Journal Club【20161130】妊娠中のMRI暴露と胎児・新生児のアウトカムの関連性

「Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes」
Joel G. Ray, Marian J. Vermeulen, Aditya Bharatha, Walter J. Montanera, Alison L. Park

Departments of Medicine, and Obstetrics and Gynecology, St Michael’s Hospital,
Toronto, Ontario, Canada
JAMA. 2016;316(9):952-961.
http://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2547756

妊娠中のMRI暴露と胎児・新生児のアウトカムの関連性

【背景】妊娠第1期でのMRI暴露や、妊娠中すべての時期のガドリニウム造影剤の使用における胎児の安全性は知られていない。
【目的】妊娠第1期でのMRIと妊娠中すべての時期のガドリニウム造影剤の暴露後の長期予後を評価すること。
【設定】カナダのオンタリオ州の医療データベースから、2003年-2015年に妊娠20週超で生まれたすべての児を調べた。
【暴露】妊娠第1期MRIと妊娠中すべての時期のガドリニウム造影剤
【結果と測定】妊娠第1期でのMRI暴露では、死産、生後28日以内の新生児死亡、先天性奇形、悪性腫瘍、聴力または視力の低下を4歳まで評価した。妊娠におけるガドリニウム造影MRIでは、腎性全身性線維症(NSF)に類似した結合組織病や皮膚疾患や、より広義に出生時から診断されたリウマチ性疾患、炎症性疾患、浸潤性皮膚疾患を評価した。
【結果】1424,105件の分娩(48 %が女児、平均妊娠週数は39週)を対象とした。妊娠中にMRI検査を受けたのは1,000件中3.97 %であった。妊娠第1期にMRI検査を受けていた1,737人と受けていない1415,451人とをコホートで比較し、死産は19人対9,844人(調整相対リスク1.68、95 %信頼区間0.97-2.90)、調整リスク差は1,000人・年あたり4.7人(95 %信頼区間-1.6-11.0)であった。先天性奇形、悪性腫瘍、視力や聴力の低下のリスクは有意に高くはなかった。ガドリニウム造影MRI検査を受けた397人と受けていない1418,451人とを比較すると、NSF様の疾患のハザード比は十分に高くはなかった。一方、より広義のリウマチ性疾患、炎症性疾患、浸潤性皮膚疾患は123人対384,180人に起こっており、調整ハザード比1.36、95 %信頼区間1.09-1.69、調整リスク差は1000人・年あたり45.3人(11.3-86.8)と有意差がみられた。ガドリニウム造影MRI暴露群で7人、非曝露群で9,844人の死産と新生児死亡が発生した(調整相対リスク3.70、95 %信頼区間1.55-8.85)。調整リスク差は1000人・年あたり27.5人(95 %信頼区間9.7-138.2)と有意差がみられた。
【結論】妊娠初期におけるMRI検査は胎児や新生児へのリスクを増加させない。妊娠中のガドリニウム造影MRI検査は児のリウマチ性疾患、炎症性疾患、浸潤性皮膚疾患の発症や死産、新生児死亡におけるリスクをあげる。この研究ではまれな有害事象は検出できていない可能性がある。

強み:人口をベースとした大きなサンプルサイズ。妊娠中のMRI暴露のタイミングが明確。全てのMRI検査が統一されている。95%の妊婦が産前に超音波検査を受けている。ほとんどの妊婦で妊娠日が確定。器官形成期である妊娠5-10週のMRI検査の影響を追加で分析
limitation:MRI検査を受けた妊婦のサンプル数が少なく、まれな奇形などは検出できていない可能性。NSF様疾患を見落としている可能性。妊娠21週を越えなかった妊婦は除外しているため、MRI検査を受けたことにより流産・中絶しているリスクは不明。一般的な催奇形性の原因となる薬剤の情報が欠如。4歳までしかフォローしていない。

<上級医のコメント>
オンタリオの出産データと、健康保険データを突合させデータベースとして使用した研究。組み入れ、暴露、アウトカムの定義、について記載がしっかりとなされている。
初回の妊娠についてのみの研究であるため、二回目の妊娠以降には適応できない。
合併症については、MRI撮影をしなければならなかった疾患と異なる可能性、妊娠合併症を来しうる疾患が拾いきれていない可能性があるため、今回の結果が過大評価となっている可能性がある。
そもそもMRI撮影をせねばならなかった適応交絡については、プロペンシティースコアを用いて背景の調整を行っているものの、未測定の因子もあるために完全には調整できない。

 

担当:齋藤麻由

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