
Arthritis Res Ther. 2022 Feb 14;24(1):43. doi: 10.1186/s13075-022-02737-6.
Tumor necrosis factor alpha neutralization attenuates immune checkpoint inhibitor-induced activation of intermediate monocytes in synovial fluid mononuclear cells from patients with inflammatory arthritis
免疫チェックポイント阻害薬誘発性関節炎の関節液中単核細胞における中間単球の活性化はTNF-α阻害により抑制される
著者名 Sørensen AS , Kragstrup TW. et al. Department of Biomedicine, Aarhus University, Høegh-Guldbergs Gade 10, 8000, Aarhus, Denmark.
Background
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)によるがん治療において、既存の炎症性関節炎患者の半数が再燃を起こす。単球には3つのサブセット(古典的単球:CD14+CD16-、中間単球:CD14+CD16+)および非古典的単球CD14-CD16+)が散在する。古典的単球は健常人に豊富なサブセットだが、CD16+単球は自己免疫疾患を含む炎症において増加し、TNF-α、IL-6、MCP-1などの炎症性サイトカインを産生する。炎症性関節炎ではFLSと破骨細胞によって産生されたMMP3やTRAPなどの酵素により軟骨および骨破壊が進行する。ペムブロリズマブによる既存関節炎患者の増悪は単球活性が病因であるか検証した。
Methods:悪性腫瘍の合併はなく、ICI治療もされていないRA患者14人、SpA患者9人、PsA(患者5人、合計28人から関節液単核球(SFMC)を採取した。さらにSpA患者3人、RA患者3人から末梢血単核球(PBMC)を採取した。関節液は主に膝、肩、足関節から採取。対照としてオーフス大学病院血液バンクから得た健常人のPBMCを使用した。
- 単核細胞の分離:Ficoll-Paque密度勾配遠心分離より末梢血単核球(PBMC)と関節液単核球(SFMC)を分離し、freeze medium(RPMI w/10%DMSO+20% heat0inactivated FCS)で-135℃で実験使用まで保存された。
- 単球およびリンパ球で構成されるSFM/PBMCを37℃で解凍し培養液に播種し、ペムブロリズマブとともに48時間培養。細胞懸濁液を遠心し上清を回収。MCP-1 ELISA, V-plex pro-inflammatory panelに使用した。
- Flow cytometry: SFMCを1×10^6cells/mLでまき、回収前4時間は10ug/mL Brefeldin A(小胞体からゴルジ装置への糖タンパク質細胞輸送阻害)を加え培養した。非接着細胞回収し、接着細胞は剥離バッファーで剥離しスクレーパー使用し回収。
surface staining:CD45,CD16, CD14 , TLR-2, live/dead viability dye
Intracellular staining: MCP-1
Gating strategy used to identify monocyte subsets was confirmed by staining PBMCs from healthy controls
- DMARDs使用した培養:2×10^6 cells/mL. 5ug/mL ADA, 5ug/mL TCZ, 200nM tofacitinib, 200nM baricitinib. 100ng/mL LPS(陽性コントロール). 48時間培養し培養上清を回収してMCP-1産生を解析
- ELISA: MCP-1 and MMP-3
- Enzymatic assay:TRAP
- V-plex pro-inflammatory panel 1 for 10 different pro-inflammatory cytokines:
- IFNγ, IL-1β, IL-2, IL-4, IL-6, IL-8, IL-10, IL-12p70, IL-13, and TNFα
- Statistical analyses and graphs: Student’s paired t-test (GraphPad Prism).
Results:
Figure1.
