Arthritis Rheumatol. 2015 Jun;67(6):1449-55. doi: 10.1002/art.39098.
Disease activity in rheumatoid arthritis and the risk of cardiovascular events.
関節リウマチはどの程度心血管イベントのリスクか
<背景>
関節リウマチは心血管イベントのリスクが高い疾患として知られており、いくつかの免疫抑制薬は関節リウマチの心血管イベントを減少させる。しかし疾患活動性と心血管イベントの関連については知られていない。
<方法>
CORRONA(Consortium of Rheumatology Researchers of North America)
という大規模レジストリーを用いた(他施設共同研究)
103施設の268人のリウマチ科医が4か月ごとに作成したcase reportを用いた。
2011年9月31日までに担当医が関節リウマチと診断し、base のCDAIの評価を行ったものを抽出した。
*観察期間:初診で受診してから死亡、脱落、心血管イベントを発症、もしくは2011年9月31日まで
*除外条件:乾癬の合併例は除外した。
*疾患活動性:CDAI(≦2.8 remission、2.9-10.0 low、10.1-22.0 moderate、22< high)
6か月ごとにCDAIのAUCカーブを計算し、CDAIの平均を求めた。
*心血管イベント:カルテから抽出し、2人の循環器内科医と神経内科医が評価
心筋梗塞、脳梗塞、心血管死を心血管イベントとし心不全は除外した(NSAIDsやステロイドが影響するため)
*患者背景として評価した項目
年齢、性別、糖尿病、高血圧、脂質異常症の有無、BMI、虚血性心疾患の家族歴、アスピリンやNSAIDSの使用、心血管疾患の有無、抗リウマチ薬の種類
*統計学的手法
コックス比例ハザード回帰モデルを用い心筋梗塞や脳梗塞、死亡のリスクを評価した。
<結果>
36189人中11200人が除外され24989人がエントリーされた。
年齢、性別、一般的な心血管イベント、ベースのRAの治療をマッチさせた集団の中でCDAIが10減少すると心血管イベントが21%減少した。
また疾患活動性が低いほど心血管イベントのリスクが減少する(Figure2)
高疾患活動性の状態を寛解にすることにより53%リスクが減少した。
サブ解析の結果(Figure3)においても、いずれのグループにおいてもCDAIの減少が心血管イベントのリスクの減少と関連していた。
高疾患活動性との比較
中等度疾患活動性と比較すると35%減少
低疾患活動性と比較すると58%減少
寛解と比較すると60%減少
<討論>
母集団が大きいことと、BMI、喫煙歴、家族歴、心血管イベントのリスクファクターなども検討していることが本研究の強みである。
<Limitation>
・心血管イベントの発生はカルテの記録に頼っている
・血圧の測定、グリコアルブミンの測定、脂質の測定はしていない
(診断がついているand/or内服薬が処方されていることをありとしている)
・ほとんどが白人
関節リウマチの活動性と心血管イベントの関連から、関節リウマチの治療をtreat-to-tergetにのっとり行うことは、疾患活動性をコントロールするだけでなく心血管イベントのリスクを軽減するという面から重要である。またこれらの事象は一般人口と比較検討を今後も行っていくべきである。
<結論>
関節リウマチの活動性を低疾患活動性もしくは寛解まで改善させることは、心血管イベントのリスクを軽減する可能性がある。
担当:古屋 秀和
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