Improvement of Inflammation and Pain after Three Months’ Exclusion Diet in Rheumatoid Arthritis Patients
関節リウマチ患者の肉、グルテン、乳糖を避けた3か月間の食事による炎症と痛みの改善
Guagnano MT, D’Angelo C, Caniglia D, et al. Improvement of Inflammation and Pain after Three Months’ Exclusion Diet in Rheumatoid Arthritis Patients. Nutrients. 2021;13(10):3535.
研究デザイン :ランダム化比較試験
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<サマリー>
長期にわたり良好にコントロールされているRA患者において、肉、グルテン、乳糖を除去した食事(すべての乳製品およびそれらを含む食品を除く)は、これらの項目を含むバランスのとれた対照食と比較し、炎症の良好のコントロール、血圧低下などの健康上の改善をもたらすことが示された。
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<背景>
・関節リウマチ(RA)は、典型的には滑膜関節を侵す慢性全身性炎症性疾患であり、適切な治療が行われない場合、RAはほとんどの患者で重度の身体障害を引き起こすことが言われている。
・先進国で観察される自己免疫疾患の発生率の増加は、感染負荷の減少、環境およびライフスタイル要因、特に腸内細菌叢の構成に影響を与える食生活の劇的な変化と関連している。
・欧米食に代表される食物繊維の減少、脂肪や糖分の摂取量の増加は、腸内細菌のディスバイオーシスを助長し、免疫機能障害を引き起こす。
・食事を含むこれらの因子や消化管内細菌叢の変化は、RAの発現と重症化に関与していると推測されている。
・いくつかの食品は臨床的に関連した炎症作用を発揮し、地中海食、ベジタリアン/ビーガン、カロリー低減食、あるいは魚油、繊維、抗酸化剤としての栄養補助食品はすべて、RAの臨床活動において何らかの改善をもたらすことが示された。
・赤身肉, 乳製品、特に乳糖、グルテンの消費は、関節炎やその増悪の原因として指摘されている。
・本研究では、長期にわたり良好にコントロールされているRA患者において、肉、グルテン、乳糖を除去した食事(すべての乳製品およびそれらを含む食品を除く)の効果を、これらの項目を含むバランスのとれた対照食と比較し、3ヶ月間追跡調査した。
<方法>
【適用基準】
米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ連盟(EULAR)の分類基準を満たすRA患者40名を対象とした。
生物学的製剤(b-)と従来型製剤(c-)の併用DMARD(n=7)、生物学的製剤の単独療法(n=22)、c-DMARDのみ(n=11)で、少なくとも1年間最適な治療を受け、疾患活動性は安定していている。
低用量ステロイド療法(プレドニン7.5mg相当/日以下)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)または鎮痛剤の時々の使用は研究期間中許可された。
・除外基準
併存疾患(糖尿病、脂質異常症、セリアック病)、中・高用量のコルチコステロイドによる治療(すなわちプレドニゾン換算で7.5mg/日以上)、現在または過去の肉・グルテン・牛乳を避けた食事療法。
【介入】
・登録された患者
肉、グルテン、ラクトースを除いた食事
(A群 56%が炭水化物、16%がタンパク質、28%が脂肪。動物性タンパク質では魚(50.1%)、植物性タンパク質では小麦粉製品(16.1%)、豆類(19.3%)、果物・野菜(14.5%))
またはバランスのとれた食事
(B群 炭水化物56%、タンパク質17%、脂肪27%であった。タンパク質摂取の主な寄与者は、動物性タンパク質では、鶏肉や七面鳥などの鶏肉(28.8%)と牛乳(製品)(7.1%)、植物性タンパク質では、小麦粉製品(31.1%)、豆類(15.7%)、果物や野菜(17.3%))
【主要評価項目】
被験者募集時(Time 0:T0)には、全例に関節の客観的な物理検査によるRAの臨床評価を行い、28関節の疾患活動性スコア(DAS28)を算出した。痛みの評価にはVisual Analogue Scale(VAS)を用い、またShort Form Health Survey (SF-36) とHealth Assessment Questionnaire (HAQ) を用いて病状がQOLにどのような影響を与えるかを患者に質問した。RA の活動性は、臨床検査データおよび身体計測値で評価した。上記のすべての測定は、A群、B群ともに食事療法3ヶ月後(T1)に繰り返された。T1のフォローアップ訪問時に、患者は処方された食事療法の遵守について尋ねられ、これは3ヶ月の研究を完了した人について合計された。
