Disease activity and health-related quality of life among patients with rheumatoid arthritis with different alcohol consumption habits.
RA患者における飲酒と疾患活動性およびQOLとの関連
Lars Alfredsson, Lars Klareskog, Anna Karin Hedström
Institute of Environmental Medicine, Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden
Arthritis Rheumatol. 2023 in press
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<サマリー>
初発RA患者において、アルコール摂取が疾患活動性とQOLに関連するかを調べたSwedenのpopulation based case control研究。アルコール摂取により1年後の疾患活動性およびQOLは改善した。
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P:初発RA患者
I:アルコール摂取
C:アルコール非摂取
O:疾患活動性、健康関連QOL(1年後)
Despite its well known toxicities, alcohol is known to be antiinflammatory. The effects of alcohol use in rheumatoid arthritis (RA) is less known, but a recent study suggests that alcohol consumption was dose-dependently associated with lower disease activity and higher health-related quality of life in RA patients.
Drinkers were categorized as low or moderate consumption (52 gram/week among women and 112 gram/week among men).
At 1-year follow-up, non-drinkers had:
More swollen joints (6.6 vs 3.9)
More tender joint (7.7 vs 5.4)
More pain (31 vs 20; out of 100)
More fatigue, lower global health, and lower health-related quality of life.
Those who stopped drinking post-baseline had increases in disease activity, pain and worse health-related quality of life at 1-year follow-up.
Alcohol consumption by RA patients should be judged in the context of these benefits against any potential hazards.
<研究デザインの型>
・population based case control study
<セッティング>
・EIRA(Epidemiological Investigation of Rheumatoid Arthritis)
発症後平均7週間の初発RA患者のレジストリ
ACR 1987 かEULAR/ACR 2010 criteriaを満たす
<Population、およびその定義>
・RA患者
・EIRAに2009年以降に登録され、1年間環境因子と生活因子に関する調査を実施した
1292例(response rateは84%)
うち、アルコール摂取情報取得できない(n=8)、アウトカム欠損(n=50)、診断から
フォロー中の1年にアルコール摂取を開始した(n=6)は除外した→解析対象は1228例
<主な曝露、および、その定義>
・現在、過去のアルコール摂取、摂取量(週あたりのエタノールのg数)
・質問紙にてベースラインと1年後に調査
・2値として処理
<主なアウトカム、および、その定義>
・1年後の、腫脹と圧痛の関節痛、VAS pain、PGA、倦怠感、SF36
・質問紙にて
・中央値で二値化
<その他の取得情報>
・EIRA questionnaire とthe Swedish Rheumatoid Arthritis Quality register (SRQ)から情報を取得した
・ACPA(Immunoscan-RA Mark2 ELISA test (anti-CCP2 test)、
RF、HLA-DRB1(The HLA-DRB1*01, HLA-DRB1*04、HLA-DRB1*10 alleles)
・SRQから、ベースラインデータとして、DAS28、Visual Analogue Scale (VAS Pain) 、Patient Global Assessment (PGA) 、Health Assessment Questionnaire (HAQ)(解析対象の75%を網羅)
<解析方法>
・単変量:
カテゴリ変数:Wilcoxon-Mann-Whitney test
連続変数:Student’s t‐test
・多変量解析:logistic regression models
・傾向テスト:アルコール量(0, 1回/月, 2-4 回/月, 2-3 回/週,
4回以上/週) とアウトカムの関連をlogistic regression modelで解析
・調整変数:年齢、性別、罹病期間、ACPA、RF、身体活動量、喫煙、BMI
・csDMADSの使用の有無により層別化して解析
・追加解析
アルコール量と一年後のアウトカムとの関連を検索
アルコール量は以下の4群に分けて、傾向テストを実施
非摂取
少量摂取 (女性:<50 g/週、男性:<100 g/週)、
中等量摂取(女性:50-108g/週、男性:100-168g/週)
大量摂取(女性:>108g/週、男性:>168g/週)
<結果>
・女性および男性の平均アルコール摂取量は、それぞれ、少量と中量の境界線上にあった
(女性52g/週、男性112g/週)。
・ベースライン時のアルコール摂取量は,ACPA陰性、RF、喫煙と相関
・現在の喫煙と飲酒者と非飲酒者の間の有意差はなかった.
・非飲酒者は飲酒者に比べてベースライン時のDAS28およびHAQ値が高く、痛みが悪い
・飲酒者の飲酒頻度は、1回/月23%、2回/月43%、2回/週29%、4回/週以上5%
・ベースライン時およびフォローアップ時の飲酒者に比べ、ベースライン時およびフォローアップ時の
非飲酒者は、腫脹・圧痛関節数が多く、痛みと疲労が多く、グローバルヘルスが低く、1年後のHRQOLが低かった
・HRQOLが中央値を下回るオッズは、非飲酒者で身体面(OR 2.6, 95%CI 1.6-
4.2)、精神面(OR2.1, 95%CI 1.3-3.3)ともに高い
・VAS疼痛、疲労、グローバルヘルスについても、飲酒者に比べて非飲酒者ではアウトカムが
有意に悪かった。
・ベースライン後に飲酒を中止した人は、飲酒を継続した人に比べて、痛みや疲労感が強く、
グローバルヘルスが低く、QOLが悪い
・悪いHRQOL、飲酒者に比べて身体的側面でOR 2.5(95%CI 1.4-4.3)、
精神的側面でOR 2.7(95%CI 1.6-4.7)
・DAS28とHAQの平均値は両群で同一であり、VAS疼痛やグローバルヘルスも差はなし
<Limitation>
・飲酒、疾患活動性、QOLが質問であること
・RA治療を開始する患者がアルコール摂取を制限するよう助言されている可能性
<研究の強み>
・population based case control studyであること、追跡調査での高い回答率
・喫煙やBMIなど、比較的多くの交絡因子候補を考慮
<この結果のメカニズム>
・適応免疫における自然免疫系と炎症系への影響
・アルコールによる腸管由来の抗炎症性脂肪酸の生成誘導
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・アルコール摂取が健康に及ぼす既知の悪影響を考慮すると、メリットとデメリットの両方を考慮し
患者と話しあわねばならない。
<この論文の好ましい点>
・因果の逆転を防ぐために、縦断、および、量依存の関係性の検討から因果関係を示そうとしたこと
・論文の記載がとても丁寧
担当:矢嶋 宣幸