The tumour-associated glycoprotein podoplanin is expressed in fibroblast-like synoviocytes of the hyperplastic synovial lining layer in rheumatoid arthritis
腫瘍関連糖タンパクであるポドプラニンは関節リウマチの過形成した滑膜組織の線維芽細胞様滑膜細胞で発現する
著者名 Ekwall AK, et al. Department of Rheumatology and Inflammation Research, Institute of Medicine, Sahlgrenska Academy, Göteborg University, Sweden.
Arthritis Res Ther. 2011 Mar 7;13(2):R40.
Balckground:
関節リウマチ(RA)の活性化したFLS(線維芽細胞様滑膜細胞)は腫瘍細胞と多くの特徴を共有し、滑膜組織の形質転換と関節破壊に関与する重要なメディエーターである。滑膜細胞はCadherin-11およびE-cadherinを含む接着因子で相互接続している。高炎症性滑膜組織ではFLSは筋線維芽細胞に特徴的な遺伝子発現プロファイルを示し、滑膜内層の細胞はα-smooth muscle action(α-sma)を発現することが知られており、上皮間葉転換(TGF-βなどの増殖因子刺激に応じて上皮細胞が上皮マーカーであるE-cadherinの発現を失い、運動能の高い間葉系細胞の性質を獲得する現象)に似たプロセスを経ることが示唆されている。膜貫通型糖タンパクであるポドプラニン(PDPN)はヒトの癌細胞の遊走や浸潤に関与していることが知られている。RA患者の滑膜におけるPDPN発現を評価した。
Methods:
18人のRA患者と9人のOA患者から滑膜を採取しPDPN発現を免疫組織化学とWestern blotで発現を評価。培養FLSにおけるPDPN発現をフローサイトメトリーで評価。
Cells in passages 3 through 6 were used.
- Immunohistochemistry: PDPN, Cadherin-11, CD90
- Immunofluorescence using a confocal microscope: Cadherin-11, MMP9, E-cadherin, α-sma
- Western blot: PDPN
- Flow cytometry: RA(n=6) OA(n=5) CD90, CD68, CD29, PDPN, Cadherin-11, α-sma
- Stimulation experiments: 10ng/mL TNFα, 1ng/mL IL-1β, 1ng/mL TGF-β1, after 12, 24 and 48hr, flow cytometry w/PDPN. Ex was repeated 4 times w/ different primary cells cultures.
- Statistical analysis: Mann-Whitney nonparametric test
Results:
Table 1. Characteristics of Patients 長期罹患し治療抵抗性で関節破壊が進行した患者
Fig.1: PDPN is expressed in human synovial tissue in RA.
(I) negative control, (J) positive control: Lymph vessles
(A), (B) PDPNは滑膜表層で高発現していた。PDPNは細胞表面全体を覆い、表層に沿って全体に連続していた。
(C), (D) PDPNの発現は強い過形成と滑膜構造の破壊を伴う領域で最も顕著であり、内層の隣接する間質細胞にも発現を認めた。
(E) OA滑膜では表層の単一の陽性細胞または限られた領域に時折陽性細胞があったが、(F) 全体ではほぼ染色はされなかった。
(K) PDPN発現スコアはRA 2.61(SEM0.18) > OA 0.33(SEM0.17)
(L-N)二重蛍光染色 OAよりRA滑膜、特に過形成された滑膜表層でPDPN(green)とCadherin-11(red)の発現が増強していた。
Fig.2: Western blot PDPN (45kDa)
Positive control: recombinant PDPN (13.4kDa)
Negative control human MRC-5 lung fibroblast
Fig.3 PDPN is expressed in FLS in areas of synovial transformation.
(B) 線維芽細胞マーカーのCD90は滑膜内層の毛細血管周囲にシート構造を形成する間質細胞に発現。滑膜表層にはPDPN(A)とは対照的にCD90は陰性であった。
(C) (D) PDPNとCadherin-11は滑膜表層に連続性に発現。
<共焦点顕微鏡>
(E) 二重免疫蛍光でPDPN(green)とCadherin-11(red)は滑膜表層の細胞に共発現を認めた。
(F) PDPNとマクロファージマーカーであるCD68の二重染色では明らかな共局在は認めなかった。
(I) 過形成領域のPDPN+細胞の細胞質にα-sma (red)が発現。さらに血管壁や内側のいくつかの分散細胞にも発現。
(G)(H) E-cadherinは滑膜表層のPDPN陽性細胞での発現は低かった。
(J) 滑膜内層のリンパ構造と血管でMMP9は高発現し、PDPN陽性細胞でもMMP9の共発現を認めた。
Fig.4 PDPN is expressed in cultured primary FLS and the expression is increased by pro-inflammatory cytokines.
Pssage 3でHomogenousとなった培養 RA-FLS, OA-FLSを蛍光染色し共焦点顕微鏡で観察
(A) Stress fibers (green)が発現する典型的FLSの約50%にPDPN(red)が発現し、細胞表面の付着領域と小さな膜突起で多く発現していた。
(B) 拡大像
(C) FACS
PDPN RA FLS 64±6% > OA-FLS 52±24%
CD90 RA FLS 99±6% OA-FLS 95±0.7%
(D) Cadherin-11の発現はOA-FLSで低く、RA-FLSでわずかに増加していた。
(E) RA FLSは樹状突起をもつ細胞はPDPNを100%発現していた。
(F) 培養線維芽細胞はα-smaの発現が増強していく報告がある。FLSでもOA,RAともにP6までにα-smaを100%発現するのを確認した。そのうち約60%はPDPN+α-sma+細胞であった(RA58.2%, OA 61.7%)
(G) 刺激によるPDPN発現
OA-FLSをTNFαとIL-1β刺激すると低発現(30%)だったものが48時間後には72%まで増加した。
TGF-β1は48時間後で中程度の増強効果(+1.7倍)を認めた。
RA-FLSをTNFαとIL-1β刺激すると50%の発現が12時間後には90%まで早期に増強した。
Discussion
PDPNはOA滑膜組織では発現乏しく、RAの滑膜組織で高発現。特に炎症兆候(WBC浸潤やリンパ構造)と滑膜形質転換(過形成、MMP9発現、Cadherin11, α-smaの発現増強)のある滑膜において高発現。PDPN発現する滑膜表層の細胞はCadherin-11を発現したがCD68は発現しないのでFLSである。
滑膜の過形成している形質転換領域においてFLSのPDPNとα-smaは共発現し、PDPNを発現する滑膜表層のFLSではE-cadherinの発現がた。PDPNの発現が上皮間葉転換に関与し、活性化FLSの移動能の増加に関与してる可能性がある。
RA関節液で高濃度に認める炎症性サイトカインと成長因子が培養FLSにおけるPDPNの発現を増加させたことは関節リウマチ患者の滑膜においてPDPNが高発現しFLSの形質転換に関与していることを示唆した。
担当:若林 邦伸