Enhanced angiogenic function in response to fibroblasts from psoriatic arthritis synovium compared to rheumatoid arthritis
関節リウマチと乾癬性関節炎との線維芽細胞の血管新生の機能の違いは?
Arthritis Res Ther. 2019 Dec 21;21(1):297.
S Fromm , C C Cunningham, M R Dunne, D J Veale, U Fearon , S M Wade
Department of Molecular Rheumatology, Trinity Biomedical Sciences Institute, Trinity College Dublin, Dublin, Ireland
<目的>
血管新生は乾癬性関節炎(PsA)と関節リウマチ(RA)の病態の初期からおきる現象である。しかしながら、PsAとRAの血管新生における血管の形態には大きな違いがある。本研究の目的は、PsAとRAの関節微小環境が内皮細胞機能をどのように調整するかを評価することである。
<方法と結果>
Figure1
A: RAおよびPsA患者の関節鏡検査より滑膜組織生検を施行し、肉眼的な血管新生の違いを評価した。RAでは血管は直線的で分岐状、PsAでは細長く、曲がりくねってる。
B: 視覚的に血管パターンを評価し、Visual scoreをつけると、RAとPsAでは血管パターンに有意な違いがあった。
C, D: RA患者とPsA患者の活動性を合わせるために、滑膜炎と増生の程度を一致させた。
E: 滑膜生検により得られたSFC(primary synovial fiboblasts)の培養上清がHUVECの血管新生に対する機能にどのような影響を与えるかを調べた。
F: トランスクリプトーム解析を行い、HUVECをコントロール培地、RA SFC-CM、PsA SFC-CMで培養し、HUVECによる血管新生促進因子の遺伝子発現を確認した。PsAでは、RA、コントロールと比べて、血管新生促進因子の遺伝子発現を認めた。
G: 主成分分析では、PsA SFC-CMとRA SFC-CMに対するHUVECの分子応答には明確な違いがあった。
H, I: Matrigel tube formation assayにて、RA SFC、PsA SFCによるHUVECの管腔形成への影響を検討した。PsA SFC-CM、RA SFC-CM、コントロールの順にそれぞれ有意差をもって、HUVECの管腔形成は増加した。
Figure2
A, B: HUVEC wound repair assayにて、RA SFC、PsA SFCによるHUVECの遊走への影響を検討した。PsA SFC-CMは、RA SFC-CMとコントロールと比べて、有意差をもって、HUVECの遊走を増加させた。
C: Flow cytometric analysisにて、PsA SFC-CM、RA SFC-CMで培養したHUVECの表面マーカーの発現を検討した。PsA SFC-CMは、RA SFC-CMとコントロールと比べて、VEGFA、PFKFB3、ICAM、MMP3のHUVECにおけるmRNAの発現を増加させた。
Figure3
A, B: Flow cytometric analysisにて、PsA SFC-CM、RA SFC-CMで培養したHUVECの接着分子の発現を検討した。PsA SFC-CMは、RA SFC-CMとコントロールと比べて、VCAM、ICAM、E-selectinのHUVECの発現を増加させた。
C, D: PBMC adhesion assayにて、PsA SFC-CM、RA SFC-CMで培養したHUVECへのPBMCの接着を検討する。PsA SFC-CMは、RA SFC-CMとコントロールと比べて、HUVECを介して、PBMCの接着を増加させた。
Figure4
ELISAにてPsA SFC-CM、RA SFC-CMの血管新生メディエーターの濃度を比較した。PsA SFC-CMのVEGFA、TSLP、Flt-1、Tie-2濃度は、RA SFC-CMと比べて上昇していた。
<結論>
本研究は、PsAのSFCを介した血管新生のメカニズムを示した最初の研究である。PsA SFCにおける血管新生への影響はRA SFCと比べ強力である。PsAとRAで、何故このような差が生じるのかはわかっていない。今後より上流のメカニズムを解明する必要がある。
担当:猪狩 雄蔵