1年以上臨床的に休止しているSLE患者における低用量プレドニゾン中止:無作為化臨床試験【Journal Club 20200520】

Withdrawal of low-dose prednisone in SLE patients with a clinically quiescent disease for more than 1 year: a randomised clinical trial

1年以上臨床的に休止しているSLE患者における低用量プレドニゾンの中止:無作為化臨床試験

Alexis Mathian,  Micheline Pha, Julien Haroche, Fleur Cohen-Aubart, Miguel Hié, Marc Pineton de Chambrun, Thi Huong Du Boutin, Makoto Miyara, Guy Gorochov, Hans Yssel, Patrick Cherin, Hervé Devilliers, Zahir Amoura

Sorbonne Université, Assistance Publique–Hôpitaux de Paris, Groupement Hospitalier Pitié–Salpêtrière, French National Referral Center for Systemic Lupus Erythematosus, Antiphospholipid Antibody Syndrome and Other Autoimmune Disorders, Service de Médecine Interne
Ann Rheum Dis 2019;0:1–8.

<サマリー>
臨床的にquiescent(休止している)な18歳以上のSLE患者を124人をPSL5mg継続群とPSL中止群に分けた単施設非プラセボ使用のRCT。52週時点での再発割合は中止群で有意に多かった(維持群 4/61(7%)、中止群 17/63(27%)  (RR 0.2(95%CI 0.1〜0.7)、p = 0.003)。

P:臨床的にquiescent(休止している)な18歳以上のSLE患者
E:PSL5mg継続
C:PSL中止
O:
    主要アウトカム:ランダム化と52週の間でのSELENA-SLEDAI flare index (SFI)を使用した再発患者の割合
 副次アウトカム:下記参照

<セッティング>
 期間:January 2014 to April 2018
 場所:the Department of Internal Medicine 2, French National Reference Center for SLE, Pitié-Salpêtrière Hospital, Paris, France

<研究デザインの型>
 RCT
 コンピューターで1:1に割付

<Population、およびその定義>
 組み入れ基準
  18歳以上、ACR1997分類基準を満たすSLE患者
  臨床的にquiescent(休止している):
   (1) SELENA-SLEDAI≤4
   (2) 血液系(白血球減少症、リンパ球減少症、またはクームス試験陽性)によるCスコアを除く全ての臓器におけるBILAG2004 D or E 
   (3) 医師全般評価(PGA:Physician’s Global Assessment)=0 かつ PSL5mg/日の治(PSL、抗マラリア薬 かつ/または 免疫抑制剤は組み入れ前の最低1年間は安定していることが条件)
 *除外基準:妊婦、妊娠を計画している女性、同意書不同意の者
 *長期の臨床的休止のSLEの定義:白血球減少症、SLE治療および血清学的活性(抗抗dsDNA抗体および/または低補体の存在に関係なく、疾患活動性の臨床徴候が5年連続ない患者

<主な要因、および、その定義>       
 プレドニゾン5 mg/日を52週間継続

<Control、および、その定義>
 研究開始日(day 0)にプレドニゾン内服を中止
 *ハイドロコルチゾン20mg/日を1ヶ月間内服(副腎不全の予防)
 *治療関連の副作用もしくは治療の変更が必要なSLE再発の場合を除いてHCQかつ/または免疫抑制剤などのSLE治療薬は変更しない。
 *臨床症状のない抗dsDNA抗体、もしくはC3の変化はSLE治療強化の根拠としなかった。

<主なアウトカム、および、その定義>
 主要アウトカム
  ランダム化と52週の間でのSELENA-SLEDAI flare index (SFI)を使用した再発を経験した患者の割合
 副次アウトカム:
  ・再発までの時間
  ・SFIでのmild/moderateの再発を経験した患者の割合
  ・BILAG指数を使用した再発を経験した患者の割合
  ・BILAG指数でsevere flareもしくはmoderateもしくはmildな再発を経験した患者の割合
  ・52週間での血液学的活動性指標(抗dsDNA抗体、C3値)の変化
  ・ランダム化と52週の間でのSystemic Lupus International Collaborating Clinics (SLICC) damage index (SDI)が増加した 患者の割合
 *介入を盲検化された独立委員会によって判断
 *ベースライン時、3、6、9、および12ヵ月に評価
 *再発を疑う症状が現れた場合はすぐに医師に連絡し、その後すぐに検査
 *介入中断者も最後までフォローされた

