不活化SARS-CoV-2ワクチン接種を受けた関節リウマチ患者における2週間のメトトレキサート中止:無作為化臨床試験

論文名Two-week methotrexate discontinuation in patients with rheumatoid arthritis vaccinated with inactivated SARS-CoV-2 vaccine: a randomized clinical trial

 不活化SARS-CoV-2ワクチン接種を受けた関節リウマチ患者における2週間のメトトレキサート中止:無作為化臨床試験

著者 Carlo Scognamiglio Renner Araujo  Rheumatology Division, Universidade de Sao Paulo Faculdade de Medicina, Brazil

Araujo CSR, et al. Ann Rheum Dis 2022;0:1–9. doi:10.1136/annrheumdis-2021-221916

 

P:不活化SARS-CoV-2ワクチン(シノバック製)接種を受けた関節リウマチ患者

E:MTXを2週間中止

C:MTXを継続 

O:有効性と安全性とRAの疾患活動性

 

結論。MTX中止にてIgGセロコンバージョンと中和抗体陽性率は上昇するが、RAの再燃率も上昇する。

 

<セッティング>

・ブラジル サンパウロのリウマチ専門施設1か所

 

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>

・RCT、2重盲検

・CDAI<10の患者のみ登録ステーションに移動して無作為化。1:1割付。

患者には自分がどの群に属するかは秘密にするよう厳重指示。(Supple Fig 1)

・安全性監視と服薬アドヒアランスのための患者電話追跡担当者の2名のみ非盲検

 

<Population、およびその定義>

・成人RA患者(ACR/EULAR分類基準を満たす)

・CDAI≦10

・PSL≦7.5㎎

・MTXまたはcsDMARD/bDMARD併用中

・4週間は安定した投与量の治療を施行していること

・使用ワクチン:水酸化アルミニウムアジュバントを含む-プロピオラクトン不活化SARS-CoV- 2の0.5mL中

3μgからなるシノバック-コロナバックワクチン(バッチ#20200412;Sinovac Life Sciences)

 

<主な要因、および、その定義>

・ワクチン接種後MTXを2週間中止

 

<Control、および、その定義>

・ワクチン接種後もMTXを継続

 

<主なアウトカム、および、その定義>

・アウトカム:D0(ワクチン初回投与)、D28(ワクチン2回目投与)、

D69(経過観察期間)に評価

・抗SARS-Cov-2 S1/S2 IgG セロコンバージョン(SC)と中和抗体(NAb)の陽性率

・副次評価項目:平均力価(GMT)と再燃率

・RAの疾患活動性:CDAIとSDAI

 

・除外基準。ベースラインでIgG/Nabが陽性。D28でCDAI>10。

MTXを2回休薬しなかった例、リツキシマブ使用例

 

<交絡因子、および、その定義>

・交絡はRCTのため、ほぼない。

 

<解析方法>

・サンプルサイズ計算。2009年のインフルエンザワクチン接種のデータを使用。SCはMTX継続群で46%、MTX中止群は20%の増加を見込んで66%。αエラー5%、80%の検出力で最小サンプル数は各群96名。

・解析方法。Fisherの正確検定、t検定、Mann-Whitney検定、一次自己回帰相関行列を仮定した同一結合関数による一般化推定方程式、ボンフェロニーの多重比較、など各種技法を駆使。

・使用ソフト。SPSS V20.0

 

<結果>

・247人がスクリーニング。109人が除外。138人が2群に分けられた。

・MTX中止群は47人(最終的に37人)、MTX継続群は55人で解析。(Figure 1)

・患者背景に大差はない(Table 1)

・MTX中止群 vs MTX継続群 (Figure 2)(Table 2, Figure 3も同様)

 IgG SC: 21.8% vs 3.6%, Nab: 23.4%vs 7.3% (D28) (p<0.05)

 IgG SC: 78.4% vs 54.5%, Nab: 62.2%vs 49.1% (D69) (p<0.05)

・CDAI、SDAIには両群で差はない(Figure 4)

 D69では、CDAI>10の患者の割合がMTX中止群で高い (p=0.024) (Table 4)

・ワクチンの副作用は両群で差はない。(Suppl Table1)

 

<メカニズム>

・MTXによる水酸化アルミニウムアジュバントを含む-プロピオラクトン不活化SARS-CoV- 2の0.5mL中

3μgからなるシノバック-コロナバックワクチンのセロコンバージョンと中和抗体陽性率への影響

 

<Limitation>

・ブラジルの単施設

・サンプルサイズ不足

 

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>

・日本で使用されているmRNAタイプのワクチンでの研究ではないので、

日本では臨床に活かせない。

・mRNAワクチンでの同様の研究が望まれる。

・MTXを2週間ではなく、1週間休薬した研究が望まれる。

 

<自分で考えた交絡因子>

・ない

 

<この論文の弱点>

・中国シノバックス社製のワクチンかつ種類が不活化ワクチン

・サンプルサイズが小さい

・患者登録ステーションでの盲検性の担保。

・患者には自分がどの群に属するかは秘密にするよう厳重指示してもどの程度守れるか

(ブラジル人の気質も考慮して)

 

<この論文の好ましい点>

・COVID-19ワクチンとMTX休薬の必要性について検討した世界初の論文

・一時的なMTXの中止がIgGセロコンバージョンと中和抗体陽性率の上昇に有効であることを実証した。

 

<この論文にて理解できなかった点> 

・なぜMTXを2週間も休薬したのか。1週間であったら、もう少し違った結果になったかもしれず。

(担当:三輪 裕介)

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