日本人関節リウマチ患者における徐放性トファシチニブと従来トファシチニブの非劣性試験【Journal Club 20200304】

Modified-versus immediate-release tofacitinib in Japanese rheumatoid arthritis patients: a randomized, phase III, non-inferiority study

2019 Jan 1;58(1):70-79.

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<サマリー>
徐放性トファシチニブは従来トファシチニブと同等の安全性を有し、RAの治療として疾患活動性を抑える1つの有効なオプションである

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P:日本人関節リウマチ患者
E:徐放性トファシチニブ
C:従来トファシチニブ
O:12週後のDAS28-4(CRP)

<セッティング>
・日本国内36施設のリウマチ科(昭和大学病院含む)

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
RCT 第三相二重盲検並行群間ランダム化非劣性試験   徐放性群:従来群=1:1

<Population、およびその定義>
・20歳以上、ACR1987分類で診断6か月以上経過
・圧痛関節6/66、腫脹関節6/68かつCRP0.7㎎/dlもしくはESR28mm/h
・ランダム化前6週間以上MTX6-16mg/wを服用

<主な要因、および、その定義>      
・徐放性トファシチニブ(11㎎)を1日1回+プラセボを1日2回

<Control、および、その定義>
・従来トファシチニブ(5㎎)を1日2回+プラセボを1日1回

<主なアウトカム、および、その定義>
・メインアウトカム:ベースラインから12週後のDAS28-4(CRP)の変化
・セカンダリアウトカム:12週後のDAS28-ESRの変化、ACR20、50、70の達成割合
DAS28-CRP/ESRにおける低疾患活動性の達成割合、CDAI、SDAI
HAQ-DIの変化、FACIT-F、EQ-5D、ACR/EULAR予備寛解基準

<交絡因子、および、その定義>
なし

<解析方法>
・非劣性マージンを0.6で設定(PMDAによる要求にて設定)
・多変量解析:線形混合効果モデル
・サンプルサイズ:90%のpowerで非劣性を示す→合計200人以上
・バイナリデータ:二項比率の差の正規近似を使用
・欠測対処:0週、4週、12週で測定
欠測:non-responder imputation
・セカンダリアウトカムは探索的

<結果>
・徐放性群104人、従来群105人に割付→2群間に差はなし          
 【Table 1】
・DAS-28CRPのCFB 徐放群:-2.43、従来群:-2.85 
→95%CIにおける2群間の差は0.43(95%CI 0.17、0.69 ; p<0.01) 
非劣性マージン(0.6)は満たさず                                   
【Fig.1 A/B】
・12週におけるDAS-28CRPの臨床的改善は両群とも認められた
≧0.6 徐放群:94.2%、従来群:88.5%  ≧1.2 徐放群:89.3%、従来群:84.6%
・CRPのベースラインからの変化も両群で認められた
 徐放群: -1.02㎎/dl、従来群: -1.15㎎/dl
・DAS-28ESRのCFB 徐放群:-2.50、従来群:-2.86(p<0.01)
・ACR達成割合:ACR20 徐放群:84.5%、従来群:79.8%
 ACR50 68.0%/68.3%  ACR70 31.1%/46.2%(p<0.05)
・HAQ-DIのCFB 徐放群:-0.44、従来群:-0.46 
→両群とも臨床的に有意な改善         

【Fig.2 A/B/C】
・DAS-28CRP/ESR、SDAI/CDAIにおける低疾患活動性、寛解達成率、予備寛解基準はすべてにおいて従来群の方が高かった                               

【Fig.3】
・安全性:AE、SAEの頻度は2群間で類似  最も多いAEは鼻咽頭炎  
 その他AEとして検査値異常、胃腸障害が多かったがSEAとしては認められなかった

                                                  【Table 2】
SAEとして重症感染症が5人(PCP、IP、細菌性肺炎)、帯状疱疹が2人、悪性腫瘍が2人(直腸がん、乳がん)

<メカニズム>
・徐放性製剤は1日1回の服用で患者のコンプライアンスを改善させ、病勢やQOLに影響を与える

<Limitation>
・非劣勢マージンを0.6に設定したこと
・サンプルサイズ計算が群間の真の差がゼロであるという仮説の基に計算されたこと
・サンプルサイズが小さいこと

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・12週でみた場合は非劣性を示せなかったが、アドヒアランスの向上や経済性など
患者側からみたらメリットとなる部分はありうる→他のJAK製剤(腎排泄型)との差別化が必要

<自分で考えた交絡因子>
・MTX以外の抗リウマチ薬の治療歴
 ・ステロイド量

<この論文の弱点>
・長期試験を実施しなかったこと
・徐放性製剤のメリットの1つであるコンプライアンスの面をみたければダブルダミー法は適さない

 

担当:櫻井康亮

 

 

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