関節リウマチに対するグルココルチコイド処方のばらつき、グルココルチコイドの長期使用に対する医療従事者の好みについて

Arthritis Care & Research 2021; 73: 1597-1605 

Variability in Glucocorticoid Prescribing for Rheumatoid Arthritis and the Influence of Provider Preference on Long-Term Use of Glucocorticoids 

背景 

グルココルチコイド(GC)DMRADsと併用することでRA患者の活動性を改善するが,長期的使用に伴い感染症,糖尿病,体重増加,心血管イベントなどの合併症リスクがあり,短期的な使用が望まれる. DMARDsと置き換える3ヶ月以内の使用が,ACR/EULARでは推奨されている.しかし実際には,30-60%RA患者がGC長期的投与されており,原因として,患者の疾患の重症度や,bDMARDsが使用できない事情の他にリウマチ医の処方傾向も挙げられる. 

本研究の目的 

グルココルチコイド短期使用を推奨する目的でリウマチ医間のGC処方のばらつき,処方の傾向を評価した. 

研究デザイン および患者 

2006年〜2015年の米メディケア(65歳以上の高齢者の90%以上と若年の要介助者が含まれる)保険のデータ 

・①DMARDsを最近または常用しているRA患者集団でGC処方医がどれほど他のものと比較して処方する傾向があるか測定する尺度を作成した. 

ICD-9で2回以上RAと1週間以上診断された登録があり,1)bsDMARDまたはtsDMARD,2)MTX単剤が処方されたものをRA患者として登録し,年ごとに(変化する可能性も考慮され)GC処方を調べた. 

PsA,AS,IBDまたSLEと診断を受けている者は除外された. 

bsDMARDsまたはMTXを新規に処方されから90日以内に30日間以上GC(プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン)処方を受けている患者を長期処方患者と定義した.それぞれの長期処方患者は(MTXまたはbsDMARDsが処方された時点の)処方医が照会された.GC処方傾向はそれぞれの医師のGC量と全体のGC処方量の予測値の比で求められた. 

RA患者期待値は患者毎のGC処方される確率が患者背景をもとに算出し,求められた.GCの使用をアウトカムとしロジステック回帰モデルを用いて年齢,性別,人種,年度,DMARDの種類,新規のbDMARD/tsDMARD処方,MTX,3ヶ月先行するcsDMARDの使用,合併症(COPDなど)を変数として解析された.この解析で求められた係数(coefficient)を確率を求めるのに使用した. 

 

・②9ヶ月以上安定したDMARDs処方を受けているRA患者を対象に患者要因によらないリウマチ医の処方傾向を検証する小さなコホートを作成した. 

安定した変更のない(bsDMARD/tsDMARD/DMARD)後6ヶ月を指標日とし以降3ヶ月以上のGC5mg以上使用を主要アウトカムと設定した. 

GC処方傾向と主要アウトカムとの関連をロジスティック回帰解析を用いて他変数(年齢,性別,年度,地域,田舎か都会か,専門看護師のいる施設か,世帯収入,これまでのBio数,DMARD,NSAIDs,オピオイド,抗菌薬の使用,合併症(糖尿病,高血圧,CKD,COPD,喘息,脳血管疾患,肥満,心不全,冠動脈疾患,胃潰瘍,RA関節外病変,貧血,うつ,慢性頭痛)や既往(外来受診回数,入院回数,感染症での入院,救急受診率,悪性腫瘍スクリーニング)と解析された.年度毎にクラスター解析された. 

また処方医の背景(年齢,性別,雇用タイプ,経験年数,地域,卒業医学校が解析された.)とGC処方傾向の関連の解析も行った. 

 

 

 

結果 

■385,597名の患者で1,272,644年分の観察が得られた.56.3%がbDMARD/tsDMARD43.7%が左記の処方がないMTX処方患者であった.94.7%の患者が10名以上のRA患者を診療する医師に診察を受けていた. 

 

■Figure2. GC処方傾向のばらつきが示された.1以上がGC処方傾向,1未満がGC処方少ない.処方傾向のばらつきを認めた. 

■Table1に安定したDMARDs治療を受けている中でGC処方されている患者背景を示す.5mg以上群と未満群に分けられている. 5mg以上のGC処方と相関した変数としては年齢,男性,過去のbio使用数,最近の抗菌薬の使用,COPD,関節外RA病変,外来受診頻度,過去の入院歴,救急受診歴そしてDM,高血圧,CKD,冠動脈疾患がないことが挙げられた. 

 

■Figure3主要アウトカムとしてGC処方傾向のたかいリウマチ科医の診療を受ける患者は他の要因と独立してGC5mg以上を処方される傾向にあった. OR2.51[95%CI 2.39-2.63] 

 

■Table2医師側の要因として4019名のリウマチ医の背景とTable3それらの GC処方傾向の関連を解析した. 

女性,単独診療,10年以上の診療経験,患者診療すうが多いほどGC処方傾向(比1以上)は少なかった. 

 

この研究の良い点) 

膨大なレセプタデータのみからGC処方傾向という医師側の要因を出す努力をしている. 

経年的に処方傾向が変化することを考慮に入れ,年毎の解析を行っている. 

処方傾向と実際にGC5mg以上を長期投与された群の関連を調べたこと. 

臨床への応用) 

臨床経験年数や受診したRA患者の数が多い医師ほどGC処方傾向がわずかに少なかった. 

クリニックでの処方傾向が少ない傾向であった.(副作用の忌避が考えられるか) 

またGC処方傾向は受診する医療機関に影響する傾向があり,見解の統一指標が待たれる. 

 

Limitation) 

リウマチ専門医が診療しているRA患者以外の患者タイプがGC処方に影響している可能性は考えられる. 

GC処方傾向のばらつきは患者の重症度や再燃率が影響している可能性がある.疾患活動性での調整はできていない.短期間の再燃のためのGCや実際には使用されていない処方が含まれている可能性がある.またステロイド筋注は評価できていない.メディケア以外の保険診療を受けている若者のGC処方傾向はわからない. 

患者のADLは含まれていないので高齢者の多いmedicareで今回行っている. 

 (担当:小黒)

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