Angiogenic and Arthritogenic Properties of the Soluble Form of CD13
J Immunol. 2019 Jul 15;203(2):360-369
Abstract:
CD13/アミノペプチダーゼNは、炎症を起こした滑膜組織の線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)と単球(MN)に発現している。
この研究では、血管新生、単球の遊走、シグナル伝達分子のリン酸化、関節炎の誘導における可溶性CD13(sCD13)の役割を調べた。
◇Key points
可溶性CD13はin vitroおよびin vivoにおいて血管新生促進因子である。
可溶性CD13はマウスに急性炎症性関節炎を誘発し、Gタンパク質共役受容体を介して単球の輸送を誘発する。
可溶性CD13はサイトカイン分泌とシグナル伝達分子のリン酸化を増加させる。
Fig1
A: HDMEC chemotaxis
ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)の走化性を様々な濃度の可溶性CD13(sCD13)を用いて調べた。
sCD13は用量依存的にHDMECの走化性を促進した。
B,C: Matrigel HDMEC tube formation assay
sCD13はcontrolと比較し、管腔形成を促進した。
D,E: Matrigel HDMEC tube formation assay シグナル伝達阻害
SP(JnK), PDTC(NFκB), PD(Erk1/2), PT(GPCR)阻害剤は、sCD13による管腔形成を抑制した。SB(P38)阻害は、sCD13による管腔形成を抑制しなかった。
F,G: Matrigel plug angiogenesis assay in vivo
WT C57BL/6マウスにmatrigelを注射し、7日後に回収した。
F: Hb濃度はcontrolと比較し、優位に高かった。
G: Controlは白色であったが、黄色味を帯びた赤色であった。
→sCD13はHDMECの走化性と管腔形成を促進する。
sCD13はJnk, NFκB, Erk1/2, GPCRはsCD13を介した管腔形成に関与する。
sCD13はin vivoでMatrigel plug assayにおける血管新生に寄与する。
Fig2
A-C: MN chemotaxis
A: sCD13は濃度依存性に単球(MN)の遊走能を増加させた。
B: シグナル伝達阻害剤のSP(Jnk), PDTC(NFκB), PP2(Src)はsCD13により誘発されるMNの遊走能を抑制した。 シグナル伝達阻害剤のSB(p38)とPD(Erk1/2)はsCD13により誘発されるMNの遊走能を抑制しなかった。
C: シグナル伝達阻害剤のPT(GPCR)はsCD13により誘発されるMNの遊走能を抑制した。
D,E: U937 chemotaxis
D: シグナル伝達阻害剤のSP(Jnk), PDTC(NFκB), PP2(Src), PD(Erk1/2)はsCD13により誘発されるU937の遊走能を抑制した。 シグナル伝達阻害剤のSB(p38)はsCD13により誘発されるU937の遊走能を抑制しなかった。
E: シグナル伝達阻害剤のPT(GPCR)はsCD13により誘発されるU937の遊走能を抑制した。
F: cAMP ELISA
MNにsCD13を追加し、様々な時間で、cyclic AMPの濃度を測定すると、20分後にcAMPが約50%増加した。
→Src, Jnk, NFκB, Erk1/2, GPCRはsCD13を介したMN/U937細胞の遊走に関与する。
GPCRはCD13によるシグナル伝達経路に重要な枠割を果たす。
Fig3
A,B: MN chemotaxis
A: mutant CD13→CD13酵素不活性
WT CD13→CD13酵素活性あり
mutant CD13とWT CD13はそれぞれMNの遊走能を増加させた。
B:CD13を枯渇させたRA SFにmutant CD13とWT CD13を追加すると、MNの走化性が回復した。
CD13はCD13の酵素活性とは独立した方法でRAにおけるMNの遊走に関与する。
C: MN western blotting
CD13(sCD13, WT CD13, mutan CD13)はMNのシグナル伝達分子(Erk1/2, Src)のリン酸化を増加させた。
CD13は酵素活性と独立してシグナル伝達に効果を示す。D-F: RA FLS western blotting
D: sCD13はRA FLSのErk1/2, Src, NFκBのリン酸化を促進した。
RA FLSにシグナル伝達阻害剤(PP2, SP, SD, SB)を添加し、sCD13で刺激した。
Jnk阻害(SP), Erk1/2阻害(PD)はErk1/2とNFκBのリン酸化を抑制した。
JnkはRA FLSのシグナル伝達を介した上流にある。
E: NFκB阻害剤(PDTC)はsCD13によるNFκBのリン酸化を抑制した。
F: GPCR阻害剤(PT)はRAFLSにおけるErk1/2, Srcのリン酸化を抑制した。
G: siRNA knockdown
Erk1/2に対するsiRNAをRA FLSにトランスフェクションすると、Erk1/2とNFκBのリン酸化が抑制された。
H: 正常なヒトMN western blotting
sCD13で刺激された正常なヒトMNにおけるErk1/2のリン酸化はSrc(PP2), Jnk(SP), Erk1/2(PD)の阻害によって抑制されたが、NFκB(PDTC), p38(SB)の阻害によっては、抑制されなかった。
同様にNFκBのリン酸化は、Src(PP2), Jnk(SP), Erk1/2(PD)の阻害によって抑制されたが、p38(SB)の阻害によっては抑制されなかった。
→sCD13はその酵素活性とは無関係に、RA SFによって誘導されるMNの遊走とシグナル伝達分子のリン酸化を促進する。
sCD13はRA FLSとMNのErk1/2, Src, NFκBのリン酸化を誘発する。
Fig4
A-D: RA FLS quantitative PCR and ELISA
RA FLSをsCD13で刺激するとMCP-1/CCL2とIL-6のmRNAおよびタンパク質の発現が亢進した。
※IL-1βとTNF-αは有意な差はなかった。
→sCD13はRA FLSの炎症性サイトカイン発現を増加させる。
Fig5
A-C: RA ST ELISA
RA患者の滑膜組織を抗CD13抗体であるWM15とID7、Dexamethasoneを加え、サイトカイン分泌を測定した。
WT15はMCP1, IL6, IL8の発現を抑制し、ID7はIL8の発現を抑制した。
Fig6
A-B: マウスにsCD13を注射すると、膝が有意に腫脹した。
C: sCD13注射後の膝HE染色
滑膜の炎症細胞増加を認めた。
D: sCD13を注射するとMNマーカーであるF4/80染色の著名な増加を認めた。
E-G: RA ST ELISA
MCP1, IL6, IL1βはsCD13を注射したマウスで優位に高かった。
→sCD13は滑膜組織内のMCP1, IL6, IL1βを増加させ、MNの侵入を増加させることによって、炎症性関節炎に寄与した。
◇Key points
可溶性CD13はin vitroおよびin vivoにおいて血管新生促進因子である。
可溶性CD13はマウスに急性炎症性関節炎を誘発し、Gタンパク質共役受容体を介して単球の輸送を誘発する。
可溶性CD13はサイトカイン分泌とシグナル伝達分子のリン酸化を増加させる。
◇この研究の優れている点
これまでの研究では、CD13の機能を調べるために、CD13に対する阻害剤を用いていたが、この研究では、sCD13と抗CD13抗体を用い、RA FLSとMNの機能解析を行った点。
担当:猪狩 雄蔵