Rituximab vs mycophenolate and vs cyclophosphamide pulses for induction therapy of active lupus nephritis: a clinical observational study.
Moroni G, Raffiotta F, Trezzi B, Giglio E, Mezzina N, Del Papa N, Meroni P, Messa P, Sinico AR.
Rheumatology (Oxford). 2014 Sep;53(9):1570-7
http://rheumatology.oxfordjournals.org/content/early/2014/02/06/rheumatology.ket462.short
活動性のループス腎炎においてリツキシマブ・ミコフェノール酸モフェチル・シクロホスファミドパルスで治療効果に差があるか。
【目的】
これまでループス腎炎に対してのリツキシマブの有効性は示唆されているが、IVCYやMMF等の既存治療と比較したリツキシマブ単独使用の有効性や毒性はあまり知られていない。活動性のループス腎炎に対しての治療として、リツキシマブ(以下RTX)、ミコフェノール酸モフェチル(以下 MMF)、シクロフォスファミドパルス(以下 CYC)を比較検討した。
【方法】
2005年から2011年までに活動性ループス腎炎と診断された54人の患者に対してメチルプレドニゾロンパルス療法を三日間、後療法として経口プレドニン(0.5~0.75mg/kgを1か月使用)を使用し、RTX群(1gを第3病日目、18病日目に使用、計17人)、MMF群(2-2.5 g/day,計17人)、CYC群(0.5g/2weeks 6回 計20人)の3群に分け、前向き比較試験を行った。全ての群で3か月後からMMF,AZA,CyAのいずれかの免疫抑制薬を使用し、維持療法行った。3群の3か月後、12か月後のアウトカムを比較した。
【結果】
RTX使用群の患者は他2群と比べ、高齢で罹病期間が長く、過去により再燃していた例が多かった。またより腎炎の活動性が高かった。それぞれの群で(4人、4人、3人)が急性腎機能障害を呈しており、ネフローゼ症候群の患者は50%弱であった。3か月後、蛋白尿が50%以下になったのはRTX群で58.8 %、MMF群64.7 %、CYC 群で 63.1%であった。12か月後、完全寛解となったのはRTX群で70.6 %、MMF群52.9 %、CYC 群で 65.0 %、部分寛解となったのはRTX群で29.4 %、MMF群41.2 %、CYC 群で25.0 %であった。
【結論】
寛解導入においてRTXは少なくともMMFとCYC pulseと同等の効果が得られたと考えられる。RTXはより少ないステロイドでループス腎炎を寛解し得るかもしれない。
RTX群の患者に腎の予後不良因子が多かったことを考慮すると、RTXは活動性ループス腎炎の現実的な代替手段として考慮すべきである。
【limitation】
規模が小さい。ランダム化試験ではない。
グループ分けが臨床判断によるところが大きい。
(CYCやMMF使用歴のある患者はRTX群へ入りやすい)
エンドポイントは12か月後で短い。
各群によって維持の免疫抑制薬に違いがある。
全体的にMMFでの維持療法が多い。
【リツキシマブに関する報告】
大規模なランダム化比較試験
EXPLORER試験(2010)、
中等症~重症SLEにGC+1種類以上の免疫抑制薬+RTX VS GC+1種類以上の免疫抑制薬の前向き試験
BILAGの活動性スコアに有意差を認めなかった
LUNAR試験(2012)、
MMF+RIX+GC VS MMF+GCの前向き試験
リツキシマブの追加投与によって1年後の腎予後は改善しなかった。
他:small study
後ろ向き研究、メタ分析、ノンコントロールスタディによる報告
・リツキシマブは既存治療で再燃する難治性のループス腎炎に対して12か月後をアウトカムとして70%近い良好な寛解率を得た。
・リツキシマブはループス腎炎に対し、コストや治療成績、副作用の点から、臨床試験や難治症例以外は使用すべきではないかもしれない。
【考察】
これまで後ろ向き試験や前向きのオープンラベル試験、ノンコントロールスタディではループス腎炎に対するリツキシマブの有効性は示唆されている。
ただし前向きのランダム化比較試験(EXPLPRER試験、LUNAR試験)では有効性は証明されていない。
(アウトカムの設定に問題があった可能性や免疫抑制薬にリツキシマブを追加投与するといったプロトコールであったために有意差が出なかった可能性もある。)
今後RING試験(ループス腎炎に対して既存治療VS既存治療+RTX、104週後の腎予後)等の前向き臨床試験が予定されており、結果が待たれるが、難治性のSLE、ループス腎炎に対しての治療として十分考慮し得ると考えられる。
担当:石井 翔
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