ANCA関連血管炎の寛解維持目的としたリツキシマブ投与スケジュール【Journal Club 20210331】

Comparison of individually tailored versus fixedschedule rituximab regimen to maintain ANCAassociated vasculitis remission: results of a multicentre, randomised controlled, phase III trial(MAINRITSAN2)

ANCA関連血管炎の寛解維持を目的としたリツキシマブの個別調整型と固定スケジュール型の比較、多施設共同、無作為化対照、第III相試験

Charles P. et al. Ann Rheum Dis. 2018 Aug;77(8):1143-1149.

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<サマリー>ANCA関連血管炎の寛解維持を目的としたリツキシマブの再投与について投与スケジュールを比較した多施設共同無作為化対照第III相試験。再発率は、個別に調整されたリツキシマブレジメンと固定スケジュールのリツキシマブレジメンの間で有意な差はなく個別に調整した群では、リツキシマブの投与回数が少なかった。
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P:GPAまたはMPAと新たに診断されたか、または再発した患者
I:RTX個別調整群
C:RTX固定スケジュール群
O:28カ月目の再発数

<セッティング>
2012年11月から2013年11月にかけて59施設で登録

<研究デザインの型>
RCT
1対1に無作為に中央コンピュータで割り付け
層別割り付け:新たにAAVと診断されたか再発したか

<masking>
独立した裁定委員会が主要評価項目を評価。3名の血管炎の専門家で構成され、治療群と循環CD19+ B細胞数については盲検化された。治療の割り当ては、患者と臨床医は知っていた。

<Population、およびその定義>
18歳以上、Chapel Hill Consensusで定義されたGPAまたはMPAと新たに診断されたか、または再発した患者。

<主な要因、および、その定義> 
RTX個別調整群
無作為化時に500mgのリツキシマブを投与され、その後3カ月ごとにANCAとCD19+ Bリンパ球が評価された。ANCAが前回のコントロールと変化があった場合(陰性だったものが再び陽性化した場合、間接免疫蛍光法≧2-dilution-titreの増加、および/またはELISAのPR3またはMPOの単位が少なくとも2倍以上、またはCD19+ B細胞数が0/mm3を超えた場合に500mg再投与。最後リツキシマブ投与は18ヶ月目まで。

<Control、および、その定義>
RTX固定スケジュール群(無作為化後の0日目と14日目に500mgのリツキシマブを固定で投与し、その後、初回投与から6カ月、12カ月、18カ月後に投与)
*リツキシマブ投与前の前投薬は、メチルプレドニゾロン(100mg)、デクスクロルフェニラミン(5mg)、アセトアミノフェン(1,000mg)の静脈内投与
*ほとんどの患者は無作為化時点でも低用量プレドニゾンを服用していたが、各施設の治験責任医師の判断により、漸減して中止するか、5mg/日に維持するか選択可能。
*すべての患者が肺炎予防薬(スルファメトキサゾール(400mg)-トリメトプリム(80mg)を毎日投与、またはサルファ剤にアレルギーのある患者にはペンタミジンのエアロゾルを投与)あり。

<主なアウトカム、および、その定義>
・主要評価項目:
28ヵ月時点での再発回数(AAV症状の再出現または悪化(BVAS>0))

・副次評価項目:
大再発(命を脅かす、または少なくとも1つの主要臓器を侵す)の回数、小再発の回数
ANCA値上昇およびCD19+ B細胞数
グルココルチコイドの投与期間および累積投与量
VDI(Vasculitis Damage Index)による各群の損傷の重症度と数
死亡
すべてのAE(治療に関連するか否かにかかわらず)

<交絡因子、および、その定義>
なし

<解析方法>
・サンプルサイズ:コントロールの再発率35%、両群のLost-to-Follow-up10%、再発の20%の絶対群間差を検出、α5%、β80%
・ITT
・ポアソン分布の一般化推定方程式モデル、無作為化の際に考慮したAAVのタイプ(新規診断または再発)を調整、中心内相関(within-centre correlation)(交換可能な相関構造)を仮定、28カ月目における各群の患者ごとの再発数の平均値を比較
・最初の再発までの期間:Kaplan-Meier曲線、AAVタイプで調整、中心内相関(within-centre correlation)を仮定、Cox回帰モデルを用いてグループ間で比較
・解析ソフト:R

<結果>
Figure1
2012年11月から2013年11月にかけて59施設、162名が無作為化、117名(72.2%)がGPA、45名(28.8%)がMPA。それぞれ104名(64.2%)と58名(35.8%)が、最初の再燃または少なくとも1回の再燃後に寛解。組み入れ前の導入治療:シクロホスファミド100名(61.7%)、リツキシマブ61名(37.6%)、メトトレキサート1名(0.6%)

