2022.4月から、ゆるめに不定期に論文などから勉強したことを共有していきます。
後輩がjournalclubと取りあげてくれたNEJMの Iberdomideのphase2試験について、調べてみましたので共有します。勉強
bngl J Med 2022;386:1034-45. DOI: 10.1056/NEJMoa2106535
新規の経路の治療薬はありがたい
まずCELMoDsについて解説
- セレブロモジュレーター(CELMoDs)(ref. 伊藤拓水ら, 実験医学2020:38:2310)
- セレブロンモジュレーター(cereblon E31igase modulators: CELMoDs)は,cullin ring ligase 4(CRL4)とよばれるユビキチンリガーゼE3の基質受容体であるセレブロン(cereblon:CRBN)に結合して作用する薬剤の総称.
- サリドマイドをもとに開発された新しいタイプの薬剤
- ユビキチンリガーゼであるCRBNに結合して作用
- レナリドミドなどいくつかのCELMoDsは、多発性骨髄腫などに臨床で応用されている
- CRBNにCELMoDsが結合すると、Ikaros、Aiolosという多発性骨髄腫の生存に必要な転写因子がネオ基質として分解
- SLEとiberdomide(ref. N Engl J Med 2022;386:1034-45.)
- ジンクフィンガー転写因子IkarosとAiolosは、SLEの遺伝的素因に関与
- Ikarosは、B細胞や形質細胞様樹状細胞の発達を誘導し、I型インターフェロンの主要な産生源
- Aiolosは、B細胞の分化をサポート
- Ikaros(IKZF1)とAiolos(IKZF3)をコードする遺伝子のメッセンジャーRNAは、SLE患者で過剰に発現
- Iberdomide
- CELMoDsの一種であり、カリン-リングE3ユビキチンリガーゼ4複合体に結合し、IkarosとAiolosのユビキチン化→プロテアソーム分解を促進(IkarosとAoilosを破壊)
- インターロイキン-2の増加、炎症性サイトカインの減少、B細胞分化、自己抗体産生の減少など、複数の免疫調節作用を発現
今回の論文概要を以下に記載します。0.45,mgにて有意に改善し、phase3用の容量設定ができたと思われます。今後phase3へ進んで行くことが想定されます。
- 今回の論文
- Phase2
- PICO
- P:SLE患者
- I:iberdomide( A:45mg、B:0.30mg、C:0.15mg)+標準治療
- C:プラセボ+標準治療
- O:治療反応性(24週間後のSRI4反応率)
- 割付:A:B:C:Pを2:2:1:2で割付
- 割付因子:PSL量(10mg以上/未満)、SLEDAI-2K(10以上/未満)
- セッティング:US、カナダ、EU、南アメリカ、メキシコ、ロシアの117施設
- Pの詳細
- 対象は18歳以上
- American College of RheumatologyのSLE分類基準(1997年版)を満たす。
- SLEDAI-2Kのスコアが6点以上(臨床SLEDAI-2K(検査結果を伴わないSLEDAI-2K)のスコアが4点以上)
- 抗核抗体価が1:40以上で、抗二本鎖DNA抗体または抗Smith抗体が血清陽性
- 除外:重症または不安定なNPSLE,重症のループス腎炎、抗リン脂質症候群合併は除外
- 結果
- 有効性
- プラセボ群に比べ45mgのイベルドミド群では有意にSRI-4反応が良好(54% vs 35%)
- 低用量(30mg、0.15mg)ではプラセボと有意差なし
- 安全性
- 有害事象のほとんどは軽度から中等度(尿路感染症、上気道感染症、好中球減少症など)
- 重篤な有害事象の発生率:同程度
- 有効性
文責:矢嶋