HCおよび同一患者から得られたSFMCs (n=16, 3SpA, 5PsA, 8RA)とPBMCs (n=6, 3SpA, 3RA)をペムブロリズマブで刺激したところ炎症環境下から採取したSFMCsのみMCP-1産生の増加を認めた(p=0.0031)。RAとSpA, PsAでは見た目変わりはなかった
Figure2A,2C. FLS-PBMCの共培養での、48時間ペムブロリズマブ刺激はMMP3の産生を増加させなかった。(陽性コントロール:LPS, n=6, 3SpA, 3RA)
Figure2B, 2D.ペムブロリズマブ加え21日観培養されたSFMCではTRAP活性に差は認めなかった。
(陽性コントロール:RANKL+M-CSF, n=14, 7SpA and 7RA)
Figure3. CD45+/Live/TLR-2/Single cellsで特徴づけられる単球をCD14, CD16の発現に基づき、3つのサブセット(古典的単球:CD14+CD16-、中間単球:CD14+CD16+、非古典的単球CD14-CD16+)に分けて評価した。ペンブロリズマブで治療されたSFMC(n=4, 2SpA, 2PsA)は未治療に比較して中間単球の増加と古典的単球の減少を認めた。対照的にLPS刺激された単球は古典的単球の増加と中間単球の減少を認めた。
Figure4.単球サブセット別のMCP-1産生を細胞内フローサイトメトリーで評価した。
LPSが中間単球と古典的単球でMCP-1産生を増加させたのと対照的に、ペムブロリズマブは中間単球でMCP-1産生を増加させたが古典的単球では増加させてなかった。
Figure5. SFMC培養液上清(n=11, 8RA, 2PsA, 1SpA)のV-plex pro-inflammatory panelの結果は、ペンブロリズマブ治療(48h)は、TNF-α、IL-10、IL-12p70、IFN-γ、IL-13、IL-2、およびIL-4の産生を増加させたが、IL-6およびIL-1βは増加させなった。
Figure6. TNF-α阻害薬(ADA)およびJAK阻害剤(tofacitinib, baricitinib.)は、ペムブロリズマブによって誘発されるSFMCからのMCP-1産生を減少させたが、IL-6R阻害薬(TCZ)は減少させなかった。
(ADA, TCZ treatment: n=10, 2RA, 4PsA, 4SpA Tofa, Bari treatment: n=7. 3PsA. 4SpA)
Discussion
炎症性関節炎から得られたSFMCはペムブロリズマブ治療はMCP-1産生が増強した。ペムブロリズマブよる免疫活性化には既存の活性化された免疫応答が必要であることを示している。SFMCにおいてPD1やPDL1がアップレギュレートされていることが考えられるが、今回の研究では発現は測定していない。
FLS-PBMCの共培養での、ペムブロリズマブ刺激はMMP3の産生を増加せず、ペムブロリズマブ加えて培養されたSFMCではTRAP産生を誘導しなかった。これはペムブロリズマブが線維芽細胞および破骨細胞への誘導を活性化せず、破壊性関節炎の表現型を引き起こさないことを示唆している。しかしICI治療の結果として関節破壊と骨折の報告がありin vivoでは破骨細胞を活性化しうることは否定できない。
単球がMCP-1産生することが既存の報告にあるため、ペムブロリズマブによるMCP-1産生は単球由来でであると考え実験をすすめた。ペムブロリズマブ治療後に単球よりMCP-1産生が増加しさらに、中間単球が主な産生細胞であることが判明した。既存の報告で中間単球は古典的単球よりPD-1とPD-L1発現が高いことが報告されており中間単球がペムブロリズマブ治療に反応した理由かもしれない。ペムブロリズマブが中間単球の割合を増加させたがRAにおいて末梢血と関節液で中間単球が増加し末梢血中間単球の出現頻度は重症度と関連している報告がある。また、中間単球は関節で炎症性マクロファージに分化する主要なサブセットであるとの報告もあり興味深い。
V-plex pro-inflammatory panelの結果においてペムブロリズマブがSFMCからのTNF-α産生を増加させたがIL-6の産生は増加しなかった。単球以外のリンパ球やNK細胞からの分泌を評価していないが、中間単球は主にTNF-αを産生し古典的単球はIL-6を産生することが報告されており関連するかもしれない。
TNF-α阻害薬(ADA)がMCP-1産生を減少させたがIL-6阻害薬(TCZ)は減少させなかたことは臨床的にICI誘発関節炎がTNF-α阻害薬で治療できることを示す臨床研究と一致している。これはTNF-αがPD-1阻害よって誘発される炎症に重要であることを示しており、IL-6がペムブロリズマブ誘発性炎症において重要な役割をはたしていないことを示唆している。しかし、TCZのICI誘発性関節炎における有効性の報告もある。JAK阻害薬もMCP-1産生を減少させた。これはJAKシグナルがB-plex assayで測定されたいくつかのサイトカン(IL-10、IL-12p70、IFN-γ、IL-13、IL-2とIL-4、およびIL-6)を抑制しているためと考えら、複数のサイトカンシグナルを阻害した結果としてMCP-1産生が減少したと考えられる。
臨床的有効性についてはランダム化比較試験が必要です。
我々の発見は、既存の炎症性関節炎の患者の再燃は単球の活性化を伴い、TNFα中和で管理できることを示しています。
Limitation
サンプルサイズが少なくRA,PsAおよびSpAの比較やTNF-αやIL-6の分泌の違いを検証できなかった。比較的小規模な研究であり、大規模な研究や関節炎のinvivoモデルでの複製が必要である。
TNF阻害薬で治療されている患者と治療されていない患者のSFMCの比較はサンプル数が少なくできなかった。大関節炎を呈している患者の背景であり、通常の末梢関節炎や椎体病変を有する患者背景とは異なる。単球がMCP-1産生増加メカニズムは他のB細胞やT細胞、NK細胞などの評価をしていないため結論づけられない。中間単球のMCP-1産生増加は単独でなくいくつかの細胞への影響の結果と考えられる。
(担当:若林)