アダリムマブはどの程度安全か【Journal Club 20160706】

Ann Rheum Dis 2016;0:1–4. doi:10.1136/annrheumdis-2016-209322

Adalimumab long-term safety: infections, vaccination response and pregnancy outcomes in patients with rheumatoid arthritis

Burmester GR, et al.

関節リウマチ患者におけるアダリムマブ長期安全性について(感染症、ワクチンの反応性、妊娠予後)

 

http://ard.bmj.com/content/early/2016/06/23/annrheumdis-2016-209322.abstract

背景と目的

・アダリムマブ(ADA)は中等度から高疾患活動性のRAに使用されること10年を超え、安全性プロファイルも報告されてきた。

・RAでのglobal臨床試験からadverse event(AE)の興味深いものをお届けする。

 

方法

・デザイン        :28の臨床試験から抽出した。Adalimumab Pregnancy Exposure Registry (APER)からも抽出した。(複数の研究のreview)

・対象患者        :ADAを使用した臨床試験に参加した15132人(24810人年)

・primary endpoint      :感染症、検査異常、インフルエンザ関連のAE。妊娠予後。

・重症AE          :致命傷、急速に生命を脅かす、入院が必要、入院期間延長

・AEの計算方法:Medical Dictionary for Regulatory Activities (MedDRA) から抽出

・取り上げたAE:結核、日和見感染症、帯状疱疹、B型肝炎の再活性化

・検査異常        :早期RAで治療開始6ヶ月間に進行した貧血。TC, HDL, LDLはOPTIMAで調査

・インフルエンザ関連AE:10年間のADA治療患者で、ワクチン接種から270日以内のAE

・妊娠                :OTISから調査。正期産、先天異常、自然流産、早産(<37W)、分娩時在胎週数

・除外基準        :MTX服用者の妊娠

・観察期間        :70日間からいろいろ(各研究によって異なる)

・統計解析        :χ2検定、Kaplan-Meier, Cox proportional hazards models

 

結果

①   感染症

・重症感染症:4.7/100人年(肺炎:0.7/100人年、蜂巣炎:0.3/100人年、感染性関節炎/敗血症:0.2/0.2人年、超重症感染症:<0.1/100人年)

・結核:LTBI;ツ反のスクリーニングにて1272人(13.5%)、18人が顕在化した。63件(0.3/100人年)のTBの発症あり。

・日和見感染症(除。口腔カンジダ、帯状疱疹、TB)は40件。主なものは、食道カンジダ、コクシジオイデス症、CMV、MACなど。

・B型肝炎の再活性化:2人

・インフルエンザ関連のAEはワクチン接種者では5%、ワクチン未接種者は14%であった。

②  検査関連

・ADA+MTX vs. placebo+MTXで検査異常に大きな差はなかった

・中等度貧血(8.0<Hb<10g/dL)は、早期RAが多く、ADA+MTXでは少なかった。

・代謝。TC、LDL、HDL, Apo A-1, Apo B, lipoproteinはADA+MTX群もMTX単剤群も治療前後で有意な変化はない。

③  妊娠

・74人はADA治療歴あり。80人はなし。

・出産週数は、38.5 vs 38.2 weeks, p=0.30(ADAの有無で比較)

・ADA治療を受けた40%は妊娠第一期まで、16%は妊娠第二期まで、44%は出産まで使用した。

・ADA治療を受けた女性の主な先天異常、奇形と自然流産の相対リスクは、ADA未治療のRA女性、健常人女性と同程度であった。

 

議論

・抗TNF治療は感染症のリスクの上昇(日和見感染症、TB、帯状疱疹など)言われているが、他のRAのレジストリーと比較してむしろ低いか同程度であった。

・ADAはHb、脂質代謝に対する影響はMTX単剤と同程度で問題にならない。

・改めてワクチン接種は推奨したい。

・ADAは妊娠中の使用カテゴリーB(FDA)である。今回の結果は他と比較して大差ない。

・ADAの安全性を示した。

・限界。

選択バイアスがある(15132人を全項目調査したわけではない)。

コントロール群のない研究もある。

 

結論

・今回の研究では、ADAによる感染症、妊娠関連合併症、臨床検査異常、B型肝炎の再活性化について既報(とくに安全性)を確認し、発展させるものであった。

・インフルエンザワクチン接種の利点が強調されている。

 

担当:三輪 裕介

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