Challenging wisely: how to move beyond ‘1 mg/kg then taper’
賢い挑戦:「1mg/kgから漸減」を超えるには?
Tai S, Anumolu N, Putman M. Challenging Wisely: How to move beyond “1mg/kg then taper”. Rheumatology (Oxford). 2022 Apr 19:keac221.
- はじめに
- 50年以上にわたって、ステロイドは、重症リウマチ性疾患の導入療法の中心的な薬である。
- [1mg/kg投与後、漸減する」という治療法は、臓器を脅かす症状をしばしば有効だが、ステロイドの累積により感染症、骨粗鬆症性骨折、心血管疾患などの用量依存的増加がみられる。
- 最近、ANCA関連血管炎(AAV)とSLEを対象とした試験で、「1mg/kgから漸減」というパラダイムに挑戦している。
- AAV
- PEXIVAS(Walsh M et al, N Engl J Med 2020)
- 重症AAVにおける血漿交換を評価する2×2要因デザインの研究者主導RCTである。
- ステロイドの累積曝露量を半分に減らすレジメンと1mg/kgの副腎皮質ホルモンレジメンを同時に調査した(図1A)。低用量レジメンを受けた参加者は、最終的に全死亡または末期腎不全(ESRD)までの期間が同等であり、感染性合併症が少なかった。
- PEXIVAS試験に登録された参加者は重度のAAVであり、低用量レジメンが一部の患者に可能であることが示唆された。
- LoVas試験(Furuta S et al, JAMA 2021)
- 日本の臨床試験、MPO-AAVが主体である患者を対象、重度の糸球体腎炎や肺胞出血のある患者は除外。(図1A)
- 「1mg/kg投与後漸減」する標準的なレジメンの3分の1以下の投与量で、PEXIVASと同様に寛解率は同等で、ステロイド関連の有害事象は少なかった。
- これらの質の高いデータが診療を変えた。2021年に発表されたACRのAAVガイドラインでは、PEXIVASの低用量レジメンが支持された(Chung SA, Arthritis Rheumatol 2021)。
- PEXIVAS(Walsh M et al, N Engl J Med 2020)
- ADVOCATE試験(Jayne DRW, J Am Soc Nephrol 2017)(図1A)
- ステロイドなしの群がある試験C5a阻害剤アバコパンおよびステロイド「なし」は後戻りのできない道へ歩みだした(Crossing the Rubicon)。
- 52週時点で、アバコパン群は再発率が低く、有害事象も少なかった。
- アバコパン群の86%の患者が、リツキシマブ投与によるソルメドロールの前投与にオフプロトコルのステロイドを投与していたことに注意が必要。また、リツキシマブは現在の標準治療のように26週目(6ヶ月目)に再投与されなかったため、52週目の結果を解釈することは困難である。
- ADVOCATEのアバコパン群の参加者は、PEXIVASの「1mg/kgから漸減」群の参加者の累積ステロイド量の15%未満しか投与されておらず、パラダイムシフトが起こりうる結果であった。
- SLE
- 重要なRCTと実際の臨床医がともに、「1mg/kgから漸減」レジメンを使用してきた(図1B)。これらは質の高い根拠に基づいておらず、ループス腎炎で「1mg/kgから漸減」レジメンを使用した多くの試験は失敗に終わった(Oon S, Semin Arthritis Rheum 2018)。
- これらの失敗は、SLEの不均一性とSLEのアウトカム指標の厄介な特異性の両方が原因である。また、「プラセボ反応者の割合を最小限にする工夫」をしない限り試験は成功しないとも言われている。治験責任医師がプラセボ効果をコントロールできる範囲は限られているため、「プラセボ反応者の割合を最小限にする工夫」とは、MMFの投与量を少なくしたり、ステロイドの投与量を減らしたりして、背景の療法への反応を最小限にすることである。
- AURA試験、AURORA試験
- プラセボ対照RCT、ボクロスポリン の有効性安全性評価
- MMFの使用量を制限し、ステロイドの減量レジメンを採用した。
- ステロイド漸減レジメンは25mgから始まり、16週目にはゼロまで漸減する驚くほど速いレジメンであった。
- ボクロスポリンは主要評価項目であるComplete renal をremissionを達成した。さらに、「急速に漸減する低用量ステロイドレジメンは、ループス腎炎の治療に有効である」と結論づけた(どちらの試験も減量レジメンのみを使用しているため、この疑問は検証されていない)。
- ループス腎炎において標準量のコルチコステロイドレジメンと低用量のコルチコステロイドレジメンを実際に比較した小規模RCTは現在までに2件のみである。そのうち1件は、低用量レジメンに無作為化した患者のフレアの割合が有意に高いことがしめされた (Bharati J, Indian J Nephrol 2019)。
- これらだけでは不確実性が高く、ステロイドレジメンを比較したRCTが必要である。
- しかし、臨床試験が低用量レジメンを受け入れ、2019年の欧州リウマチ学会ガイドライン(Fanouriakis A, Ann Rheum Dis 2019)がループス腎炎の導入療法に低用量レジメンを推奨しているため、そのようなRCTが実施されない可能性もある。AAVのガイドライン(Chung SA, Arthritis Rheumatol 2021)とは異なり、これらのガイドラインは、そのようなレジメンの妥当性を厳密な方法で確立した高品質のデータを引用していない。むしろ、ボクロスポリンの開発計画を引用している。
- リウマチの分野で賢く挑戦する
- 1mg/kgから漸減する “レジメンを使い続けることや、データを得る前に減量レジメンを採用することは、どちらも避けるべき
- 新しい診療パターンを確固たる根拠の上に確立したいのであれば、我々は賢く挑戦しなければならない。