全身性自己免疫性疾患患者に対する、  SARS-CoV-2の外来治療による転帰  【Journal Club 20230419】

Outcomes with and without outpatient SARS-CoV-2 treatment for patients with COVID-19 and systemic autoimmune rheumatic diseases: a retrospective cohort study

Grace Qian , Xiaosong Wang , Naomi J Patel , et al.

<サマリー>
リウマチ・自己免疫疾患における外来でのCOVID-19治療は重症化リスクを低下させる。

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<セッティング>
米国マサチューセッツ州ボストンのMass General Brigham Integrated Health Care System(14の病院とプライマリケアまたは専門外来センターを含む多施設の医療システム)
リウマチ・自己免疫疾患のある18歳以上の患者で、2022年1月23日から5月30日までにCOVID-19を発症した患者

<研究デザインの型>
レトロスペクティブ・コホート研究

<population, およびその定義>
リウマチ・自己免疫疾患:指標日前2年以内にリウマチ・自己免疫疾患の国際疾病分類(ICD)-10コードが少なくとも2つあり、少なくとも30日間離れている。指標日前12ヶ月以内の疾患修飾性抗リウマチ薬の処方または指標日前6ヶ月以内のグルココルチコイド処方があるもの。変形性関節症、線維筋痛症、結晶性関節炎は除外。
COVID-19の発症:SARS-CoV-2 PCRまたは抗原検査陽性、または電子カルテのCOVID-19フラグ陽性、またはその両方と定義した。電子カルテからデータを収集するMass General Brigham Research Patient Data Registryを用いて、COVID-19を発症した患者を特定した。COVID-19フラグ陽性はCOVID-19の確定診断を示し、医療機関や診療所に報告された在宅迅速抗原測定や外来治療の発注・実施時を示す。指標日は、調査日内の最初の陽性検査またはフラグの日付と定義した。

<方法>
外来でのSARS-CoV-2治療を医療記録のレビューによって確認した。
経口外来SARS-CoV-2治療を受けた患者のうち、電子カルテに記録されたCOVID-19リバウンドを起こした患者を特定するために、カルテレビューを実施した。
免疫調節薬は、指標日以前の処方データを用いて特定した。

<主なアウトカム、およびその定義>
・主要アウトカムは重症COVID-19の発症:30日以内の入院または死亡
・COVID-19リバウンド:経口外来レジメン完了後7日以内のSARS-CoV-2検査が陰性、その後新たに陽性となった記録、ほとんどまたはすべての症状が改善されレジメン完了後7日以内のCOVID-19症状の再発を示す文書。

<解析方法>
外来でのSARS-CoV-2治療と外来治療なしとの関連は、多変量ロジスティック回帰分析を使用して評価された。

<結果>
・2022年1月23日から5月30日の間に、704名の患者が解析に含まれた。
(平均年齢58-4歳[SD 15-9]、536名[76%]が女性、168名[24%]が男性、590名[84%]が白人、39名[6%]が黒人で、677名[96%]はSARS-CoV-2のワクチンを受けていた;table1 )
・704例中426例(61%)が外来で何らかのSARS-CoV-2治療を受けた。ニルマテルビル-リトナビル307例(44%)、モノクローナル抗体105例(15%)、モルヌピラビル5例(1%)、レムシビル3例(1%未満)、併用療法6例(ニルマテルビル-リトナビル+モノクローナル抗体で4例、モルヌピラビル+モノクローナル抗体の併用が2例);table1
・SARS-CoV-2外来治療を受けた患者の割合は、時間経過に伴い増加した。;figure1
・704人中347人(49%)が関節リウマチ、113人(16%)が乾癬性関節炎、87人(12%)が全身性エリテマトーデスであった。704人中484人(69%)が従来の合成DMARDsを使用し、最も多かったのはメトトレキサート(232人、33%)とヒドロキシクロロキン(214人、30%)であった。258名(37%)の患者が生物学的製剤を使用し、最も多かったのはTNF阻害剤(144名、20%)だった;table2
・704名の患者のうち、COVID-19指標日から30日以内に入院が58名(8-2%)、死亡が3名(0-4%)であった。外来SARS-CoV-2治療を受けた患者のうち、426人中9人(2-1%;死亡1人)が重度のCOVID-19を発症したのに対し、外来治療を受けなかった278人中49人(17-6%;死亡2人)が発症した;table3
ニルマテルビル-リトナビルによる治療を受けた307名のうち、4名(1-3%、死亡1名)が重度のCOVID-19を発症した。モノクローナル抗体による治療を受けた105名の患者のうち、5名(4-8%)が入院した。モルヌピラビル、レムデシビル、または併用療法を受けた14人の患者には、重度のCOVID-19転帰は発生しなかった。ワクチン未接種の患者27名では、2名(7-4%)に重篤なCOVID-19の転帰が見られ、これらの患者はいずれも外来治療を受けていなかった。
・死亡例:1例はプレドニゾンおよびメトトレキサートによる治療を受けた巨細胞性動脈炎の高齢男性で外来SARS-CoV-2治療を受けておらず、COVID-19肺炎で入院し、多臓器不全で死亡した。1例は転移性前立腺癌およびエタネルセプトによる治療を受けた関節症性乾癬の高齢男性で外来SARS-CoV-2治療を受けておらず、COVID-19肺炎、全身衰弱および疲労で死亡した。1例は、メトトレキサートによる治療を受けた関節リウマチの高齢女性でニルマテルビル-リトナビルによる外来治療を受けており、発熱と激しい腹痛で入院し、腹膜癌腫症と判明し、腸管穿孔を起こして死亡した。

<結果の解釈・メカニズム>
・抗ウイルス薬またはモノクローナル抗体による外来 SARS-CoV-2 治療は、外来治療を行わない場合と比較して、重度の COVID-19 転帰の確率が大幅に低いことと関連していた。
・COVID-19の外来治療は研究期間中に頻度が増加し、最も一般的な外来治療はニルマテルビル-リトナビルとモノクローナル抗体であった。
・外来 SARS-CoV-2 治療を受けた患者のうち、COVID-19リバウンドの有病率は7~9%であったが、これは電子カルテによる記録が義務付けられているため低めに見積もられている可能性がある。
・ワクチン接種を受けた集団であっても、免疫抑制者は外来での早期のSARS-CoV-2 治療が効果があると思われる。
・他の集団や、今回の研究において使用頻度の低い治療(モルヌピラビル(1%)、レムデシビル(1%未満))を受けた場合にも同様の有益性のパターンが観察されるかどうかについては、さらなる調査が必要である。

<Limitation>
・本研究はCOVID-19のワクチン接種率が高い単一の地域から得られたものであり、他の環境に一般化できない可能性がある。
・家庭用抗原検査を使用し、その結果を医療従事者に知らせなかった人など、すべてのCOVID-19症例を特定できなかった可能性がある。
・ニルマテルビル・リトナビルの禁忌、健康の社会的な要因、ケアへのアクセスなど、測定不能な交絡が結果に影響を与えた可能性がある
・COVID-19のリバウンドがあったにもかかわらず、それが記録されていない患者がいる可能性がある。

<この論文の好ましい点>
・オミクロン株の流行や、ワクチン接種状況など現在の状況と近いため、実臨床に応用可能と考えられる点。

担当:小西典子

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