ループス腎炎の予後指標としての尿蛋白選択性

Proteinuria selectivity index as a prognostic biomarker in lupus nephritis

ループス腎炎の予後指標としての尿蛋白選択性

Lupus (2016) 0, 1–5

著者

T Hasegawa1*, K Suzuki 1, Y Kaneko 1, T Takeuchi 1

1: Department of Internal Medicine, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan

 

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<サマリー>

Slectivity Indexはネフローゼ症候群において免疫抑制療法の効果を予測する一つのマーカーとなる。ループス腎炎においてSelectivity index が免疫抑制療法の治療反応性や予後の指標となるのかを検索した。

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P:腎生検時にSelectivity Indexが測定できたSLE患者において 

E:Selectivity Indexが低値であった患者は 

C:Selectivity Indexが高値であった患者に比して

O:免疫抑制療法の反応性が良好である 

 

<セッティング> 

2008年1月から2015年8月までに慶應義塾大学リウマチ・膠原病内科にループス腎炎として受診した患者

 

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>

単一施設の後ろ向きコホート研究

 

<Population、およびその定義>

SLE患者に関してはAmerican College of Rheumatologyの多発性筋炎/皮膚筋炎診断基準を用いた。

活動性のあるループス腎炎に関しては腎生検においてISN/RPS ループス腎炎組織分類においてclass III, III/IV, IV, IV/V or Vに属するものとした。

腎生検の際にSelectivity Indexを測定できた患者

⇒44名が対象者となった

<主なアウトカム、および、その定義>

Selectivity IndexについてはROC曲線を用いて0.167を境としてそれより低値であるものを高選択性、高値であるものを低選択性としている。

⇒高選択のグループには24名、低選択のグループには20名が該当した。

ベースラインにおける臨床像、臨床検査の結果、治療内容において有意差を持った群間差はみられなかったが、腎生検における慢性変化のみ低選択グループにより多くみられた。(95% in the high SI group vs. 46% in the low SI group,P>0002)

 

[アウトカム]

最低12週間のフォローアップを行い、そのなかで1-2か月おきに血液検査及び尿検査を施行した。初回の免疫抑制薬の導入から最終の受診あるいはループス腎炎の再燃、死亡までの期間でのフォローを行った。

・Primary endpoint

①全奏効率…CR(尿蛋白0.5g/日未満、eGFR改善、尿沈渣がみられないこと)またはPR(尿蛋白の50%以上の改善、尿蛋白2.0g/日未満、eGFR改善、尿中赤血球の減少)

・Secondary endpoint

②eGFRの実数変化及び変化率

③末期腎不全への進展(eGFR<15 血液透析導入)

<解析方法>

二値変数に関してはχ二乗検定あるいはフィッシャーの正確確率検定を施行、連続変数に関してはStudent’s t検定、 Wilcoxon順位和検定を用いた。

全奏効率に関しては経時的な奏効率につき精査するため、log-rank検定を施行、Kaplan–Meier曲線を作図した。

 

<結果>

・全奏効率は高選択性の群の方が、低選択性の群に比して良好であった(88% vs.50% , P=0.007)(Table2)

・eGFRの変化に関しては2群間で差異は見られなかった。(2.9% vs.-9.0% , P=0.233)(Table2)

・末期腎不全に至った割合は低選択性の群の方が高選択性の群に比して優位に高かった。(0% vs.15% , P=0.049(Table2))

 

<結果の解釈・メカニズム>

・蛋白尿について低選択性であると、糸球体毛細血管壁の損傷が高度であることが示唆され、腎全体の一部しか採取が出来ない腎生検に比してより腎機能を反映している可能性がある。

・SLEに関しても腎予後に影響を与える因子として腎硬化や線維性半月体といった慢性病変があげられる。慢性病変の結果として高分子蛋白の漏出がおこり尿蛋白選択性が低くなることに関しては微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、IgA腎症などでも一般的に言われている。

 

<Limitation>

・単一施設での研究でありサンプルサイズが小さい。またフォローアップ期間も短い。

・初発、再燃両者あり、また他のスタディと比較して年齢の中央値が高く一般集団を反映していない可能性がある。

・トランスフェリンやIgGを測定していない症例が散見される

・初診時のトランスフェリン値の調整が必要か

・腎に影響を与える内服薬に関しての交絡調整が必要かもしれない

 

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>

・SLE患者で腎生検がハイリスクとなるような患者(血小板減少症がある、高齢である、すでに腎萎縮が進行している、腹水がある、妊娠をしている)に対する治療反応性の予想に役立てるのではないか

・Selectivity Indexに応じた治療の選択ができるのではないか

→・チャージバリアの傷害(ポドサイト障害による陰性荷電の喪失に起因する)をタクロリムスが改善させるといわれている(ネフリン・ポドシンといった糸球体スリット膜蛋白の構成成分を増加させることが出来る)。ループス腎炎でもポドサイト変異が尿蛋白の一員といわれており、ポドサイト形態に応じた治療選択ができるのではないか。(X.-M. Qi et.al. Inflamm. Res. (2016) 65:103–114)

・近年従来のSIにかわりSIPF(アルブミンとIgGのクリアランス比)の有用性について検討がなされている。

(担当:河森 一毅)

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