【患者背景(Table1)】
81名(50%)の患者の特徴は同等

・主要アウトカム
28ヵ月時点での再発の回数:21人の患者が22回の再発。
個別調整群の13名:14/81(17.3%)、固定スケジュール群の8名:8/81(9.9%)(p=0.22)

・副次アウトカム

【無再発生存率(Figure2)】
個別調整群と固定スケジュール群を比較すると、無再発生存率は83.8%(95%CI 76.1~92.3%)対86.4%(95%CI 79.2~94.2)(p=0.58)
主要な再発は6名(7.4%)対3名(3.7%)に発生した(p=0.23)。個別調整群で発生した6件の重大な再発は、腎炎2件、末梢神経障害2件、肺結節1件、眼窩腫を伴う多発性髄膜炎1件。これらの再発には、2人の患者にはシクロホスファミドが、4人の患者にはリツキシマブが投与された。固定スケジュール群の3つの重大な再発は腎炎、肺浸潤を伴う心筋炎、声門下狭窄症であり、これらの再発にはリツキシマブが投与された。

【RTX投与】
・個別調整群:248回
[投与回数] 中央値(IQR)3(2-4)回
[回数ごとの人数] 1回4人(4.9%)、2回23人(28.4%)、3回30人(37%)、4回15人(18.5%)、5回6人(7.4%)、6回2人(2.5%)、7回1人(1.2%)
[投与間隔]中央値で6.1(IQR:3.1~9.2)カ月
[再投与の理由]
ANCAが陽性化、力価が上昇:22回(13.1%)
循環B細胞が再出現:85回(50.6%)
またはその両方:61回(36.3%)
・固定スケジュール群:381回、中央値(IQR)5(5-5)回

【安全性(table3)】
個別調整群の69名(85.2%)固定スケジュール群74名(91%)が少なくとも1つのAEを報告(p=0.33)
重篤なAE(SAE)を少なくとも1つ経験したのはそれぞれ26名(32.1%)対31名(38.3%)で(p=0.51)、SAEは各群37名対53名
感染症は各群で18件発生し、個別調整投与を受けた患者では9件(11.1%)、固定スケジュール群では16件(19.8%)が少なくとも1件の感染症を経験。好中球減少は、個別調整群でのみ発生。

【死亡】
試験期間中に死亡した患者は4名
個別調整投与を受けた患者1名(リツキシマブ輸液とは無関係の気管支痙攣)固定スケジュール群3名(AAVやリツキシマブとは無関係の院内肺炎、癌性髄膜炎、心原性ショック)

【グルココルチコイドの投与量および投与開始からの期間】
両群間で有意差なし。

【ANCA値、CD19の値】
161人の患者でANCAと循環CD19+ B細胞の測定値とその変化のデータを得た(1人の再発患者のデータが欠損)。
・5つのANCA-evolutionプロファイル:いずれも再発とは関連なし
・28ヵ月目の時点でのANCA陽性:
個別調整群:46/76(60.5%)
固定スケジュール群:26/71(36.6%)(p=0.06)
・再発した10人(4%)の患者では循環B細胞が検出されず、4人(18.2%)はANCA細胞陰性かつB細胞陰性。

<結果の解釈・メカニズム>
再発率は、個別調整群と固定スケジュール群の間で有意な差はなく個別調整群では、リツキシマブの投与回数が少なかった。
ANCAが陰性、CD19が陰性でも再燃する症例がいる。
血清中リツキシマブによりCD20の検出が妨害されるため、末梢血CD20陽性B細胞の代わりにCD19を発現している末梢血B細胞を測定。

<Limitation>
・オープンラベル
・ANCAとCD19+ B細胞数測定が同じ研究室で行われていない。測定法間のばらつきは評価されていない。
・患者の3分の2は最初の再燃後に組み入れられたため、再燃している患者のサブグループに完全には一般化できない。
・B細胞の再増殖が疾患の活動部位でのみ行われる可能性があるため、循環するB細胞がなくても再発は起こりうる。本研究では再発の2%を占めた。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・RTX個別調整群のレジメンを参考に6ヶ月ごとにこだわらない投与方法を行う

<この論文の好ましい点>
・臨床に即したRCTである。
・ANCAとCD19を組み合わせたこと

<この論文にて理解できなかった点>
・中心内相関(within-centre correlation)(交換可能な相関構造)

担当:柳井亮

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