【方法】
2つの実験群のいずれかに無作為に割り付けられた。
統計解析 :カイ二乗検定、ノンパラメトリック統、Spearmanの順位相関係数
データ解析 :GraphPad Prism 6 Software, version 6.01, 2012
【結果】
・年齢(平均 ± SEM グループ A: 50.60 ± 2.24 歳、平均 ± SEM グループ B: 54.10 ± 2.09 歳、p = 0.269 )と主要な身体測定値において、各グループはほぼ同じであった。
・どちらの食事も約1500キロカロリー(Kcal)/日の摂取量を与え、コレステロール(300 mg/日未満)、飽和脂肪酸(総エネルギー摂取量の10%未満)、オリゴ糖(総エネルギー摂取量の15%未満)、食物繊維(25-30 g/日)に関する現行の指針に従って最適化されたものであった。赤身肉は両食事ともなし、乳製品はA食ですべて除去した。
・T1 の前に 12 例が試験から離脱し、処方された食事から逸脱することなく 3ヶ月間を終了したのは、A 群 15 例、B 群 13 例であった。
・VAS スコア
A群では、食事療法後、VASの有意な減少が認められた(T0中央値:50、IQ:35-80、T1中央値:40、IQ:10-60、p=0.003)。対照食を与えたB群では、有意ではなかった。
・DAS 28 スコア
いずれの食事療法の前後でも有意な差はなかった。
・SF-36スコア(食事開始時(T0)と3ヶ月の食事後(T1)における患者の身体的および精神的健康の全体的状態を示している。なお、数値が高いほど健康状態が良好であることを示している。)
A群では、T1スコア(中央値:59、IQ:46-74)がT0値(中央値:42、IQ:30-54)に対して有意に増加(p<0.001)したが、B群では有意な変化は検出されなかった。T1での差は、食事療法Aの結果を支持する傾向があった(p = 0.056)。
・HAQ テスト
患者の身体的、心理的、社会的次元の項目は、スコアが低いほど QOL が良いことを示すように構成されている。A群に属する患者においてのみ有意(p<0.05)に達した。
・身体測定値
T0時にA群またはB群にランダムに割り付けられた患者は、考慮したすべての変数について有意な差はなかった。2つの食事療法を3ヶ月間行った後、患者は体重とBMIの有意な減少を示した。
両食事療法は、ウエストおよびヒップ周囲径の減少に有意な効果を示した。
A群では収縮期(SYS)(p = 0.003)と拡張期(DIA)(p = 0.025)の動脈圧が有意に低下したが、B群ではこれは起こらなかった。
A群では、体重、BMI、脂肪量の減少は、SF-36質問票のVスコアの増加と有意に相関していた(それぞれrho = -0.527, p = 0.038; rho = -0.546, p = 0.045; rho = -0.510, p = 0.033,)。
B群では生じた体重減少がHAQと有意に相関していた(rho = 0.586, p = 0.044)。
空腹時インスリン値、血中脂質プロファイル、総タンパク質、アルブミンに有意な変化は記録されなかった。
血中レプチン濃度は、A群、B群ともに3ヶ月間の食事療法により有意に低下したが、アディポネクチンは影響を受けなかった。
白血球数、CRP、トランスフェリンはA群で有意に減少した(p = 0.013)。
3つのサイトカイン(TNFα、IL-10、INF-γ)の血中濃度は、いずれの食事療法の前後でも有意差はなし。
<Limitation>
・脱落者が多く、主に長期にわたって厳しい食事療法を維持することが難しく、最終的な研究グループは28人のRA患者に絞られることとなった。
・患者はすべて女性で、過体重または肥満であったため、すべての症例を代表するものではない可能性がある。
・個人の病歴も、進行中の治療や過去の治療も異なっていたかもしれない。
<結果の解釈>
・RAの症状悪化の疑いがあると報告されている3つの一般的な食品を魚類を含めて除外することは、標準的な減量プログラム(B食)で得られるものと比較して、過体重の患者にとってさらなる健康上の利益をもたらす可能性がある。
・RA患者の改善の基礎となるメカニズムの解明が不十分であること、あるいは、より効果的な薬剤の利用が可能になり、食事による代替療法が魅力的に映らず、さらに、すべての食事介入は患者の日々のライフスタイルや食行動の変化を必要とし、それには献身、忍耐、説得、そして時間が必要である。
担当:郡司 竜太郎