当科より診断に特化した本を出版することになりました。前半は関節痛、発熱などの膠原病を疑わせる主要な症候を病態生理、解剖の視点から解説し、後半は主要疾患のエビデンスのまとめとなる予定です。2024年4月に出版予定です。ご期待ください。
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病気とは何か?病気を相手に日々思考を続ける私たちの大切な命題です。もっとも単純かつ適確に答えを出すなら、病気とは“正常でないこと”となると思います。では、私たちが学ぶべきモノは何か?ヒトの身体の“正常”。に他なりません。
全身診れる医者作り。昭和大学リウマチ膠原病内科の教育コンセプトです。あらゆる臓器や組織が障害されるからこそ、経過がややこしく難解だからこそ、何度も経験している疾患ではないからこそ、膠原病診療、特にその診断推論では全身くまなく客観的に評価できる“ジェネラリストの視点“が大切になります。鑑別疾患ありきの診療も大切ですが、バイアスを排除し、患者さんの訴えから、身体の中で生じてる現象を、『どこが正常とずれているか?』『そこから導き出せる病態は?』という思考回路が不可欠です。
本書では、関節痛、筋肉痛、しびれ、発熱などなどの症候を取り上げ、いわゆるcommon diseaseからどのような思考回路で膠原病疾患を鑑別すべきかを中心にお話します。特に他書籍ではなかなか触れられてない解剖学や組織学、生理学、免疫学の知見をとことん掘り下げ、その病態がどんな言葉に宿って患者さんの口から出てくるか。その解釈と、それに確信を得るためのトドメの一手ともなる問診や身体所見を解説していきます。血液検査や画像検査についても最新のエビデンスをもとに有効利用とピットフォールについても触れていければと思います。
膠原病疾患はときにシマウマ疾患に考えられがちですが、『蹄の音をきいたら馬もシマウマも想像しろ!それだけではなく鹿や豚などの有蹄類を全部想像すべし!』。そしてその大前提として『蹄の音の大きさ、歩幅のリズム、今いる環境、放つ臭いや鳴き声などから、どの動物の優先順位が高いのか、常に想起していく習慣』をつけていくことが必要です。
蹄の音をきいたら有蹄類全部考える。木も見て、森も見る。究極のジェネラリストだからこその思考過程で膠原病領域も学んでいきたいものです。
高橋良
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高橋と私は10年前から研修医教育及び学生教育活動に奮闘してきました。形として残すことが多くの方々に私たちの医療や考えを伝えることができると考え、書籍化は長年の夢でありました。そんな中、今回のお声がけは大変ありがたく感じています。
私は途中から臨床研究を学ぶために国内留学し、高橋はその間、さらなる高みを目指し勉強を続け、独自の視点での臨床推論や診察手法を確立し、今もなお、進化しつづけています。病態生理、解剖学を駆使し診断に至る考え方は、とても理解しやすく、かつ、記憶に残りやすいのでないでしょうか。
私が担当する後半は代表疾患のエビデンスをまとめ、臨床研究の方法論を学んだ知識を活かし文献を吟味しております。今回は診断がメインテーマであるため、治療は取り扱わず、疫学、診断、予後のエビデンスに絞っています。最後の章には疾患ごとの分類基準、ガイドラインを記載の予定です。私の担当のパートは、見やすさ、一覧性を意識し作成しておりますので、頭の整理に使っていただけるのではないかと思います。
また、資料を見る際、統計関連の用語が出てくるとついつい目をつぶっていませんか。この本ではエビデンスにでてくる用語をピックアップし解説させていただいています。少しでも理解をすすむようにお役に立てればと思います。
二人の知識や経験を上手に融合させた書籍です。ご期待ください。
矢嶋宣幸