質的videocapillaroscopyと呼吸機能との関連:強皮症患者における血流障害は肺障害の病態解明に繋がるか【Journal Club 20190306】

Quantitative videocapillaroscopy correlates with functional respiratory parameters: a clue for vasculopathy as a pathogenic mechanism for lung injury in systemic sclerosis

著者 Alfredo Guillén-Del-Castillo1, Carmen Pilar Simeón-Aznar

2018 Dec 19;20(1):281

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<サマリー>
Nailfold capillary異常が強皮症の診断に利用されるようになって久しい.最近ではnailfold videocapillaroscopy(NVC) を用いて病期を早期,活動期,晩期に分けるなどの分類も進み,病態解明や強皮症の予後予測,PAHとの関連を見た報告が散見されている.今回定量的NVCと呼吸機能との関連を報告した初めての研究である.

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P:強皮症患者
E:ILDあり
C:ILDなし
O:NVC feature

 <セッティング>
Vall d’Hebron Hospital の強皮症コホート内の患者134名

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
横断研究

<Population、およびその定義>
LeRoyまたは2013年EULAR/ACRの強皮症の分類基準を満たす
NVC画像が8つ以上得られなかった患者は除外された.自家幹細胞移植,肺移植後の患者は除外された.

<主な介入、および、その定義>      
ILDあり 副次PAHあり

<Control、および、その定義>
ILDなし

<主なアウトカム、および、その定義>
NVCの評価項目
定量的NVC:毛細血管密度(capilary density),毛細血管拡張an increase in capillary diameter 20μm以上の有無,巨大毛細血管拡張giant capillary 50μm以上の有無,微小出血,蛇行毛細血管,血管新生の有無(分枝状,樹枝状).
左右の第2-4指のcapillaroscopic featureは合計され,指の本数で割り,その後各爪の幅mmで割り算され算出された.
定性的NVC:Cutoloらにより提唱された分類 正常,早期,活動期,晩期

<交絡因子、および、その定義>
FVC
NVCの特徴,NVC測定時の年齢,初発症状発症時からの経過年数,dcSSCか否か,性別,HRCTで間質性変化の有無,そのほか自己抗体の有無,digital ulcerの有無

DLCO
FVC,右心カテーテルで診断されたPAH,TRV>2.9m/sまたはUCGでのその他のPH所見

<解析方法>
Mann Whitney U test ボンフェロー二法で確認された.
Inter-observer,intra- observer に関しては Cohen’s kappa coefficientで検定された.
多変量解析 線形解析

<結果>
Table1.113名,84.3%が女性で88名(65.7%)は限局型強皮症,90%以上2013年ACR/EULAR分類基準を満たした.抗セントロメア抗体が49名(36.6%)でもっとも多く,次いでScl70抗体が31名(23.1%)であった.障害臓器は消化管110名(82.1%),心疾患103名(76.9%),間質性肺炎58名(43.3%),筋骨格系40名(29.9%),肺高血圧(過去のRHCで診断)11名(8.2%)であった.

Table2.FVC平均は80.8%(±20.1)でDLCOは66.2%(±23.7).三尖弁逆流速度:TRVは96名で測定可能で平均2.8m/s(±0.3)であった.

Table3.計2186画像が解析され,一人当たり平均16.3枚(±5.0)の画像であった.各指2[1-3]が評価された.
毛細血管密度は中央値5.44/mm(4.33-6.74)でILD群では中央値4.86,no ILD群5.88で有意差を持って,ILD群で低かった.また,ILD群では血管新生変化が多かった(0.56/mm vs 0.31,p=0.005).PAH有無での比較でも血管新生変化は有意差を持ってPAH群に多く見られた(0.70/mm vs 0.33/mm p=0.007).ボンフェロー二法(p<0.008)を用いてもいずれの群も有意差が得られた.定性的NVC late patternはILDの者で高い傾向(p=0.006)で高い傾向にあった.また,Table4.でlate patternの者ほどactiveやearlyと比較しFVCやDLCOが低い傾向にあった.異なる検者間の検証:inter-observerと検査結果の再現性:intra-observerもcohen k統計されいずれも適していた.

Table6.男性であること,血管新生の有無,HRCTでILDが見られることがFVCの低下と関連が見られた.抗セントロメア抗体の存在は逆相関していた.
巨大毛細血管と拡張毛細血管,HRCTでのILD,FVCの低下とPAHはDLCOの低下と相関が見られた.

<結果の解釈・メカニズム>
これまでNVCの定性的や定量的評価で強皮症の診断やPHやDU(その重症度)との関連性の報告は見られていた.FVCに関してもNVCと定性的評価との関連の報告は見られていたが,今回新規に定量的評価とILDの関連を報告されている.
今回の研究ではILDがあると毛細血管密度が低い(これに関しては過去の報告と一致),血管新生の病変が多く見られることが観察された.これに関しては血管内皮の障害がcapillaryから肺の繊維化に影響を及ぼしていることが示唆された.

<Limitation>
横断研究であるため因果関係が不明

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
今後治療反応によるNVC所見の変化やそれに伴う,有効な薬剤の判断に使用できればと思われた. 

<この論文の好ましい点>
仮説を宣言している
  臨床データとNVCデータを盲検化している.検者間と検査間の再現性も見ている.

 

担当:小黒奈緒

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