関節リウマチ患者のグリコシル化ヘモグロビン濃度(HbA1c)に対するTNF阻害剤とトシリズマブの効果 観察研究【Journal Club 20190116】

Effects of tumor necrosis factor inhibitors and tocilizumab on the glycosylated hemoglobin levels in patients with rheumatoid arthritis; an observational study

Yukimi Otsuka

2018 Apr 25;13(4):e0196368.

<サマリー>
RA患者において、TCZ治療はTNF治療と比較してHbA1cを有意に低下させる

P:RA患者
E:TCZ治療
C:TNF治療
O:HbA1cの推移

 <セッティング>
九州大学附属病院、九州大学別府病院、広島赤十字原爆病院、麻生飯塚病院2008/1-2015/12に3か月以上治療継続したRA患者さんのうち、TNFかTCZ使用者

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
 観察研究(3か月間。開始時、1か月後、3か月後の3点調査)

<Population、およびその定義>
2008/1-2015/12に3か月以上治療継続したRA患者さんのうち、TNFかTCZ使用者
TNF=IFX+ETN+ADA+GLM+CZP
合計971例。
除外基準:開始時のHbA1c未測定者(444例)、3か月後のHbA1c未測定者(306例)

<主な要因、および、その定義>      
・生物学的製剤使用(TCZ)

<Control、および、その定義>
・生物学的製剤使用(TNF=IFX+ETN+ADA+GLM+CZP)

<主なアウトカム、および、その定義>
・アウトカム:治療開始前と3か月後のHbA1cの変化(ΔHbA1c)
・ΔHbA1c≧0.5を有意とした(MCIDによる)
・HbA1cはNGSPを使用し、JDSの場合には+0.4とした

<交絡因子、および、その定義>
・年齢、性別、BMI、罹病期間、RF陽性率、Stage, Class、他のBIO使用歴、DMの診断、RAとDM薬、DAS28-CRP、mHAQ-DI。
・DMの基準はHbA1c≧6.5かDM薬使用

<解析方法>
・ベースラインはt検定、Wilcoxon±Mann±Whitney test、χ2 test
・HbA1cの変化はボンフェローニ補正したフリードマン検定およびウィルコクソンの符号付き順位検定
・オッズ比と95%信頼区間(CI)は無条件ロジスティック解析

<結果>・解析対象 TNF 154人(IFX25,ETN41,ADA33, GLM44, CZP11)、TCZ 67人
・両群でMTX使用率、使用量、年齢、RF陽性率に差をみとめた。(Table 1)
・DMの有無、合計別にTNFとTCZを比較した。DMありTCZ群は時間経過でHbA1cが逐次改善した。TNF群は1か月で改善し、3か月では変化なし。(Fig1)
・ΔHbA1c≧0.5改善率はTCZ群で有意(Table 2)
・DAS-CRPはTCZ群で有意に改善(Table 2)
・ロジスティック解析では、ベースラインにおけるDMの有無、抗DM薬使用の有無、ステロイド減量、2日以上の入院、DM治療強化、TCZ治療が挙げられた。(Table 3.4)

<結果の解釈・メカニズム>
・RA患者さんをBIOで治療するとRAの活動性が低下し、ステロイド使用量が減り、身体活動が改善され、もっと運動し、服薬遵守が改善され、インスリン感受性と血糖コントロールがよくなる。
・TCZはヒト化抗体で、膜結合型IL-6受容体と可溶性IL-6受容体の両方を遮断する。循環するIL-6は肥満のために上昇し、肝臓のインスリン抵抗性をもたらす。
・Sarilumabも、プラセボと比較してRAの糖尿病患者および非糖尿病患者のHbA1c値を減少させる

<Limitation>
・後方視研究にて未測定交絡因子が存在する
・既BIO治療の影響が存在する
・除外患者数が多い(選択バイアスにつながる可能性)
・TNF5剤とすべて同じ群にした(TNF間差異を無視)
・時代とともに使用できるBIOの種類が異なる
・HbA1cのみであり、今後発症しうるCVリスク、死亡には言及していない
・DM治療強化のメルクマールなし

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・BIOを使用して疾患活動性を低下させることはDMを改善させる方向になる。
・TCZ>TNFでその効果は高い
・TCZが2型DMのための新しい治療法の一助になる可能性

<この論文の好ましい点>
・RA治療中の糖代謝に対するBIOの影響を比較した初の論文

 

担当:三輪裕介

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