Targeting ADAM-17/Notch Signaling Abrogates the Development of Systemic Sclerosis in a Murine Model.
Niloufar Kavian, et al.
Arthritis Rheum. 2010 Nov;62(11):3477-87
【目的】全身性強皮症(SSc)はさまざまな臓器の線維化,血管の過剰な反応,免疫学的な調整不全などによって特徴づけられる.Notch signalingは線維芽細胞の恒常性や血管新生,リンパ球の発達に影響することが知られている.われわれはこの研究でヒトとマウスのSScのNotch経路の役割を調べた.
【方法】SScはBALB/cマウスにおいて6週間毎日HOCIを皮下注射することによってつくられた.Notch経路の活性化はSScマウスとsclerodermaの患者の組織において調べられた.SScマウスはNotch経路の特別なインヒビターであるγ-secretase inhibitor DAPTによって処理されるものと,そうでないものとでわけられ,疾患の重症度が評価された.
【結果】HOCIに暴露されたマウスは,肺線維症と抗DNA topoisomeraseⅠ抗体をもつびまん皮膚硬化型SScに進展した.Notch経路は皮膚や肺の線維芽細胞,SScマウスの脾細胞,sclerodermaの患者からの皮膚生検組織において,過剰に活性化されていた.Notch経路において関与する蛋白分解酵素であるADAM-17は,活性酸素種の局所的な産生に反応して,マウスと患者の皮膚において発現していた.HOCIを投与されたマウスにおいて,DAPTは皮膚と肺の線維化の進展を著明に減らしており,皮膚線維芽細胞の増殖と内皮細胞のH2O2産生を減少させていた.そして,抗DNA topoisomerase Ⅰ抗体の産生を阻害していた.
Figure 1
・Notchは皮膚,肺,線維芽細胞,HOCIで誘導されたSScマウスにおける脾臓B細胞などにおいて過剰に活性化される.皮膚において,この活性化はγ-secretase inhibitorによって阻害される(Figure 1A, 1B).
・限局性強皮症(morphea)あるいはびまん皮膚硬化型SSc患者の皮膚においてNotchは活性化される(Figure 1C, 1D).
Figure 2
・Notch阻害はSScのマウスにおける皮膚と肺の線維化を減少させる.
Figure 3
・Notch阻害はex vivoにおけるHOCIで誘導されたマウスからの血清での増殖前の影響を減少させる.そして,皮膚の線維芽細胞の増殖率を正常化させ,Ⅰ型コラーゲン産生を減らす.また,HOCIで誘導されたSScのマウスの皮膚におけるα-SMA発現を減らす.
Figure 4
・Notch 阻害は蛋白質過酸化物の血清濃度を減少させ,HOCIへの暴露されたマウスからの血清によって誘導された内皮細胞のH2O2産生を減らす.そしてin vitroでの内皮細胞によるH2O2産生を直接的に減らす(Figure 4A-4C).
・in vitroでNACによる処理は,HOCIで誘導されたSScマウスからの皮膚線維芽細胞におけるNotch活性化を減らす.一方で,正常線維芽細胞において外因性のH2O2はNotchを活性化させる(Figure 4D, 4E).
Figure 5
・Notch経路を活性化させるADAM-17はSSc患者とマウスからの皮膚において上方調節されている.
Table 1
・Notch阻害はHOCIで誘導された自己免疫反応を減少させる.
【結語】われわれの結果はSScにおける,活性酸素種によって活性化されるADAM-17/notch経路の要となる部分を示している.この経路の阻害は生命を脅かす疾患の新しい治療となるだろう.
・重要なポイントはどこか.
線維化の病態においてNotch signalingがどのように関与しているのかを示している
こと.
・ユニークなポイントはどこか.
Notch signalingにADAM-17が関与していること.
・今後の研究展開や論文に対する検討課題.
Notch signalingの過程で,ADAM-17の発現については述べられているが,どのような
機能を果たしているかの詳細は明らかになっていないこと.
・自分なりの疑問点.
ADAM-17と活性酸素種との関連について.
担当:前岡愛里