Matrix metalloprotease 3 is associated with sarcopenia in rheumatoid arthritis – results from the CHIKARA study
著者 Tada M1, Yamada Y2, Mandai K2, Hidaka N1
(1 Osaka City General Hospital, 2 Osaka City University Medical School)
Int J Rheum Dis. 2018 Nov;21(11):1962-1969.
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<サマリー>
ADLが維持された疾患活動性が低いRA患者のサルコペニア有病率は28%であり、低BMI、高脂肪、血清MMP3高値が独立したサルコペニアに関連する因子である。血清MMP3はRA患者のサルコペニアに関連するマーカーとなりうる可能性がある。
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P:RA患者
E:サルコペニアを有病している
C:有病していない
O:サルコペニアと血清MMP3の関連性
<セッティング>
大阪市立総合医療センター整形外科 RA患者レジストリー(CHIKARA study)
対象期間:2016~2年間
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
前向きコホート
<Population、およびその定義>
・20歳以上のRA患者(ACR/EULRA2010分類基準)
リウマチ科医によって標準的RA治療がされている
・除外基準:インプラント挿入済、筋骨格疾患、神経疾患、悪性腫瘍、心不全、重度腎障害患者、立位保持ができない
・健康状態、ADL、既往歴、転倒歴、骨折歴をアンケートにて確認
・採取データ:罹病期間、ステージ/Class、CRP、MMP3、ACPA、RF、ESR、疾患活動性(DAS28-ESR、SADI)、mHAQ
・体組成を測定:体重、BMI、筋肉量、体脂肪量、体内水分量、推定骨量、基礎代謝率、骨格筋量指数(SMI)→四肢の筋肉量を合計し、身長の2乗で除した値
<主な要因、および、その定義>
・サルコペニア有病
診断:AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)基準
SMI:≦7.0kg/㎡(男)、≦5.7 kg/㎡(女)
カットオフ:3m歩行テスト、握力測定
歩行速度<0.8m/s、握力<26kg(男)、<18kg(女)
<Control、および、その定義>
・非サルコペニア
<主なアウトカム、および、その定義>
サルコペニアと血清MMP3の関連性
<交絡因子、および、その定義>
年齢、性別、eGFR、ステロイド量
<解析方法>
・患者データを連続変数はStudent-t検定、Mann-Whitney-U検定
カテゴリー変数はカイ2乗検定、Fisher正確検定で解析
・多変量解析はロジスティック回帰分析
・相関性はSpearmanの相関係数を使用
<結果>
【Table 1】
ベースライン時の患者背景
1)全体
・100人がエントリー(男性:22人 女性:78人)
・平均年齢68歳、平均罹病期間5.5年
・SteinbrockerステージⅠとⅡで全体の65%、クラス1と2で95%、疾患活動性は中程度
・MTX平均投与量:8.2mg/日、ステロイドは全体の26%で使用、平均投与量:4.1mg/日
・バイオ使用:30人(GLM:6人、TCZ:5人、IFX、ABT:4人、ETA、ADA:3人、CZP:2人)
・JAK使用:2人(TOF)
2)サルコペニア有病率
・有病者:28%(28人)(男性:31.8%(7人) 女性:26.9%(21人))
・サルコペニア群と非サルコペニア群の比較(単変量解析で差がでたもの)
CRP(p=0.045)、MMP3(p=0.018)
3)体組成
・身長以外はすべて非サルコペニア群の方が有意に高い
(体重、歩行速度、脂肪率、体脂肪量、筋肉量、推定骨量、体内水分量、基礎代謝率、SMI)
【Table 2】
サルコペニア有病患者における単変量・多変量解析
・サルコペニアと正の相関を示す因子
Steinbrockerステージ、CRP、MMP3
・サルコペニアと負の相関を示す因子
体重、BMI、体脂肪量、筋肉量、基礎代謝率、推定骨量
・ロジスティック回帰分析にてサルコペニアと独立した関連因子(年齢で調整)
BMI(オッズ比:0.304)、体脂肪量(オッズ比:1.323)、MMP3(オッズ比:1.018)
【Figure 1、Table3】 サルコぺニアとMMP3の関係性
・ROC曲線分析でMMP3のAUCを求めた
図(a)サルコペニア:0.653、(b)女性:0.672、(c)男性:0.686
・Table3の95%CI、カットオフを用いてオッズ比を計算
OR サルコペニア:3.1倍、女性:3.8倍、男性:有意差なし
【Table 4】
サルコペニアと関連する因子の先行研究と本研究の比較
<結果の解釈・メカニズム>
・疾患活動性とサルコぺニアは相関していない結果
→炎症性サイトカインは筋肉異化作用を有するが、bioやJAKで抑制されていた可能性がある
・血清MMP3が高値であると中~大関節の疾患の進行と炎症が反映される
→ADL低下、筋力低下へつながり、減少した筋肉量と基礎代謝率はサルコペニアを誘発する
<Limitation>
・RA患者のみであり、対照群が含んでいない
・ベースラインでの疾患活動性が比較的コントロール良好
・横断研究
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・本結果だけでは血清MMP3が高値=サルコペニアを有するということにはならない
・ステロイドの服用量によっては、血清MMP3値に大きく影響している可能性もあるため、ステロイドの有無で結果が異なる可能性も考えられる
・高齢でサルコペニアを有病している患者は血清MMP3を継続的に測定し、疾患活動性を改善させることでADL、QOLの改善につながる可能性があるが、治療介入前の疾患活動性のレベルが大きく影響する可能性もある
<自分で考えた交絡因子>
・他のcsDMARDsの使用、食事状況
<この論文の好ましい点>
・データ測定が統一されている
担当:櫻井 康亮