Multidisciplinary care in patients with systemic lupus erythematosus: a randomized controlled trial in China
SLE患者における薬剤師による集学的ケア:ランダム化比較試験
Le Zhang, Shikai Geng, Liping Qian, Shuang Ye, Xiaodong Wang, Guohong Lu, Yang Ding, Ting Li
Department of Pharmacy, South Campus, Renji Hospital, School of Medicine, Shanghai Jiao Tong University, Shanghai, China
International Journal of Clinical Pharmacy 2019;41:1247-1255
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<サマリー>
薬剤師主導による患者中心の集学的ケアプログラムにより、SLEの疾患活動性、薬への満足度、健康の質が改善される可能性がある。
薬剤師が多職種チームで積極的な役割を果たし、SLE患者の疾患管理が改善することで、医療資源の抑制につながる可能性がある
P:SLE患者
E:薬剤師主導の集学的ケアの介入あり+通常診療
C:通常診療
O:疾患活動性
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<セッティング>
・上海 Renji Hospital
・2017.10.1から1年間で外来受診した患者
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・RCT(コンピュータによって無作為化)
<Population、およびその定義>
・ACR2012分類基準(1997の誤記?SLICC?)を満たし、薬物治療(ステロイド、免疫調整剤、免疫抑制剤、NSAIDs、Bio)を受けているSLE患者
・除外基準:字がよめない、重度の精神疾患、重度の身体制限、余命1年未満、1年以内の主治医変更
<主な要因、および、その定義>
・通常診療+集学的ケア(Dr/Ns/Ph)
→薬剤師による問診にて病歴、家族歴、社会歴、食生活、運動等患者情報を収集
→薬剤の服薬方法の冊子(Fig.1)をわたし、薬歴と薬剤の必要性を確認
・3週間~3か月に1回、面談もしくは電話での服薬指導(患者のニーズにあわせた服薬や合併症、ライフスタイルなどの教育)を実施
・必要に応じてステロイド量の調節を薬剤師主導でおこなうことを事前に医師に承諾(Fig.2)
<Control、および、その定義>
・薬剤師からの指導はなく通常診療(3~4か月毎)のみ、モニタリングは看護師中心
<主なアウトカム、および、その定義>
・Primaryアウトカム:疾患活動性(SLICC、SLEDAI-2K)、治療における情報の満足度(The Satisfaction with Information about Medicines Scale (SIMS)中国語版をもちいて提供された情報の満足度を5段階で評価、健康状態(EQ-5D-3L)
・Secondaryアウトカム:アドヒアランス(自己申告/CQR)、薬に対する信条(BQM)
<解析方法>
・カテゴリーデータは数値、%、連続データは平均値、標準偏差、中央値、四分位範囲で表記
・解析:カテゴリー変数-カイ2乗検定、連続変数‐ウィルコクソン順位和検定
<結果>
・208人が無作為にサンプリング、65人が除外となり143人が研究対象
・143人を介入群71人、対象群72人に割付
・1年間のフォローアップ後、解析対象となったのは介入群42人、対象群40人
・82人中74人が女性、平均年齢は介入群31.5±11.1歳、対象群30.3±11.8歳
・既婚者53人、無職44人 最終学歴は介入群で中等教育が最も多く(15人)、対象群は初等教育であった(16人)
・診断をうけて5年以上経過 介入群19人、対象群21人
・1つ以上の併存疾患をもった患者は介入群で17人、対象群で27人
・74人は副作用の経験なし
・12か月後のSLEDAI-2Kは介入群でより有意に低下(p=0.027)
・12か月後のSIMSは介入群では大幅に上昇(p<0.000)
・12か月後のEQ-5D-3Lは対象群は変化なく介入群は上昇した(p=0.006)
・SLICC、CQR、BMQは有意な改善は認めなかった
<結果の解釈・メカニズム>
・薬剤師の定期的な介入により服薬アドヒアランスが低下しなかった(向上した)
・薬剤師による医療サービスは付加価値を生むため、サービスを受ける側は満足度があがる
<Limitation>
・サンプル数がすくない
・一般的な中国人患者を代表とするものではない可能性がある
・初発の患者が含まれていないため、疾患活動性はある程度コントロールされていた可能性がある
・治療薬の副作用対策の薬剤の詳細が不明
・介入した薬剤師が単独なのか複数なのか、どの程度のレベルなのか、介入に費やした時間などの詳細が不明
・疾患活動性の評価が盲検化されていない可能性があるため、評価者の主観が入っている可能性がある
・アドヒアランスは自己申告のみであるため、服薬コンプライアンス遵守の点では研究結果と実際の現状で異なる可能性がある
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・日本人にて薬剤師主導のSLE研究の先行研究となりうる可能性があるがプロトコールは改善すべき点が多々ある
・日本は薬剤師の存在がある程度認識されているため、領域の専門性を活かした介入をしなければならない
・平均年齢が30代にも関わらず、約1割の患者が死に至ったってしまう中国とくらべ医療の質がよい日本では薬剤師に求められる役割は異なると考えられ、初発時や再燃時などSLE患者の状態によって求められる場面がことなる
・両群10%ずつの死亡症例があり、かなり重症病態での研究であった可能性がある。通常は死亡は多くない。
・薬剤アドヒアランスが変わらないのであれば、どのようなpasswayで疾患改善がもたらせれたのかが重要。日常生活や不安軽減などがあったか。
担当:櫻井康亮