Journal Club【20140827】リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブは肺炎球菌ワクチンに影響するのか?

Rituximab and abatacept but not tocilizumab impair antibody response to pneumococcal conjugate vaccine in patients with rheumatoid arthritis.

Crnkic Kapetanovic M, Saxne T, Jönsson G, Truedsson L, Geborek P

Arthritis Res Ther. 2013 Oct 30;15(5):R171. doi: 10.1186/ar4358

 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24286269

 

関節リウマチ患者おけるリツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブの肺炎球菌ワクチンに影響するのか?

 

【背景】

現在、関節リウマチ患者等の免疫抑制者に対してインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種することが推奨されているが、各種免疫抑制薬はワクチンによる抗体の産生率を下げる可能性が示唆されている。これまで著者らはメトトレキサート(MTX)が抗体の産生率を抑制することを報告している。この研究はリツキシマブ(RTX)、アバタセプト(ABT)、トシリズマブ(TCZ)の新規生物学的製剤が関節リウマチ(RA)患者の肺炎球菌ワクチン(7価ワクチン)の抗体産生に与える影響について調べることを目的とした。

 

【方法】

RTX、ABT、TCZを単剤またはMTX併用で使用しているRA患者を対象とした。既存のデータを使用し、コントロール群(NSAIDSや他鎮痛薬で加療されている脊椎関節炎患者)、MTX単独群と比較検討した。ワクチン接種時と接種後4週から6週の間に23Fと6B抗原型に対する特異的IgG抗体をELISA法で測定した。幾何平均抗体価は計算した。抗体産生の反応率(AR)は接種前後のワクチン抗体価の比と定義し、抗体産生が起こった群(posAR)はARが2以上と定義した。

 

【結果】

88のRA患者が本研究に登録された。内訳は55人がRTX、その内の26人(46%)がMTXを併用していた。ABTは17人、TCZは16人、それぞれ13 (76%) 、 9 (56%)でMTXを併用していた。RTX群はTCZ群に比べて有意にARが低く、MTX単独群、コントロール群(NSAIDSや他鎮痛薬で加療されている脊椎関節炎患者)と比較しても低かった。RIX群で両抗原においてposARとなったのは、単独群で10.3%、MTX併用群では0%であった。ABT群、TCZ群はそれぞれ17.6%,50%であった。

 

【結論】

この研究において、RTXとABTは抗体産生率を低下させた。最も産生率を低下させたのはRTXであった。肺炎球菌ワクチンはTCZ使用中でも十分な抗体産生量が維持できることが示唆された。肺炎球菌ワクチンは可能であればRTX、ABTを導入する前に接種することが望ましいと考えられる。

 

【その他のワクチンに対する報告】

・免疫抑制薬はワクチンの効果を弱める可能性がある。

 (これまで肺炎球菌ワクチンによる抗体産生をMTXは低下させたと報告されている。抗TNF-αは報告によってまちまちである。←著者らは低下させないと報告している)

・頻回のワクチン接種の必要性が検討されている。

 ←(免疫抑制患者では有効なワクチンの抗体量の維持期間が正常患者よりも短いと考えられている)

 

【Limitation】

・本研究は肺炎球菌ワクチンの血清抗体価(特にその比)を比較しているのみで、肺炎発症率、死亡率等の長期アウトカムについては、言及していない。

・7価ワクチンを使用している。

 日本では成人は23価ワクチン(←ニューモバックス)、小児(2歳以下)は13価ワクチンを使用している。

 但し関節リウマチ患者において7価ワクチンと23価ワクチンで抗体産生に違いがなかったという報告はある

・対象は関節リウマチ患者のみである。

 

担当:石井 翔

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