A Phase 2 Trial of Peresolimab for Adults with Rheumatoid Arthritis.
RA患者に対するPeresolimabの効果の検証:Phase2 study
Tuttle J, Drescher E, Simón-Campos JA, Emery P, Greenwald M, Kivitz A, Rha H, Yachi P, Kiley C, Nirula A.
Eli Lilly, San Diego, CA
N Engl J Med. 2023 May 18;388(20):1853-1862.
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<サマリー>
難治性の中-重症RA患者を対象として、PD-1アゴニストのperesolimabの効果、安全性をみた4第二層試験。12週での疾患活動性の変化はプラセボ群より700mg投与群にて、優位に低下した。安全性も変わらなかった。
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P:難治性の中-重症RA患者
E:peresolimab700mg、300mg
C:プラセボ
O:疾患活動性の変化(12週間後)
<背景>
PD-1は活性化T細胞に多く発現しており、T細胞の活動性を抑制する。
ヒト化IgG1モノクローナル抗体であるperesolimabは、PD-1に結合して活性化させるアゴニストである。
RA滑膜t細胞での発現も報告されている。
<研究デザインの型>
・phase 2a, 二重盲検、無作為化, プラセボコントロール
<Population、およびその定義>
・1つ以上の従来型の合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)、OR 1つ以上の生物学的製剤(bDMARD)OR 分子標的薬(tsDMARD)による治療で効果不十分、効果低下または許容できない副作用が発現した中等度~重度の活動期RA成人患者
・18歳以上
・EULAR/ACR 2010 criteriaをスクリーニングの3M前に満たす
<主な介入、および、その定義>
・peresolimab 700mg群、300mg群、プラセボ群に2:1:1で無作為に割り付け
・4週ごとに静脈内投与
・以下の治療は許容
経口MTX 25mg以下/週
非経口MTX 20mg以下/日
HCQ 400mg以下/日
サラズスラファピリジン 3000mg以下/日
レフルノミド 20mg/日
NSAIDs
PSL 10mg以下/日
<主なアウトカム、および、その定義>
・プライマリ:12週の疾患活動性(DAS28-CRP)のベースラインからの変化
・セカンダリ:
12週のACR20, ACR50, ACR70 responses
ACR20, ACR50, ACR70のindividual domainの改善
CDAI、SDAIのベースラインからの変化
SF36
<解析方法>
・modified intention-to-treat(一回でも薬剤やプラセボを投与された患者を対象)
・logistic-regression model
・mixed-effects model for repeated measures
<結果>
・2021/1/4から2022/1/10の間に、172名の患者さんをスクリーニング
・合計98人の患者が、ペレゾリマブ700mg(49人)、ペレゾリマブ300mg(25人)、プラセボ(24人)の投与
・両群で背景は同様。
・84%は女性で、ベースライン時の平均年齢は51.7±12.6歳
・ベースライン時の平均罹病期間→10.0±8.0年、平均DAS28-CRP→5.9±0.8
・42%が生物学的製剤またはtsDMARDsの投与歴
・DAS28-CRPの12週目のベースラインからの変化は、ペレゾリマブ700mg群がプラセボ群より有意に大きかった(ベースラインからの変化の群間差、-1.09;95%信頼区間、-1.73~-0.46;P<0.001)(表2、図1A)
・28関節中の圧痛関節数と腫脹関節数は、プラセボに対してペレゾリマブが有利な結果
・CRPと患者VASでは差はなし
・主要な副次的アウトカムの結果は表2
→ACR20達成率についてはperesolimab 700mg群がプラセボ群より良好(71% vs.42%)、ACR50達成率(39% vs.21%)、およびACR70達成率(20% vs.17%)については両群で差なし。
→ペレゾリマブは、プラセボと比較して、患者VAS、SF-36の精神的および身体的要素のスコアでは差なし(表2)。
・副作用:3つの試験群でperesolimab 700mg群29%、peresolimab 300mg群32%、プラセボ群38%と同様(表3)
・period2(14週目から24週目)の副作用→試験群で同様であり、どの群においても重篤な有害事象、死亡、投与中止はなし
・12週目における臨床検査値には、試験群間で重要な差はなし(表S4)。
<Limitation>
・12週目と試験の期間が短いため、結果と安全性の評価には限界
・サンプルサイズが小さい
<研究の強み>
・生物学的製剤やtsDMARDsによる前治療で十分な効果が得られなかった患者さんを組み入れたこと。これらの患者さんは、一般的に関節リウマチの臨床試験で奏効率が低い。
<この結果のメカニズム>
・免疫チェックポイント分子を介したT細胞活性の低下
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・T細胞のコントロールという観点では他の疾患にも適応できる可能性
・今後の悪性腫瘍の出現に注意は必要
<この論文の好ましい点>
・サンプルサイズ計算を含め型通りの記載がなされてる
担当:矢嶋宣幸