血管炎と家族性地中海熱(FMF)の関連【Journal Club 20221102】

Association of Vasculitis and Familial Mediterranean Fever

Salam Abbara , Gilles Grateau , Stéphanie Ducharme-Bénard , David Saadoun , Sophie Georgin-Lavialle

Front Immunol. 2019 Apr 12;10:763.

 

血管炎と家族性地中海熱(FMF)の関連

 

<背景>

 家族性地中海熱(FMF)は遺伝性自己炎症性疾患であり、MEFV遺伝子変異の常染色体劣性遺伝によって引き起こされる。好中球と単球は、MEFVによってコードされるタンパク質であるピリンを発現し、IL-1βの産生につながるインフラマソームを介して自然免疫を調節する。

 いくつかの後ろ向き研究では、FMF患者におけるIgA血管炎および結節性多発動脈炎(PAN)の発生率増加が報告されている。

 ・IgA血管炎はFMF患者の2.7-7% ・PANは0.9-1.4%

 未分類の血管炎を有するFMF患者の症例報告もあり、FMFに関連する血管炎の存在を示唆している。

 →FMFと血管炎の同時発生に関する系統的文献レビューを行った。

 

<方法>

MEDLINEで2017年12月までの文献を対象に

(“Behcet Syndrome”[Mesh] AND “Vasculitis”[Mesh]) AND “Familial Mediterranean Fever”[Mesh])でサーチを行い、2人の独立した研究者(SA、SGL)によるタイトル・アブストラクトのスクリーニングが行われ、適格と判断された論文については全文を参照し、血管炎やFMFの診断に使用された基準を確認した。

 

血管炎の診断基準、研究集団、FMF関連血管炎の症例数、年齢、性別、民族性、家族歴、併存疾患、FMFおよび血管炎発症時の年齢、FMFおよび血管炎診断時の年齢、MEFV変異の有無、コルヒチン開始時の年齢、平均コルヒチン用量、現在のコルヒチン用量、 FMFと血管炎の臨床症状、FMFと血管炎の治療歴、症状とCRPに基づく治療中のFMFの活性、最後のフォローアップ時の血管炎の治療反応(寛解、部分奏効、または死亡)、アミロイドーシスの有無、腎機能、CRPの変動、および治療中の血清アミロイドAなどについて、対象論文よりリストアップされた。

 

患者の特性は、連続変数についてはStudentのt検定を用いて、カテゴリ変数はχ二乗検定またはFisherの正確確率検定を用いて統計学的に解析された。

 

<結果>

 310件の論文がリストアップされ、そのうち69件が適格と判断されたが、11件で全文が利用できず、計58件の論文が今回の解析の対象となった。

 

・FMFとIgA血管炎

 一般集団におけるIgA血管炎の有病率は、小児で3-26/10万、成人で0.34-1.8/10万であるが、FMF患者におけるIgA血管炎の有病率は、トルコとイスラエルで実施された4つの研究で評価され、2.7-7.2%であった。

 リストアップされた患者は46人。FMFおよびIgA血管炎のすべての患者が紫斑を発症し、さらに、71.7%が腹痛、8.7%が腸重積症、71.7%が関節病変、52.2%が腎病変を伴った。ステロイドは患者の53.3%に使用され、その他、PEやCY、AZP、コルヒチンなどを併用された患者もいた。

 組織学的分析がなされた患者は30人であり、50%で血管炎が、23.3%でIgAの沈着が確認された。

 IgA血管炎単独VS FMF合併例の比較では、主な臨床的特徴やステロイドの使用率について差はみられなかった。腸重積の発生率に関しては、IgA血管炎単独(0‐3%)と比較して、FMF合併例(8.7%)で増加していた。

 

・FMFとPAN

 PANの一般有病率は4.7-31/10万であった。FMF患者におけるPANの有病率は3件の研究で評価され、0.9-1.4%の範囲であった。

 リストアップされた患者は61人。ただし、20人(32.8%)の患者に糸球体病変があり、7人(11.5%)の患者がPANの1990年ACR基準を満たしていなかった。

 6.6%で心臓症状、50.8%で腹部症状・8.2%で腸管出血、31.1%で中枢神経症状、18.0%で末梢神経症状を伴った。血尿・蛋白尿の存在またはCreの増加といった腎症状は49.2%でみられた。腎周囲血腫が49.2%でみられた。ANCAは5人の患者でのみ検査され、いずれも陰性であった。 動脈瘤や血栓閉塞などの腎動脈造影の異常は、57.4%で報告された。

 組織学的分析では63.9%の症例でPANと適合した。

 治療には96%の患者でステロイドが用いられ、その他CY、AZPが用いられた。

 非HBV関連PANとFMF関連PANの比較では、FMF関連の方がより男性が多く(3.6 VS 1.6)、中枢神経症状と腹痛は多かったが末梢神経障害、体重減少、関節痛、心臓症状は少なかった。また、腎周囲血腫の頻度が高いことも特徴的であった。

 

・FMFとベーチェット病

 ベーチェット病では、IgA血管炎やPANと比較して、FMFとの関連はより薄い。

ベーチェット病患者におけるFMFの有病率が増加しているとの報告あり(5.83% VS 0.23%, Watad 2017)

 

・FMFとその他の血管炎

 Cogan症候群が1例、高安動脈炎が2例で報告された。また、未分類の血管炎が11例報告された。

 

<ディスカッション>

 IgA血管炎はFMFに合併する最も頻度の高い血管炎であった。紫斑、腹痛、関節痛などのFMFと重複する症状を示すことが多く、腸重積のリスクが増加していたこと以外は通常のIgA血管炎と大きな違いはなかった。白血球破砕性血管炎が主要な組織学的特徴であり、IgAの沈着は1/4程度の患者にしかみられておらず、IgA沈着の欠如に基づいてIgA血管炎を除外するべきではないと考えられた。

 PANについてはIgA血管炎に次いで合併例が多かったものの、腎周囲血腫の頻度が高く、糸球体病変の関与が疑われる症状も少なくないため、古典的PANとしてよりも、FMFに合併するPAN様中型血管炎と考えるのが適切かもしれない。

 ベーチェット病については、FMFとの類似性から合併しやすい可能性も考えられるが、本研究ではベーチェット病とFMFの関連性は確認できなかった。

 

・Limitation

血管炎の臨床症状が詳しく書かれたものが少なかったため310件→58件に絞り込まれていた。

記事ごとの均質性が保たれていないため、システマティックレビューとして一貫した評価が行えていない可能性がある。(血管炎の診断基準が統一されていない、臓器障害に関する基準が統一されていないなど)

 

<この論文でわからなかった点>

「FMF合併PAN」における糸球体病変の存在がどのような病態を示唆するのかがわからなかった。中小血管に対する、自己炎症の要素が強い血管炎と考えるべきなのか?

 

(担当:井上)

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