, leflunomide, cyclosporine, glucocorticoidなど)
＜方法＞
・2006.1.1-2009.12.31の間で、Medicare を使用する60歳以上の患者さんを抽出。
・抽出には、診療録ではなく、医療請求や薬剤請求からの記録を使用。
・帯状疱疹ワクチンを接種して42日以内の帯状疱疹の発症、また42日以降の帯状疱疹の発症を検討した。
・P：60歳以上のRA、乾癬性関節炎、乾癬、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患で免疫抑制剤使用中の患者さん
・E：帯状疱疹ワクチン接種あり
・C：帯状疱疹ワクチン接種なし
・O：ワクチン接種42日以内の帯状疱疹の発症(安全性の評価)、42日以降の帯状疱疹の発症
・研究デザイン：過去起点コホート
＜結果＞
・463541例が抽出された(RA:292169例、乾癬性関節炎:11030例、乾癬:89565例、強直性脊椎炎:4026例、炎症性腸疾患:66751例)
・平均年齢 74才、平均follow期間は2.0年、女性が72.3％、白人が86.3％。
・帯状疱疹ワクチンを接種していたのは4%(18686例/463541例)。うち、接種日が明らかなのは7780例。
・ワクチンを未接種群ではステロイド使用にて帯状疱疹が1.2-2.0倍の発症率であった＜table２＞
・ワクチン接種して42日以内の帯状疱疹発症は、11例未満であった。そのうち、生物学的製剤を使用していた633例では、帯状疱疹や水痘の発症は見られなかった。
・ワクチン接種後42日以降の帯状疱疹発症は138例/120639人年であった(6.7例/1000人年)。ワクチン未接種群と比較するとIR 0.56。多変量解析ではワクチン接種での帯状疱疹発症はワクチン未接種を対象とするとHR 0.61＜table３＞
＜Discussion＞
・limitationは、集積の方法が抗ウィルス剤処方歴からpick upしている症例が含まれるため水痘と帯状疱疹の区別がついていない、発症した帯状疱疹がワクチン由来かの同定できないこと、ワクチン接種後42日以内という設定が安全性を評価するのには短期間である可能性があること、診療録からの抽出ではないこと、ワクチン接種前後に免疫抑制剤の中止を指示されている症例は抽出できておらずそのために帯状疱疹発症しなかった可能性があること、疾患の重症度など他の要素を勘案していないこと、ワクチン接種日が分かっていない症例が59％であり49日以内帯状疱疹発症の検討した安全性の検討ではそれらは除外されていること、が挙げられた。
＜コメント＞
・現時点では日本では帯状疱疹ワクチンはありません。欧米でのstudyでは、ワクチンにより帯状疱疹の発症や帯状疱疹後疼痛が明らかに減少させる成績があります（N Engl J Med.2005;352:2271-84. JAMA.2011;305:160-6）。アメリカでは水痘ワクチンを水痘予防用に VARIVAX（1350pfu～）と帯状疱疹予防用のZOSTAVAX（18,700～60,000pfu）の２種類が存在します。日本に存在するには水痘ワクチンがあり力価は42,000～67,000PFU/doseとアメリカの帯状疱疹予防用のZOSTAVAXにも匹敵しておりますが、現時点では効果を証明したstudyはございません。日本でも早めの導入をしてほしいですね。
担当：矢嶋宣幸
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