トシリズマブで治療した巨細胞性動脈炎の実臨床での再燃リスク:43人の後ろ向き解析について【Journal Club 20221019】

Real-world RisK of Relapse of Giant Cell Arthritis Treated With Tocilizumab: A Retrospective Analysis of 43 Patients

(トシリズマブで治療した巨細胞性動脈炎の実臨床での再燃リスク:43人の後ろ向き解析)

 

Jeremy Clement et al.

The Journal of Rheumatology. 2021:48:1435-1441

 

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<サマリー>

TCZを用いて加療したGCA患者の再燃を後ろ向きで検討した。再燃のリスク因子として、著者らは①初発の臨床症状に虚血症状がない、②TCZ >0.8/年以前の再燃、③組み入れ前に少なくとも6ヵ月間CS≦5mg/日にできない、④診断後6カ月以上経ってTCZを導入している、の4つを同定し、2つ以上有する症例では再燃率が1つ以下の症例に比べて高かった。

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<セッティング>

・フランスの3病院に通院中の患者。

 

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>

・後ろ向きコホート研究

 

<Population、およびその定義>

  ・ACRの分類基準または画像的にGCAと診断し、診断時年齢50歳以上で、TCZを少なくとも1回

以上投与された患者。

 

   除外基準:初回データ欠損している患者、TCZ導入後の追跡調査期間が6ヵ月未満の患者。

 

<再発の定義>

 コルチコステロイド(CS)の増量、CS離脱後のステロイド再投与、補助療法の導入

 

<交絡因子、および、その定義>

・記載なし

 

<解析方法>

・対応のあるt検定を用いて、組み入れ前後の連続変数を比較した。

・Fisher Exact testを用いてOR計算を行い、CIはBaptista-Pike法を用いた。

・無再燃生存期間をKaplan-Meier曲線で解析した、

・統計ソフトはPrism 8 softwareを用いた。

 

 

<結果>

 ・診断時の患者背景(Table 1)

  ・診断日は2007年5月から2019年1月の範囲であった。

  ・症例数は43例(うち、6名のprimary aortitis)。

  ・女性35例(18%)。

  ・18人が造影CTを施行しており、うち10人(56%)に大動脈病変を認めた。

  ・34名(92%)が画像検査または側頭動脈生検を受けていた。

  ・診断時年齢の中央値は76歳(IOR 67-81)であった。

  ・主な症状・所見は無力症、頭痛、頭皮圧痛、体重減少であった。

  ・診断時のCRPの中央値は8.9mg/dl(IOR 44-143)であった。

  ・初回治療開始時のPSLの中央値は50mg/日(IOR 40-60)であった。

 

 ・再燃時の患者背景(Table 2)

  ・組み入れ前に再燃、組み入れ後に再燃(TCZ投与下)、組み入れ後に再燃(TCZ中止後)の3群

で検討

  ・CS用量:順に8mg/日、5mg/日、0mg/日

  ・MTX使用:順に27%、13%、13%

  ・CRP値:順に2.6mg/dl、0.1mg/dl、4.2mg/dl

  ・主な症状:順にPMR・頭痛、PMR・頭痛・筋力低下、PMR・頭痛

 

 ・再燃の危険因子

  ・単変量解析の結果:初発の臨床症状に虚血症状がない

                TCZ >0.8/年以前の再燃

                組み入れ前に少なくとも6ヵ月間CS≦5mg/日にできない

                診断後6カ月以上経ってTCZを導入している

   ⇒2項目以上該当する場合は、TCZ導入後の再燃HRは6.3であった。

     (Figure 1A:実線 危険因子1個以下、点線 危険因子2個以上)

  ・Figure 1B:上記の4項目をTCZを中止した患者で評価。

           (実線 危険因子1個以下、点線 危険因子2個以上)

           →危険因子2個以上あると約3/4で1年以内に再燃した

 

 ・TCZ投与開始前後でみられた有害事象(Table 3)

  ・投与前の重度の有害事象:8例で発生(重症感染症、骨粗鬆症性骨折、骨壊死、

心血管イベント)

  ・投与後の重度の有害事象:18例で発生(重症感染症、腎癌、骨粗鬆症性骨折、

心血管イベント、重度の血小板減少・好中球減少)

 

<結果の解釈・メカニズム>

  ・虚血症状はTh1細胞系、全身・PMR症状はTh17細胞系の増悪と関連することが報告されており、TCZ投与後に強いTh17反応が起こることにより再燃することが推測されたが、vitroなどでは証明できていない。

 

<Limitation>

 ・3施設での小規模研究である。

 ・TCZの投与量や投与間隔が一定でない。

 ・再燃時画像評価がされているか不明。

 

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>

 ・GCAは実臨床ではdrug freeの症例も経験するが、一方で本研究では危険因子を有する症例は

  中止後3/4の症例で再燃しており、リスクのある症例では投与間隔を伸ばすなどの対処はしつつも

  TCZなど何かしらの薬剤投与は必要と考えられた。

 

担当:西見 慎一郎

 

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