強皮症に対するニンテダニブ【Journal Club 20190605】

Nintedanib for Systemic Sclerosis Associated Interstitial Lung DiseaseSENSCIS trial

著者 Oliver Distler, M.D., Kristin B. Highland, M.D., Martina Gahlemann, M.D., Arata Azuma, M.D., Aryeh Fischer, M.D., Maureen D. Mayes, M.D., Ganesh Raghu, M.D., Wiebke Sauter, Ph.D., Mannaig Girard, M.Sc.,

Margarida Alves, M.D., Emmanuelle Clerisme‑Beaty, M.D., Susanne Stowasser, M.D., Kay Tetzlaff, M.D., Masataka Kuwana, M.D., and Toby M. Maher, M.D., for the SENSCIS Trial Investigators*

2019 May 20. doi: 10.1056/NEJMoa1903076.

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<サマリー>

全身性強皮症に関連した間質性肺炎に対してニンテダニブ,チロシンキナーゼ阻害薬の抗繊維化,抗炎症効果が臨床導入前から期待されている.レイノー発症から7年以内でCTにおいて10%以上の間質性変化を認める全身性強皮症患者576名をランダムか割付し,プラセボ群と52週後のFVCを比較した.

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P:全身性強皮症患者
E:Nintedanib
C:Placebo
O:52週後のFVC 

<セッティング>
32カ国の他施設

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
RCT 二重盲検化 1:1 抗Scl70抗体の有無で層別化された.

<Population、およびその定義>
2015年11月から2017年10月にリクルートされた576名.
18歳以上でACR/EULARの診断基準を満たした全身性強皮症患者で初発のレイノー症状から7年以内の者.
間質性肺炎はHRCTで12ヶ月以内に撮像されたもので一人の放射線科専門医によって診断され10%以上繊維化が見られたと場合と定義された.
40%以上のFVCとDLCOが適用された.PSL10mg以上投与され,半年以上の間MTXまたはMMFが維持量で投与されている者
Trialの間,臨床的に全身性強皮症の悪化が認められた際は追加治療を可能とした.
有害事象(4週以内に投与薬剤で生じたと思われる場合,8週以上に投与薬剤とは関連しないと思われる場合)によって薬剤の中しまたはニンテダニブ100mg隔日投与への減量は可能とされた.
除外基準
重度の肺高血圧を有する患者

<主な介入、および、その定義>      
ニンテダニブ群 150mg隔日投与

<Control、および、その定義>
Placebo

<主なアウトカム、および、その定義>
Table2
Primary outcome
52週の間のFVC年間低下率(ml/年)

Secondary outcome

mRssのベースラインからの変化,SGRQ(呼吸器疾患を有する患者のHRQOL質問票で50項目からなるquestionnare:症状,活動性,生活への支障などを評価する 0〜100点で高得点ほどHRQOLの悪さを反映した MCIDはSSc-ILDでは確立されていないがIPH患者をもとに4に設定された).52週の%FVC低下量(ml),52週の%FVC低下量(%),52週の指尖潰瘍数,DLCOの減少率,52週で5%以上%FVCが低下している者の割合,52週で10%以上%FVCが低下している者の割合,FVC(ml)が減少率が5%以上である者の割合,FVC(ml)が減少率が10%以上である者の割合,HAQ-DI(0-3点,高い方がdisfunction高い),FACIT(0-30点,高い方が呼吸苦強い),死亡率.

<交絡因子、および、その定義>
なし

<解析方法>
ITT解析された,primary endpointは線形混合効果モデルを用いて解析された
Sample sizeは 52週の治療群のFVC70〜110mlの低下の予測のもと計算された(SLSー1,INPULSIS trail参考)
症例数260 power:90%

<結果>
Fig1)
576名の患者は少なくとも1回以上ニンテダニブまたはプラセボを投与された.

Tab1)両群間の患者背景に有意な差は見られなかった.Diffuseとlimitedは約半数ずつであった.最初のレイノーが見られてからの中央値は3.4年であった.平均年齢は54±12.2歳,FVCは72.5±16.7%DLCOは53±15.1%であった.CTでの間質性変化は36.0±21.3%で48%がMMF投与されていた.

ニンテダニブ群の80.6%(232)とプラセボ群の89.2%(257)は治療を完遂した.

Primary endpoint Table2
52週の間のFVC変化率はニンテダニブ群で低かった(-52.4ml/year vs-93.3ml/year)2.9-79.0 p=0.04.mutipule imputation での感度解析ではP=0.06 to 0.10.52週のFVC低下量(ml)と結果は類似していた.

Key secondary endpoint
52週のmRss ニンテダニブvs placebo (-2.17 vs -1.96)P=0.58
52週のSGRQ (0.81 vs -0.88),HAQ-DI,FACIT-dyspnea は両群で有意さを認めなかった.

有害事象
Table3)重篤な有害事象の出現率は両群で類似していた(24 vs 21.5%).ニンテダニブ群で治療継続できない割合は高かった(16.0 vs 8.7%).最も多い有害事象は下痢でニンテダニブ群では75%プラセボ群で31.6%見られた.
死亡率
全経過中にニンテダニブ群10例(3.5%),プラセボ群9例(3.1%)が死亡した.

<結果の解釈・メカニズム>
肺の繊維化の指標であるFVCに関してはニンテダニブ群はプラセボと比較し低下を抑えるという結果であった.IPFの患者に対して行ったニンテダニブvs プラセボと比較し,FVC低下抑制が軽度であった理由としては集団の半分以上にMMF処方が見られたことが原因と思われる.SLS―1(SScのMMF vs プラセボ)と類似した結果であった.
ニンテダニブに関して,今回FVC低下を抑えることは期待できたが,全身性強皮症の疾患修飾までは至らない可能性が高いと思われた(指尖潰瘍,皮膚硬化mRSS,HRQOL:SGRQは両群間でいずれも有意差を認めなかった)

<Limitation>
肺高血圧患者は除外されており,同患者での効果は不明である.

<この論文の好ましい点>
多人種を含んだtrialであること.

 

担当:小黒奈緒

 

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