Journal Club【20170125】ADAM15の滑膜線維芽細胞における炎症への関与について

『A disintegrin and metallproteinase 15 knockout decreases migration of fibroblast-like synoviocytes and inflammation in rheumatoid arthritis』

Jinliang Gao, Wei Zheng, Liming Wang, Bailin Song

The Affiliated Hospital, Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin 130117, P.R. China.

Molecular Medicine Reports. (2015) Jun;11(6):4389-96.

『ADAM15の滑膜線維芽細胞における炎症への関与について 』

 

【背景】

・ADAMはさまざまな細胞表面に出現している蛋白の解放(liberation)や退行性・変性(degenerative)に関与している。

・ADAM15は前立腺癌や乳癌をはじめとした腺癌で上昇が確認されており、癌の進行や転移に関係している。

・ADAM15は癌以外でも、関節リウマチのような炎症性疾患でも発現が確認されている。

【目的】

ADAM15の発現はリウマチモデルラットとヒトの滑膜線維芽細胞(FLSs)において炎症や遊走に影響しているかどうかを調べること。

【方法・結果・考察】

◆Figure 1

炎症下でのADAM15の発現と、LPSに刺激されたFLSsにおけるADAM15を標的としたsiRNAの効果を調べた

→Reverse Transcription-quantitative Polymerase Chain Reaction (RT-qPCR)とWestern blotting法を使用

  • Controlやsi-NCに比べsiADAM15ではADAM15のmRNAの発現が抑制されていた。
  • Controlやsi-NCに比べsiADAM15ではADAM15に関連した蛋白の発現が抑制されており、

Western blotting法でもそれが確認された。

fig1

◆Figure 2

siADAM15がLPSによって引き起こされた炎症性サイトカインの発現を抑制するかを調べた

→siADAM15、si-NC、Controlの細胞に対し、LPSで刺激後、ELISA法でTNF-α、IL-6、IL-15、CXCL12の濃度を測定した。

(A)~(D) それぞれControlやsi-NCに比べsiADAM15ではTNF-α、IL-6、IL-15、CXCL12の発現が抑制されていた。

fig2

◆Figure 3

ADAM15のアポトーシスに対するメカニズムを調べた。

  • siADA15がアポトーシスを引き起こすかをTUNEL法(DNAの断片化を観察する方法)で確認した。

→Controlやsi-NCに比べsiADAM15ではアポトーシスを増加させていた。

  • siADAM15がアポトーシスを引き起こすかをELISA法で確認した

→蛍光色素の反応の割合はControlやsi-NCに比べsiADAM15では増加していた。

◆Figure 4

siADAM15がFLSの遊走や浸潤を抑制するかを調べた。

→創傷治癒アッセイ法で確認した。

(A)~(B) 遊走、浸潤ともにControlやsi-NCに比べsiADAM15ではそれらが低下していた。

fig3,4

◆Figure 5

siADAM15がVEGF-A、MMP-1、MMP-3の発現を抑制するかを調べた。

→siADAM15、siNC、Controlの細胞に対し、LPSで刺激後、Western blotting法でVEGF-A、MMP-1、MMP-3の発現を確認した。

(A)~(B) Controlやsi-NCに比べsiADAM15ではVEGF-A、MMP-1、MMP-3の発現は抑制されていた。

fig5

◆Figure 6

CIA(Collagen-induced arthritis) ratにおけるADAM15ノックダウンの関節炎とその病理組織に対する検討。

→細胞培養用コラーゲンにsiADAM15を抽入したものを、マウスに投与し、関節炎の反応を見た。

  • Controlやsi-NCに比べsiADAM15では関節炎のスコアが低下していた。
  • ~(C) Controlやsi-NCに比べsiADAM15では病理組織学的なスコアも低下していた。

fig6

 

【結論】

siRNAによってADAM15をノックダウンすると炎症が抑えられ、ラットモデルにおいて関節炎も抑えられた。また、FLSのVEGF-A、MMP-1、MMP-3を介した遊走や浸潤を抑制できた。これらの結果より、ADAM15は関節リウマチの治療において治療対象となりうるかもしれない。

 

 

【上級医のコメント】

ADAM15はこれまでも関節リウマチ滑膜に発現していると報告されている(Arthritis Res Ther. 2005;7(6):R1158-73.)。本研究では滑膜線維芽細胞様滑膜細胞からのADAM-15の産生とその抑制による各サイトカインの産生を検討されている。サイトカインの種類として適当であるの、については検討が必要と考える。また、CIAモデルについても投与するcollagenとADAM-15 siRNAをともに投与する形では抗原抗体反応による影響が強いと考えられる。実際のknock downされた関節炎としての評価と比較するとADAM-15が滑膜炎を起こしていると指摘するには弱い印象である。

 

担当:西見 慎一郎

 

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