【元医局長の勉強部屋】免疫抑制者への組換えサブユニット帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹ワクチンは、生ワクチンと組換えサブユニット帯状疱疹ワクチンの2種類がある。日本では、水痘ワクチンに2016.3月から、50歳以上に対する帯状疱疹の予防が適応が追加となったものの、免疫抑制者への使用は基本的には難しい。

免疫抑制者への帯状疱疹弱毒生ワクチンの接種の研究としては以下の通りで、帯状疱疹の発症はなかったとするものと、播種性が出現したとの報告もあり
・帯状疱疹発症や、播種性帯状疱疹発症のなったケース報告( Willis ED, et al. Herpes zoster vaccine live: a 10 year review of post-marketing safety experience. Vaccine. 2017;35:7231-39.)
・HIV患者295人でのRCTでは、帯状疱疹発症はなかった。(このRCTでは2回のワクチン接種)(Benson CA, et al. Safety and immunogenicity of zoster vaccine live in human immunodeficiency virus-infected adults with CD4+ cell counts >200 cells/mL virologi-cally suppressed on antiretroviral therapy. Clin Infect Dis. 2018;67:1712-9.)
・Medicareのデータを使った46万人以上でのワクチンの安全性と効果をみた検討。633人がTNF阻害薬を使用中にワクチン接種し、42日以内の帯状疱疹発症はなかった。ワクチン接種により帯状疱疹発症は低下(HR0.61、95%CI 0.52-0.71)(Zhang J, et al. Association between vaccination for herpes zoster and risk of herpes zoster infection among older patients with selected immune-mediated diseases. JAMA. 2012;308:43-9.)
・先日当科でJCで取り上げたThe VaricElla zosteR VaccinE (VERVE) trialでも、長期的な効果は少ない結果であったが、帯状疱疹発症はなかった。

 

では、免疫抑制者への組換えサブユニット帯状疱疹ワクチン(シングリックス)の研究はどうであろうか。活動性AIIRD患者におけるRZVの臨床効果データはない、このワクチンの新規アジュバントは、健康な成人において高い反応原性を示し、潜在的にいくつかの基礎的な自己免疫疾患の再燃を引き起こす可能性のために、日本リウマチ学会では、2020.12.7の時点ではリスクベネフィットで使用するようにとしている(https://www.ryumachi-jp.com/publish/guide/)。しかしながら、ACIPの推奨として、 「19歳以上のすべての易感染者は、帯状疱疹サブユニットワクチン(シングリックス®)を接種することを推奨」とした。Anderson TC, et al. Use of Recombinant Zoster Vaccine in Immunocompromised Adults Aged ≥19 Years: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices – United States, 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Jan 21;71(3):80-84.

免疫抑制者への組換えサブユニット帯状疱疹ワクチン(シングリックス)の文献は以下通り。
・RAおよびその他の膠原病疾患403名に接種にて、疾患の再発は7%以下、AEは13%以下で出現(単施設研究)
(Stevens E, et al. Safety of the zoster vaccine recombinant adjuvanted in rheumatoid arthritis and other systemic rheumatic disease patients: a single center’s experience with 400 patients. ACR Open Rheumatol. 2020;2:357-61)
・67名のIBD患者へ接種し、1名が疾患の再燃(単施設研究)
(Satyam VR, et al. Safety of recombinant zoster vaccine in patients with inflammatory bowel disease. Dig Dis Sci. 2020;65:2986-91)
・622人中、59人 (16%) が再燃。特に炎症性関節炎の患者において再燃のリスク。ワクチン接種時にグルココルチコイドを使用している患者(不安定な疾患/高い疾患活動性の代用と考えられる)は、再燃のリスクが高い
    (Lenfant T, et al, Safety of recombinant zoster vaccine: a retrospective study of 622 rheumatology patients. Rheumatology S (Oxford). 2021;60(11):5149.)

これらの研究では、RZVの免疫原性や有効性は評価されていないものの、今後の情報の蓄積をしつつ、使用して行く形であろう。あとは、安価になるとさらにお薦めしやすい。

文責:矢嶋宣幸

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