妊娠中のアセトアミノフェンの使用と小児期の行動異常の関連性
JAMA Pediatr. 2016; 170(10): 964-970
【序章】アセトアミノフェン(パラセタモール)は妊娠中の多くの女性に使用されている。これまでの妊娠中のアセトアミノフェンの使用に関する研究では、胎児の神経発達の異常に関連があると示唆している。しかしながら、測定できない行動異常との関連性についてはよくわかっていない。
【目的】児の行動異常と1) 妊娠中のアセトアミノフェンの使用、2) 産後のアセトアミノフェンの使用、3) パートナーのアセトアミノフェンの使用との関連性について調査した。
【デザイン】2015年2月から2016年3月まで、ALSPACのデータを取集、解析し、前向きコホート研究を行った。1991年から1992年の間の7796人の母親、その児とパートナーを調べた。
【暴露】アセトアミノフェンの使用を、妊娠18週と妊娠32週、その児が61ヶ月の際の質問票で評価した。
【主要アウトカムと測定】行動異常に関する母親からの回答は、児が7歳の時にSDQを用いて行った。児における行動異常と妊娠中、産後、パートナーのアセトアミノフェンの使用との関連性のリスク比を、相互に見積もった。
【結果】妊娠18週(4451人:53%)でのアセトアミノフェンの使用は、行動異常(リスク比1.42)、多動兆候(リスク比1.31)、また妊娠32週(3381人:42%)ではそれらに加えて、情動兆候(リスク比1.29)、全体的な困難さ(リスク比1.46)と有意な関連性が見られた。産後の使用(6919人:89%)、パートナーの使用(34541人:84%)では関連性は見られなかった。
【結論】胎児期にアセトアミノフェンに暴露された児は、多彩な行動異常のリスクが増加し、産後やパートナーの使用とは関連がない。さらなる研究を必要とする。
【予想される機序】妊娠後期に胎児の脳の発達が活動的になるため、アセトアミノフェンの暴露に敏感になることが示唆される。1) アセトアミノフェンの内分泌阻害因子が胎児の脳の発達を妨げている、 2) アセトアミノフェンが酸化ストレスを通じて脳の発達を阻害している、など。
【この研究の強み】前向きコホート研究であること、Nが多いこと
【limitation】アセトアミノフェンの使用量、使用期間が不明確であること
【上級医のコメント】今回の論文では妊娠中のアセトアミノフェンの服用にて児の行動異常のリスクが増加することが報告されたが、薬の使用量や使用期間がはっきりと記載されていないため、さらなる研究が必要とされる。アセトアミノフェンは妊娠中にも使用できる鎮痛剤として知られている一方で、近年は胎児の動脈管閉鎖との関係性が否定できない報告もあり、投与に関してはリスクとベネフィットをきちんと考慮することが必要だ。
2017年9月11日 母性内科カンファレンス抄読会 担当:齋藤 麻由