Translational Research
Volume 166, Issue 3, September 2015, Pages 244–253
http://dx.doi.org/10.1016/j.trsl.2015.02.005
Takeo Isozaki, Sho Ishii, Shinichiro Nishimi, Airi Nishimi, Nao Oguro, Shinya Seki, Yoko Miura, Yusuke Miwa, Koei Oh, Yoichiro Toyoshima, Masanori Nakamura, Katsunori Inagaki, Tsuyoshi Kasama
関節リウマチにおいてADAM-10は疾患活動性と相関し、単球系細胞の遊走、接着に関与している
1. 関節リウマチにおけるADAM-10の発現についての検討。血清中のADAM-10は健常人と比較して関節リウマチ患者で高値であった。また、関節液中のADAM-10はOAと比較して高値であった。血清ADAM-10はDAS28と正の相関をしていた。
2. 関節液中に含まれるADAM-10に対して抗体を用いて、免疫沈降しmonocyte cell lineであるTHP-1細胞の遊走を比較した。その結果、ADAM-10のない関節液ではコントロールに比較して、THP-1、末梢血単核球の遊走は抑制されていた。
3. 滑膜でADAM-10はlining cellに発現していることが確認された。さらに、滑膜組織から分離培養した滑膜線維芽細胞様滑膜細胞においてもTNF-αの刺激でmRNAの発現が認められた。
4. 滑膜線維芽細胞におけるADAM-10をsiRNA法を用いて抑制した。さらに、その細胞に対してTHP-1の接着を確認したところ、ADAM-10を抑制した線維芽細胞においては、THP-1の接着が抑制されていた。
さらに、接着因子としてはADAM-10 抑制した線維芽細胞の表面にはVCAM-1の発現が抑制されていた。
5. ADAM-10を抑制した細胞上清には、fractalkine/CX3CL1やVEGFの産生は抑制されていた。
まとめ
関節リウマチの血清や関節液にはADAM-10が発現している。そして関節液中のADAM-10は単球系細胞の遊走に関与している。
ADAM-10の産生細胞の一つである線維芽細胞における炎症の役割として、VCAM-1の産生を介し単球の接着の調整を行っている。さらにサイトカインの調節を行うことにより、関節リウマチの炎症病態に深くかかわっていることが示唆された。
担当:磯崎 健男