ビタミンDおよびオメガ3脂肪酸の補給と自己免疫疾患発症に関するVITAL RCT

論文名 Vitamin D and marine omega 3 fatty acid supplementation and incident autoimmune disease: VITAL randomized controlled trial

著者, Jill Hahn et al.

掲載雑誌/号/ページ BMJ. 2022 Jan 26;376:e066452

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<サマリー>

ビタミンDの補給で5年間の自己免疫疾患発症率が減少した。

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<背景>

P:50歳以上の男性、55歳以上の女性

I:VitD 合わせて/もしくは EPA+DHA投与

C:プラセボ投与

O:5年後の自己免疫疾患発生率

<セッティング>

アメリカ国内。2011年11月から2014年3月にランダム化

<population およびその定義 >

50歳以上の男性、55歳以上の女性

・試験参加後はサプリで800 IUまでのVitD摂取の制限と魚油のサプリ摂取制限、カルシウムは1200mg/dまで摂取制限

除外基準

・ガンの既往 

・冠動脈疾患の既往

・腎不全や透析歴、高カルシウム血症、副甲状腺異常、重症肝疾患、サルコイドーシス、結核、GPAなどの肉芽腫性疾患

・魚や豆にアレルギー

・他重篤疾患ない患者

<主なアウトカム、および、その定義>

質問で確認できた医師診断の新規自己免疫発症率(RA、PMR、自己免疫性甲状腺疾患、乾癬、IBDやその他自己免疫疾患)、診断に関して2人の医師がカルテで確認

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>

randomized, double blind, placebo controlled, two-by-two factorial design

a cox modelでは年齢・性別・民族によって調整

・VitDとしてコレカルシフェロール2000IU/日投与

・海洋性オメガ3脂肪酸として460mgのEPAと380mgのDHA含む1gの魚油カプセル

・上記の対照群としてプラセボ投与

3か月間プラセボ投与後にランダム化して割付

 

コレカルシフェロールは天然型VitDであり、結晶のビタミンD₃ 0.025μgを1IUとWHOで定義されている。ラットを用いた過去の実験からは天然型ビタミンDは1α(OH)D₃と同程度の骨密度減少抑制効果を発現するのに4000倍の量が必要であった。

➩コレカルシフェロール 2000IU/日=50μg/日 ➩1α(OH)D₃で0.0125μg相当

アルファロールは1α(OH)D₃

<解析方法>

t tests or χ2 tests

<結果>

元の論文を見ると1033人は死亡

【table1】患者背景

25871人の参加者。平均年齢 67.1歳

4555人(18%)が元々自己免疫疾患あり 

 

【table2】VitD投与群の結果

 確定診断のみに絞るとVitD群で123人、placebo群で155人の自己免疫疾患の発症を認めた。(adjusted hazard ratio 0.78, 95% confidence interval 0.61 to 0.99, P=0.05)、疑い症例も含むと有意差はつかなかった。

RA、PMRは減少しているものの、甲状腺疾患は増加傾向あるように見える。統計学的な有意差はなし。

 

【table3】オメガ3脂肪酸投与群の結果

確定診断のみで130人対148人(0.85, 0.67 to 1.08, P=0.19)

疑い症例も含めると208人対249人(0.82, 0.68 to 0.99, P=0.04)

【Fig 1】1年ごとの累積発症率

両方プラセボだったものに比べるとVitD、オメガ3脂肪酸、両方内服群で自己免疫疾患の累積発症率が低い傾向にあった。

特に最初の2年間を除くとVitDで発症率の低下傾向が高かった。

【table 4】2×2での発症率

VitDではオメガ3脂肪酸併用の有無にかかわらず、自己免疫疾患の発症率が低い傾向にあった。

 

<結果の解釈・メカニズム>

VitD、オメガ3脂肪酸の投与はともに自己免疫疾患の発症率を低下する傾向が見られた。確定診断のみの場合はVitDで有意差あったが、オメガ3脂肪酸は有意差なかった。疑い症例も含めると有意差を認めた。確定診断だけに絞ると偽薬群と比較してVitD、オメガ3脂肪酸併用群は30%発症率が減少した。甲状腺疾患と乾癬はその傾向が見られなかった。

VitDの作用機序について下記が考えられている。

・VitDが炎症や免疫応答に関わる多くの遺伝子を制御している。

・VitDレセプターは樹状細胞、T・Bリンパ球、マクロファージといった細胞に高密度に存在し、機能に影響している。

・IL-2、Tリンパ球の重要成長因子の発現抑制や IL4、5、10が増える一方、ヘルパー1T細胞のサイトカインでIL12、interferon γ、TNFを抑制する。

・CD4陽性T細胞に対してもIL6や自己免疫疾患の発症につながるヘルパー17T細胞を刺激する重要因子への妨害に働く。

・B細胞の自己抗体産生や単球のマクロファージへの分化、ケモカインやサイトカインの抑制、MHCⅡの発現減少させることにより抗原提示容量の減少を誘導させる。

・抗炎症性制御性T細胞の産生を増加させる可能性がある。

EPA・DHAの作用機序について下記が考えられている。

・CRPやTNFα、IL1β、IL6といった炎症サイトカインの抑制

・T細胞の新生や活性化の減少

・resolvinやprotectin、maresinといった炎症を抑えるSPMの基質を供給する。

 

<Limitation>

・50歳以上が対象であり、自己免疫疾患はより若年で生じる疾患も多いこと(もとになった研究の対象が癌や心血管イベントであるため)

・薬の量や配合比率が一定だったこと(BMIが低い人のほうが効果あり)

・確定診断数が少なかった点、特に甲状腺疾患(Grave病vs自己免疫)

 

<この論文にて理解できなかった点> 

・VitD群で甲状腺疾患、オメガ3脂肪酸群で乾癬が上昇しているように見える点

・臨床での薬剤投与での相当量

(担当:林)

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