The Safety and Immunologic Effectiveness of the Live Varicella-Zoster Vaccine in Patients Receiving Tumor Necrosis Factor Inhibitor Therapy:A Randomized Controlled Trial
TNF阻害薬使用者での帯状疱疹弱毒生ワクチンの安全性と免疫学的効果 The VaricElla zosteR VaccinE (VERVE) trial
Jeffrey R. Curtis, MD, MS, MPH; Stacey S. Cofield, PhD; S. Louis Bridges Jr., MD, PhD; John Bassler, MS; Atul Deodhar, MD;Theresa L. Ford, MD; Joseph Huffstutter, MD; Allen Jankeel, MS; Alan Kivitz, MD; Shaila Kamal, MBA; Stephen Lindsey, MD; Ilhem Messaoudi, PhD; Norma Mendoza, BS; Kaleb Michaud, PhD; Ted R. Mikuls, MD; David Ridley, MD; William Shergy, MD; Sarah A.R. Siegel, PhD; and Kevin L. Winthrop, MD
Division of Clinical Immunology and Rheumatology, The University of Alabama at Birmingham
Ann Intern Med. 2021; 174: 1510-1518. doi:10.7326/M20-6928.
<サマリー>
TNF阻害薬使用者に対して帯状疱疹弱毒生ワクチン接種による安全性と免疫学的効果を検証するRCT。6週間での帯状疱疹の発症はなし。 6週間でのgpELISAの変化はベースラインから1.33%上昇、ELISpot(IFNγ)では1.39%と有意に上昇した。ワクチンによるIgG応答はあったものの、IFNγの反応は、接種後1年では持続しなかった。この研究はTNF阻害薬使用している患者には禁忌とされているこのワクチンが、安全に使用できることを示唆しているが、長期的な有効性は不明である。さらに、免疫原性のデータは、これらの患者がブースターワクチン接種のために評価される必要があるかもしれない
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P:TNF阻害薬使用中の50歳以上の患者
I:帯状疱疹弱毒生ワクチン接種
C:プラセボ
O:
・6週間後の血清および末梢血単核細胞からの糖タンパク質酵素結合免疫吸着法(gpELISA)および酵素結合免疫吸着スポット(ELISpot)の6週間後の変化
・単純疱疹感染または帯状疱疹感染
<セッティング>
・米国の33施設
・2015.3月-2018.12月まで
<研究デザインの型>
・RCT(第3相、二重盲検)
・プラセボ、帯状疱疹弱毒生ワクチンを1:1に割付
・開始後6ヶ月まで、医師、プレセボ群の患者は盲検化継続、12ヶ月まで介入群は盲検化継続
<Population、およびその定義>
・TNF阻害薬を使用する50歳以上の患者
・TNF阻害薬は、adalimumab, certolizumab, etanercept, golimumab, infliximab)
・これらを最低30日以上使用
・疾患の制限はなし
・疾患活動性なし
・除外:がん治療中、免疫抑制状態(HIV、臓器移植など)、閉経前、以前に帯状疱疹生ワクチン接種、抗ウィルス薬投与、
・はじめの100人:VZV IgG陽性でありPSL非内服者のみのエントリー → その後は、単純疱疹や帯状疱疹の既往、30年以上US在住者、PSL10mg以下であれば上記の条件はクリアしなくてもエントリー
・ランダム化:ベースラインのPSLで層別化し、ブロックランダム化(1施設4と8ブロック)
<主な介入、および、その定義>
帯状疱疹生ワクチン 0.65mlを1回皮下注 vsプラセボ
<主なアウトカム、および、その定義>
Primary outcome
・6週間後のVZV-IgG、IFNγ(T細胞反応)
Secondary outcome
・6週間での安全性・忍容性:複合指標:すべてのSAE+重症でない帯状疱疹発症+忍容性
・疾患活動性悪化:RA患者のみ:CDAI,RAPID3
<解析方法>
免疫原性
・ワクチン接種後6週間の幾何平均値,95%CI,GMFR(geometric mean fold rise)の増加率を算出
・primary outcomeは6週目-ベースラインの差、と、6週目における介入とプラセボのGMF比
・GMF比の検定は、一般化線形モデルを使用
安全性
・マージンを1.25%とした非劣勢試験で判断
サンプルサイズ
・免疫原性が30%減少すると仮定し、10%脱落し、α 0.05、β 0.8として計算
欠測値対処
・gpELISA(IgG)、ELISpot(IFNγ)ともに、検出感度以下の場合は0.6を代入
<結果>
・6週間での免疫原性反応
IgG(gpELISA)33%、 ELISpot(IFNγ:T細胞の働き)39%の増加
・一年後のワクチン群
gpELISAはベースラインからの有意な増加を維持(1.42 [CI, 1.07 to 1.88]; n = 114
ELISpotはベースラインからの有意な差は消失(0.76 [CI, 0.51 to 1.15]; n = 116
・重症副作用
ワクチン群:10人(3.2%)、プラセボ群:8人(2.6%)・・・・非劣勢達成
帯状疱疹発症(疑い):ワクチン群12人(1.9%)、プラセボ群5人(1.6%)
帯状疱疹発症(確定):ワクチン群0人、プラセボ群0人
<結果の解釈・メカニズム>
・6週間での評価は一般健常人と比較して不十分
一般健常人での検討(Shingles Prevention Study):IgG120%、IFNγ78%の増加 ・・・ベースラインからの反応
今回の検討:IgG33%、IFNγ39%の増加
・1年後の効果が、免疫原性の評価からは、効果不足と考える。2回接種が必要である可能性。
一般健常人での検討(Shingles Prevention Study):3年まで非接種群より高値
今回の検討:IgGは高値であったが、IFNγはベースラインまで
・安全性は非劣勢であり、評価はできると考える。
<Limitation>
・広いparticipantsとした(pragmatic RCT)ために、現場への適応が難しい
・我々日本人に適応してよいか
<研究の強み>
・いままで、観察研究がmainであったものをprospectiveにみることができた
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・2回目の接種の必要性が高そう
・シングリックス自体の研究も不十分であり、今後の検討が必要であることがわかった
<この論文の好ましい点>
・臨床の状況でありうることでもあり、参考になる
・abstや本文の記載が充実している
・limitionは1つのみ記載しかなかった
【コメント】
この論文の掲載時には、シングリックス使用についての記載はすくなったが、2021.10月のACIPの推奨では「19歳以上のすべての易感染者はシングリックスを接種することを推奨」と記載へ変更となった。(Anderson TC, et al. Use of Recombinant Zoster Vaccine in Immunocompromised Adults Aged ≥19 Years: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices – United States, 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Jan 21;71(3):80-84.)。日本リウマチ学会のHPには「リウマチ性疾患患者における安全性のエビデンスが十分でないため、当該患者のリスクベネフィットに鑑みて使用を考慮してください」と2020.12.7時点で記載があるが、上記の理由で使用を進めていってもよいかと考える。なお、米国では、帯状疱疹弱毒生ワクチンは販売中止となったため、この研究結果の反映は米国の臨床ではされないこととなる。
(担当:矢嶋)