テリパラチドとデノスマブをスイッチする際は順番が大事?【Journal Club 20160525】

Lancet. 2015 Sep 19;386(9999):1147-55. doi: 10.1016/S0140-6736(15)61120-5. Epub 2015 Jul 2.

Denosumab and teriparatide transitions in postmenopausal

osteoporosis (the DATA-Switch study): extension of a

randomised controlled trial

Leder BZ et.al.

 

閉経後骨粗鬆症治療におけるテリパラチドとデノスマブのスイッチ療法

【背景】

骨粗鬆症治療薬は骨形成促進薬と骨吸収促進薬があるがDATA studyでは併用療法の有効性が示された.

本研究はランダム化比較試験,DATA(denosumab and teriparatide administration) studyの延長である.

DATA  studyとは?

2009年9月~2011年1月までの間に45歳以上で閉経後3年以上経過している骨粗鬆症の女性患者で骨折リスクの高い患者をランダムに3群割り付け,24ヶ月間①テリパラチド20μg/日,②デノスマブ60mg/6ヶ月,③テリパラチド+デノスマブを投与し,12ヶ月後の腰椎骨密度が評価した.結果は③併用群が①,②単独群と比較して優位に骨密度の増加を認めた.

【方法】

2011年9月〜2013年1月までの間,DATA study患者のうち,引き続き骨折のリスクが高く以下3項目のうちいずれかをみたす【 1.Tスコア<-1.5 2.Tスコア<-1に加え,以下のどれかにあてははまる(50歳以降の骨折、両親の50歳以降の頸部骨折、甲状腺機能亢進症の既往,腕を挙げた状態で椅子から立てない,現行の喫煙,3.1回以上の脆弱性骨折の既往】を登録した.

除外基準は高Ca血症、副甲状腺機能亢進症,25OHD濃度<20ng/ml,骨の病気,貧血、悪性腫瘍および放射線治療既往,重症の心・肺・肝・腎障害,精神病,過度の飲酒,静注BP製剤,PTH製剤,ストロンチウムの投与歴のある患者,登録前6ヶ月以内のGC,BP製剤,3ヶ月以内のSERM、カルシトニン投与歴のある患者とした.

24ヶ月間①テリパラチド群はデノスマブに,②デノスマブ群にはテリパラチドにスイッチされ,③併用群はデノスマブを投与された.(Fig.1)全ての患者はCa摂取量1200mg/日以上、VitDは血清25OHD濃度>20ng/ml以上になるように炭酸カルシウムやVitDを摂取させた。薬剤がスイッチされてから骨密度と骨代謝マーカー6,12,18,24ヶ月に測定した.主要評価項目は4年間の椎体骨密度の変化率とし,2次評価項目は大腿骨近位部骨密度(total hip,頸部),橈骨遠位端1/3骨密度の変化率とOC(骨形成マーカー),CTX値(骨吸収マーカー)とした.

【結果】

DATA studyから適応例83名のうち,脱落者を除く77名(①:テリパラチド→デノスマブ群27名,②;デノスマブ→テリパラチド群27名,③;併用→デノスマブ群23名)で解析された.患者背景に有意な違いを認めなかった.

48ヶ月後,主要評価項目である腰椎骨密度は,27名の①群患者でで18.3%(95%CI 14.9-21.8),27名の②群患者で14.0%(10.9-17.2),23名の③群患者で16.0%(14.0-18.0)で全ての群で増加したが,群間での有意差は見られなかった.(p=0.13 ①群 vs ②群,p=0.30 ①群vs ③群,p=0.41 ②群 vs ③群)(Fig.3,Table2).24-48ヶ月の腰椎骨密度増加量は②群(4.8[5.6];p=0.0203),③群(3.4[3.5];p=0.0005)と比較して①群で最も高かった(8.6%[SD 5.0] ).

2次評価項目である大腿骨骨密度に関しては,48ヶ月後の増加率は①群で6.6%(95% CI 5.3-7.9)増加した,③群で最も増加を認めた(8.6%[7.1-10.0]p=0.0446③vs①,p<0.0001③vs②).逆に②群では24→36ヶ月目は低下し,42ヶ月目以降は増加した(2.8%[1.3-4.2]p=0.0002①vs②).

同様に大腿骨頸部の骨密度に関しては48ヶ月後の増加率は①群で8.3%(95%CI 6.1-10.5),③群では9.1%(6.1-12.0),②群では4.9%(2.2-7.5)であった.(p=0.0447①群vs②群,p=0.0336③群vs②群)

①  群と③群には有意な差を認めなかった(p=0.67).48ヶ月後の橈骨遠位端1/3骨密度の変化率は①群で0.0%(95%CI -1.3-1.4),②群では-1.8%(-5.0-1.3),③群では2.8%(1.2-4.4)であった.(p=0.075①群vs③群,p=0.0099③群vs②群)

骨代謝マーカーに関しては②群の女性達の血清OCはベースラインと比較してはテリパラチド使用開始6ヶ月後(30ヶ月目)に275%まで増加し,24ヶ月後に159%を維持した.CTXは30ヶ月目でベースラインと比較し183%で48ヶ月目には42%となった.①群ではCTXはもデノスマブ開始後1ヶ月後に最も低下し,血清OCは12-24ヶ月後に最も低下した.③群に関してはスイッチ時に両マーカーのベースラインの低下を認めた.

24—48ヶ月時に同様の治療を行っている①群,③群に関して,スイッチしてから1ヶ月,6ヶ月後の血清OC値が①群で有意に高値であったが,CTXに関しては有意差を認めなかった.

有害事象に関しては②群でテリパラチド使用の影響と思われる腎結石症のみであった.

【考察】

①,③群では全ての測定された骨密度で増加を認め,②群では橈骨遠位で骨密度の減少を認めた.②群のようにデノスマブからテリパラチドにスイッチした群は骨塩減少・上昇率の低下を認めており、骨形成促進薬と骨吸収阻害薬の使用順序の重要性が明らかになった.

(テリパラチド使用後にデノスマブを使用した群の方が成績が良かった)

これまでの報告ではBP製剤使用後にPTH製剤を使用しても骨密度の増加効果は言われているが,PTH使用前にBPを投与していなかったものと比較するとその効果は劣るとされている.その原因としてはBPが骨マトリックスに沈着し,PTHの骨代謝を抑制することがいわれている.

②群ではデノスマブ投与の後にテリパラチド投与を行ったが,骨代謝が緩徐になるどころか投与開始6ヶ月後の骨形成マーカー,吸収マーカーともに著明に上昇しており,デノスマブ投与中にプールされた破骨細胞前駆体がテリパラチド投与によって活性化されることが推察された.

一方24-48ヶ月時点での骨密度増加は①群で最も強く見られている.骨吸収を反映するCTXが,骨形成の指標であるOCより速やかに抑制されていた.骨塩増加につながった可能性が見られた.

24ヶ月以降①群の骨塩増加の追い上げを見せたが,48ヶ月を通すと③群での増加率は優れていた.

 

Limitation:小規模研究であること.骨折リスクを評価していない.②群で認められた骨塩減少に関する臨床的影響が不十分である(既存の研究で骨代謝マーカーのターンオーバー増加と骨塩減少から骨折リスクは報告されている.)オープンラベルスタディということ.一都市、白人が主体、長期的な有害事象は検証されていない.

 

担当: 小黒 奈緒

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