<交絡因子、および、その定義>
 なし

<解析方法>
 サンプルサイズ
  非活動性で長期5 mgのプレドニゾン内服SLE患者は、再発のリスクは3%と推定、再発の割合の割合が15%増加(18%の再発)は臨床的に有意と仮定、両側、typeⅠエラー5%、power80%→62例
 全てのアウトカムをITTの原則
 背景の比較
  ・カテゴリー:Fisherの正確性検定/カイ二乗検定
 ・連続:Mann-Whitney検定
 ・再発までの時間:カプラン・マイヤー曲線、ログランクテスト→Cox比例ハザードモデル
 全て両側、有意水準は5%
 ソフト:GraphPad Prism V.5.0 (GraphPad Software, San Diego, California, USA) および SAS V.9.4

<結果>
 ・参加者124人(維持群61人、中止群63人)
 ・中止/再開
   維持群:2人:個人的理由で中止
   中止群:4人:2人が個人的理由、2人は妊娠
 ・全患者フォローアップ完了
 ・ベースラインの特徴:維持群のMTX、中止群のMMFが有意に多い
 ・ベースラインでDORIS の定義‘remission on treatment’ 、Zenらの‘remission on corticosteroids’ の状態であった。
 ・維持群の24人 (39%) 中止群の32 (51%) 人は長期の臨床的休止のSLEであった。
 ・主要エンドポイント
   SFI:52週時点での再発を経験した患者の割合は中止群で有意に多かった(維持群4/61(7%)、中止群17/63(27%)(RR 0.2(95%CI 0.1〜0.7)、p = 0.003)。
 ・副次エンドポイント
  ・BILAG指数でsevere flareもしくはmoderateもしくはmildな再発を経験した患者の割合:中止群と比較し、維持群で中程度/重度のフレアの割合が有意に低い(1人:8人 RR 0.1(95%CI 0.1〜0.9)、p = 0.013)。
  ・SDI:中止群の合計3人の患者で、52週間の間にSDIの4つの項目が記録された。骨粗鬆症関連骨折2、抗マラリア薬による網膜毒性1、白内障1。維持群では、SDI記録なし(P=0.244)。
  ・52週間での血液学的活動性指標(抗dsDNA抗体、C3値)の変化:いずれの群でも52週間に有意に変化なし。
  ・有害事象:死亡、血管血栓症、悪性新生物なし。プレドニゾンの中止または入院を必要とする有害事象なし。 6人の患者(各グループに3人)が妊娠した。

<結果の解釈・メカニズム>
 ・プレドニゾロン5mgを中止すると維持するよりも再発の割合が多い。

<Limitation>
 ・プラセボ群のない非盲検試験であった(評価者はマスキングされていた)
 ・単施設の研究
 ・人種のデータの欠如:フランスは多民族国家であり、アフリカおよびアジアの系の患者の割合が多い可能性がある。
 ・5mgに中止が急すぎるため漸減した場合の再燃の予防効果を見られていない。
 ・中止群の再燃の症状の一部が副腎不全による症状であると誤診されている可能性がある。
 ・選択バイアス:臨床的寛解にも関わらず、医師が低用量ステロイドを維持していた患者であるため、カルテ重要な臓器障害を持っていか患者である可能性があり、外的妥当性を下げる可能性がある。
 ・52週(1年)までのフォローであり中止して1年以降に再燃する患者もいると考えられる。また、ステロイドの有害事象を見るには1年では短すぎる。Post hocの報告が欲しい。
 ・中止による患者の心理的な負担の改善(QOL)も見たい。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
 ・患者さんへの説明としてステロイドを中止した時の再燃の可能性がどの程度かを伝える情報源になる。
 ・PSL5mgをいきなり中止するという臨床行動は少なくとも私は行なっていない。著者らもlimitationとして述べているが、5mgを漸減する群との比較が必要ではないか。

<この論文の好ましい点>
 ・単施設で安定したSLE患者124人をエントリーできたこと

担当:柳井亮

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