☆チョコスタ☆ 第5回目DAG(Directed Acyclic Graph)

チョコスタはちょこっとだけ、アドバンスな統計解析を自分の分野(リウマチ膠原病分野)で考え、理解を深めようというブログです。第5回目は(Directed Acyclic Graph)についてお話しします。

 

今回の主な内容は「Digitale JC, Martin JN, Glymour MM. Tutorial on directed acyclic graphs. J Clin Epidemiol. 2022;142:264-267. 」です。

 

■ EとDをつなぐ因果の経路は2通りあります。

   E→M→D

  E→D

 

■EとDを結ぶ非因果的な経路とそのブロック方法です。

  E←C→G→D :CもしくはGを制御することでブロックできます。

  E→S←L→D :ブロックされている。Sを制御するとしれが開いてしまいます。

 

■キーポイント

  • 矢印がすべて同じ方向を向いていない場合、経路は非因果的でありそこには交絡因子および/またはコライダー(衝突)が含まれています。
  • C は E と D の関連を交絡させています。
  • Gを制御することで、EとDの間の交絡経路を遮断できます。交絡は,EとDの共通原因(たとえばC)のために起きます。E のDへの効果を推定するには,そのような共通原因または非因果経路に沿った他の変数をコントロールすることが必要です.Cによる交絡を除去するためには、CかGのどちらかをコントロールすれば十分です。例えば、Gの質の高い測定値を得ることができる場合には、Gの制御の方が望ましいかもしれません。
  • M は E から D への影響を媒介します(つまり中間因子です)中間因子(例えば、M)は、Eによって引き起こされ、次にDを引き起こします。Dに対するEの全効果を推定するためには、これらをコントロールすべきではありません。
  • コライダー(S)は、2つの矢印が向けられていることから、その名がつきました。経路上のコライダーは,それらが条件付けされるか(例えば,それらをコントロールする),あるいは,コライダーの結果が条件付けされない限り,その経路をブロックしています。Sを制御もしくは制限すると、EとDの間に偏った関連が生じてしまいます。
  • Z は D の子孫です。解析では,Dの子孫(例えば,Z)を調整したり,層別化したり,いかなる方法によっても条件付けしてはいけません。
  • I は、E の D への影響に対する操作変数です。操作変数(例えば、I)とは、要因に関連する変数で、その要因を通して以外は結果に関連しないものです。操作変数解析(経済学の文献では一般的な手法)は、EとDの交絡が難解な場合に効果推定値を導き出すために使用することができます。
  • JはDを引き起こすため、Dの他の原因の効果修飾因子となります。効果修飾因子(例えば、J)は、Dを引き起こす変数で、EのようなDの他の原因の効果を修飾します。もしEとJがともにDを引き起こすなら、JはDEの効果を修飾することになります。DAGは選択バイアスを見つけ立つこともできます。研究への患者の選択がEとD(またはDの初期症状)の両方に影響される場合、DAGはこの選択過程が曝露と疾病の間に偽の関連を生み出す可能性があることを明らにできます。

例えば、子宮頸がんに対する性的パートナーの数の影響を推定することを目的とした研究で、性感染症(STI)の治療を専門とするクリニックから参加者が登録されたとします。性的パートナーの数はSTIのリスクに影響するため、その研究で関心のある曝露は、個人が研究に参加する可能性に影響します。同様に、特に資源が限られている環境では、子宮頸がんの症状がSTIの症状として誤解され、患者がSTIクリニックで治療を受けるようになることがあります。STIクリニックからの登録でバイアスが発生する可能性があります。この例では、バイアスは子宮頸がんに対する性的パートナーの数の真の効果を減弱させる傾向があります。

 

【リウマチ業界での例】

Rentsch CT, DeVito NJ, MacKenna B, et al. Effect of pre-exposure use of hydroxychloroquine on COVID-19 mortality: a population-based cohort study in patients with rheumatoid arthritis or systemic lupus erythematosus using the OpenSAFELY platform. Lancet Rheumatol. 2021;3(1):e19-e27.

 

ヒドロキシクロロキン臨床試験ではCOVID-19患者の治療時に死亡率が低下するというエビデンスは得られていません。本研究ではリウマチ性疾患の治療のためにヒドロキシクロロキンを投与された人々の間でヒドロキシクロロキンのCOVID-19死亡率予防に対する有効性を評価することを目的としています。観察研究です。Cox 回帰で解析しモデル調整は有向無サイクルグラフ(DAG)で情報収集しています。下記のようにDAGが掲載されていました。査読者から掲載を求められるケースが増えてきているのだと思います。

 

*チョコスタはリウマチ膠原病領域のトップジャーナル「ARD、A&R、Lancet Rheumatology、Rheumatology(Oxford)」から優先的に論文をピックアップ、なければ「SEMINARS IN ARTHRITIS AND RHEUMATISM、Therapeutic Advances in Musculoskeletal Disease、ARTHRITIS RESEARCH & THERAPY、Rheumatic & Musculoskeletal Disease(RMD) Open、ARTHRITIS CARE & RESEARCH、Journal of Rheumatology」からピックアップします。また世界の5大雑誌(New England Journal of Medicine、The Lancet、JAMA (Journal of the American Medical Association)、BMJ (British Medical Journal)、Annals of Internal Medicine)からもピックアップします。

 

文責:柳井亮

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