Ann Rheum Dis 2022; 81: 344-350
Fatigue in patients with early rheumatoid arthritis undergoing treat-to-target therapy: predictors and response to treatment
背景
RA患者の訴えとして、全身倦怠感(fatigue)が大きなウェイトを占めることは周知のとおり
治療介入後、寛解後の早期RA患者の倦怠感の要因、そのリスク因子について言及されることは少ない
本研究の目的
RA患者の倦怠感の訴えの要因が何によるものなのかを考える。特に寛解に至った後にも聴かれる倦怠感の訴えに、寛解到達までの期間、が重要である可能性を考え、立証する。
研究デザイン および患者
・ARCTIC (Aiming for Remission in Rheumatoid Arthritis: a Randomised Trial Examining the Benefit of Ultrasound in a Clinical Tight Control Regime ) trialからデータ抽出
・全患者 上記trialに沿い、初期の7週間はMTX(15㎎/week)+PSL(15mg tapered to 0mg)の決められた治療アルゴリズムにのっとって治療した
・寛解:DAS44 <1.6、かつ、腫脹関節なし かつエコー寛解を満たすもの
・18-75歳 ACR/EULARのRA診断基準を満たす
・ノルウェー11施設から2010年~2013年に症状発症24カ月未満、かつ、過去にDMARDsの使用歴がない
アウトカム
■治療介入24カ月のfatigue Vasを測定
Fatigueの評価には、VAS(0mm-100mm) 質問事項 『この1週間にfatigueによる問題がなにかあったか?』
過去の研究を参考に
・no fatigue : VAS<20㎜
・clinical relevant fatigue : ≧20mm
評価項目
・疾患活動性:毎受診、DAS28(ESR)と治療反応性(ACR/EULAR remision)を測定
・睡眠障害:(Numerical Rating Scale)
・精神状態:SF36(36-Item Short Form Suvey Mental Component Summary Score)
・身体機能:PROMIS(Patient-Reported outcomes Information System)
ほか
解析
ベースラインから24ヵ月間におけるfatigueデータおよびその他の連続変数の欠落は、最終観察値を繰り上げ、予測した。連続変数は、平均値(SD)または中央値で表示。カテゴリー変数は、頻度(%)で示した。ベースラインから 24 ヵ月後までのfatigue中央値 の変化を調べ、ベースライン、6 ヵ月後、24 ヵ月後に 3 つのfatigueカテゴリーに属する患者の割合を計算した。fatigue VASの変化とカテゴリーによるDASの変化との対応関係を評価した。フォローアップ 24 ヵ月時点で 20mm 以上のfatigueのベースラインでの潜在的な予測因子を単変量ロジスティック回帰により分析し、その後の多変量解析にその変数を含めるには p 値<0.10 であることが必要であった。連続変数については、線形性の検定を行った。すべてのモデルは年齢と性別で調整され、最終モデルから除外された変数は、1つずつ再入力、他の変数の係数を20%以上変化させる場合は、モデル内に留められた。最終モデルにおける変数間の潜在的な相互作用は、相互作用項を一つずつ含めることで分析した。関節痛VAS、身体機能、睡眠は、ベースライン時のPGAとの相関が高い(それぞれr=0.83、r=0.67、r=0.58、p<0.001)ため解析から除外したが、これらの変数を含むモデルの解析も別途実施した。DASは複合指標として含まず、構成要素を個別に含めた。CRPとESRは密接に関連しているため、ESRを優先してCRPを解析に含めた。早期治療効果または寛解と治療 24 ヵ月後のfatigueとの関連を探るため、ORを算出した。
ベースラインから 24 ヵ月までのすべての時点において疲労度が 20mm 以上の患者を対象に感度分析を行った。すべての解析は、Stata/IC V.14.0 および 16.0 を使用して実施した。
結果
■24カ月、fatigue VASが追えたのは205/230名
■fatigueVASの中央値は37㎜だった table 1
■fatigueの改善は初期の3カ月で顕著、24カ月では中央値37⇒9㎜へ低下
■ベースラインはfatigueVAS≧20 が全体の69%で
24カ月後のfatigueVAS≧20は38%と低下(p<0.001)
■疾患活動性とfatigueVASはほぼパラレルな関係を示した
■24か月後fatigueの予測因子:いずれもベースラインの睡眠障害、SF36、身体機能、p-VAS、
■治療寛解までの速度:治療開始6カ月以内にで寛解した群では24か月後のfatigueの自覚が有意に少ない
一方、治療開始3カ月以内に寛解に至ったか否かは24か月後のfatigueに影響しなかった
この研究の良い点)
Windows of opportunity の考えを長期的なfatigueに目を向けて解析した初めての研究
臨床への応用)
早期診早期治療⇒目指す寛解までの期間を肌間隔だけではなく、6カ月をひとつに目安とすることで、長期的なfatigueの自覚を回避するための治療戦略となる可能性がある
Limitation)
コホート研究で、治療は初期のみ統一されているが、その後の治療薬の影響が触れられていないこと。
(saple でMTX量は影響しなかったことについては言及)
睡眠障害や精神的問題など、RAとは別に合併している可能性に対し、言及できていない
年齢や社会的な活動性、周囲のサポートの有無なども評価されていない
24カ月時点で寛解した患者において、寛解しているのにfatigueが残る患者に関する検討がない
(担当:髙橋)