RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性強皮症患者の心肺障害の進展:前向きコホート研究【Journal Club 20181212】

Cardiopulmonary Disease Development in Anti-RNA Polymerase III-positive Systemic Sclerosis: Comparative Analyses from an Unselected,Prospective Patient Cohort

Anna-Maria Hoffmann-Vold, Øyvind Midtvedt et al

2017 Apr;44(4):459-465

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<サマリー>広範囲な皮膚硬化と腎クリーゼ,悪性腫瘍はRNAポリメラーゼⅢ抗体陽性強皮症患者に高度に見られるが,心肺疾患(間質性肺炎や肺高血圧)に関しては未だ議論の分かれるところである.今回RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性とその他の抗体陽性患者の心肺予後を前向きコホートデータを用いて比較した.279名の強皮症患者のコホートを用いて連続的なデータのあるILD,PHを評価した.33(12%)がRNAP:RNAポリメラーゼⅢ陽性で79名がdiffuseの強皮症だった.
RNAPではILDの進行は早い傾向が得られた.

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P:強皮症患者
E:RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性
C:その他の強皮症(抗Scl,セントロメア抗体,そのほかの抗体陽性,抗体陰性)
O:ILD,PHの発症,増悪率

 <セッティング>
ノルウェーのOlso University Hospital 強皮症コホートに登録された患者

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
前向きコホート研究

<Population、およびその定義>
2013年EULAR/ACRの強皮症の診断基準を満たす
肺,循環器検査が入手可能
強皮症自己抗体のデータが入手可能であった

<主な介入、および、その定義>      
RNAP

<Control、および、その定義>
ACA,ATA,other Ab,No Ab

<主なアウトカム、および、その定義>
ILDの評価項目
介入時と直近の呼吸機能テスト,HRCT(1.25mm).
網状影やGGOも繊維化と判断し,繊維化は全肺の%表された.
線維化の進行度合いも年単位で表現した.

PHの評価項目
NTproBNP,心エコーでRVSPが測定され,肺高血圧症が疑われた例は全例右心カテーテルを施行された.
RVSP>40mmHg,他に説明しようのない呼吸不全,DLCOの著しい低下,6分間歩行距離で肺高血圧症疑いが検索された.右心カテーテルにてmeanPA25mmHg以上で肺高血圧症PHと診断され,前後毛細血管性肺高血圧症はPWCP15mm以上か未満かで判断された.PAHは前毛細血管性肺高血圧で肺の繊維化が20%未満,FVC70%以上で他に原因がない場合に診断した.

<交絡因子、および、その定義>
罹病期間,PH,PAH,mPAP,PH

<解析方法>
心,肺障害のアウトカムと生存解析はコックス比例ハザードモデルを使用した.
単変量解析において独立リスク因子が20%以上の優位性の場合に交絡因子に加えた.

<結果>
Tab1.279名がエントリーされた.26名がデータ欠損で除外されたが,患者背景は加えた場合と有意差はなかった.
抗セントロメア抗体陽性:ACAが134名(48%)で最も多く,抗Scl抗体:ATA46名(16%),RNAポリメラーゼⅢ抗体33名(12)であった.残りの66名は(抗RNP抗体,Th/To抗体,抗P m Scl75抗体,抗核抗体陽性のみ,抗体陰性)であった.95%は白人で発症時の平均年齢は49歳,観察期間は11.5年だった.59名(21%)が男性であった.RNAP陽性患者はdiffuseの強皮症と診断され,mRSS高値,腎クリーゼと診断され,GAVEを持つものが多かった.
ILD 49%の患者は観察期間中に肺の線維化は認めなかった.33%が1〜20%の肺の線維化を認め,18%が20%以上の肺の線維化病変を認めた.Fig1で20%未満の線維化からフォローアップ時に20%以上に移行する例はRNAP群で多かった(8.9%→14%).ATA群(22.5→25%)Tab2.単変量解析で20%未満の線維化の人がフォローで20%以上に悪化する率はRNAPで高い傾向にありはACAは線維化20%以上,肺活量70%未満と低い傾向にあり,ATAはその逆であった.
PH Tab3.51名(18%)がPH,33名(12%)がPAH,18名がPH-ILDと診断された.RNAPのPAHの頻度はACAと比較し低かった(18% p=0.025).follow upのNTProBNPやsPAPで有意差は見られなかった.
Mortalityいずれの抗体も5年,10年生存率で有意差は見られなかった.

<結果の解釈・メカニズム>
RNAP患者の肺病変は急激に進行する群と,そうじゃない群に分けられた.
RNAPの患者の方が皮膚効果の進行が早いため肺病変の発見が早く,活動性の状態が見られやすかった可能性はある.
PHやmortalityはRNAPで高いという結果は得られなかったが,これまでの報告から意見は分かれている.

<Limitation>
・白人が大多数を占めている
・治療の内容が不明で調整されていない

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・強皮症研究では治療介入も交絡調整に含むことが重要と思われる.

<この論文の好ましい点>
・データ(心エコー,右心カテーテル,呼吸機能)がしっかり揃っている
・論文が読みやすい

<この論文にて理解できなかった点> 
主要評価項目,交絡の宣言がなく,多変量解析は羅列形式

 

担当:小黒奈緒

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