慢性腎臓病患者に安全に使用でき、有効性のある生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬は?【Journal Club 2024/8/7】

Efficacy and safety of first- line biological DMARDs in rheumatoid arthritis patients with chronic kidney disease
慢性腎臓病患者に安全に使用でき、有効性のある生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬は?
Yusuke Yoshimura , Masayuki Yamanouchi , Hiroki Mizuno , Daisuke Ikuma, Ryo Koizumi, Shigekazu Kurihara, Yuki Oba , Tatsuya Suwabe , Yuichiro Sawada, Hisashi Kamido, Hisashi Sugimoto, Masato Mizuta, Akinari Sekine , Eiko Hasegawa, Yoshifumi Ubara , Naoki Sawa
Nephrology Center and Department of Rheumatology, Toranomon Hospital Kajigaya, Kawasaki, Kanagawa, Japan
Ann Rheum Dis 2024;0:1–10

——————————————————-
<サマリー>
CKD患者では、感染の発生率が有意に高く、アンカードラッグであるメトトレキサートの使用は制限される一方で、関節リウマチの管理が不十分であると腎機能の低下が促進される。これに関連して、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)は、CKD患者のRA管理の有望な基盤となる可能性がある。とくにHD患者においては、追跡期間を延長し、一定数の患者を対象に、bDMARDの包括的なモダリティの有効性と安全性を検討した研究はない。
——————————————————-

<セッティング>
・2004年1月から2021年12月にかけて日本の虎の門病院(東京、神奈川)で実施された関節リウマチ患者を対象としている。

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・後ろ向きコホート研究

<組み入れ基準>
・関節リウマチ患者については、2010年ACR/European League Against Rheumatismによって特定された分類基準に適合していたものとした。そのうち虎の門病院で1剤目のbDMARDsを導入されたものとした。
・また、16名の患者がbDMARDsの使用時期や中止時期が不明であったことで除外をされている。

<主なアウトカム、および、その定義>
・主要アウトカム…bDMARDの36カ月間継続率であった。bDMARDモダリティの開始から中止までの期間として定義
・副次的アウトカム…DAS28-CRP、DAS28-ESR、PSLの用量、および中止の理由の割合が含まれていた。中止の理由は、担当のリウマチ専門医によって次の4つのカテゴリーのいずれかに分類された。:(1)効果がない (2)感染症 (3)副作用(感染症以外) (4)その他。

<解析方法>
①ベースライン特性については、すべての患者を腎機能ごとに3群(30,60ml/min/1.73m2を境に)、bDMARDのモダリティごとに3群(TNFαi,IL-6i,CTLA-4Ig)に分けて解析
②全体的な有効性と安全性を評価するために、上記のカテゴリーにおけるbDMARDの36カ月の薬物保持率を比較した。薬物保持率の分析のために、生存曲線はKaplan-Meier分析によって作成した。Cox比例ハザード回帰モデルを上記のカテゴリーに従って層別化し、交絡因子の可能性を調整して、第一選択のbDMARDの中止に関するHRおよび95%信頼区間(CI)を推定した。
交絡因子として、年齢、CRPレベル、PSL用量、およびMTX用量が含まれる
③bDMARD開始後6ヶ月間のDAS28-CRP、DAS28-ESR、PSLの用量の傾向を比較した。
④腎機能によって36カ月以内の中止理由の割合が異なるかどうかを調べた。
⑤eGFR が <30 mL/min/1.73 m の患者のみに焦点を当てたサブアナリシスとして、第一選択薬のbDMARDの36カ月の薬物保持率を、非HD群とHD群の間、およびbDMARDの異なるモダリティ間で比較・検討した。

<結果>
【観察集団】
・437人のうち12人はデータが不完全で除外され、425人を解析対象とした。
・観察期間の中央値は40.8週間であった。観察期間中に死亡した患者はいなかった。
・参加者の年齢中央値は63.7±13.1歳で、76.2%が女性であった。
・CKDの病期はG1 165人 G2 140人 G3a 36人 G3b 14人 G4 27人 G5 43人であった。
・HD患者が40人であった。
・CKDの原疾患は腎硬化症が最も多く、糖尿病性腎症、IgA腎症と続いた。        
・疾患活動性は、DAS28-CRPで測定した場合4.67±1.46であった。
・使用された1剤目の生物学的製剤はは、TNFαis(インフリキシマブ112例、エタネルセプト98例、セルトリズマブ65例、ゴリムマブ45例、アダリムマブ27例)、IL-6is(トシリズマブ34例、サリルマブ2例)、CTLA4-Ig(アバタセプト)42例であった。ベースラインのeGFRは、IL-6i群で一般的に低かった。
・RAの罹患期間はIL-6i群で長く、CTLA4-Ig群で短かった。

【Figure1 A-D】腎機能群別に層別化された第一選択のbDMARDで治療された患者のKaplan-Meier生存曲線
・腎機能に応じて患者を3つのグループに分けた場合(eGFR≥60、30–60、<30 mL / min / 1.73 m2)、36カ月の薬物継続率は、すべてのbDMARDで45.2%、32.0%、41.4%
・TNFαisは45.3%、28.2%、34.0%。IL-6isは47.4%、66.7%、71.4%、CTLA4-Igは42.9%、37.5%、33.3%
・Cox比例ハザード解析において、第1選択薬の中止についての年齢、CRPレベル、PSL用量およびMTX用量で調整されたHRは、
     TNFαis HR 1.30 (95% CI 1.04 to 1.63)、IL-6is HR 0.91 (95% CI 0.35 to 2.38)、CTLA4-Ig 1.20 (95% CI 0.58 to 2.46)

【Figure2】
・図2Bは、薬剤モダリティ別に層別化した第一選択bDMARDsのKaplan-Meier生存曲線
・一次治療bDMARDsの維持率は以下の通りであった: TNFαis(34.0%)、IL-6is(71.4%)、CTLA4-Ig(33.3%)

【Table2】
・すべての患者においてbDMARDの中止理由は効果がないことであり、観察集団の中に死亡した患者はいなかった。
・一次治療bDMARDsの維持率は以下の通りであった: TNFαis(34.0%)、IL-6is(71.4%)、CTLA4-Ig(33.3%)

【Figure3】
・すべてのモダリティにおいて生物学的製剤の開始によりグルココルチコイド使用量を減量できた。

<結果の解釈・メカニズム>
・HD患者においてBio製剤を維持できていた理由としては部分的にはNSAIDによる疼痛管理に起因している可能性がある。
・IL-6阻害薬において比較的継続率が高かった理由としては、MTX非併用が可能であるなどの理由が考えられる。

<研究の強み>
・長期のフォローアップを行い、CKDのRA患者の適切なサンプルサイズをもっている
・eGFRが<30 mL/min/1.73 mの患者とくにHD患者においてbDMARDの有効性と安全性に関する初めての包括的な評価である

<Limitation>
・比較的サンプルサイズが小さい、とくにCTLA4-Ig患者が少ない
・eGFR30-60程度の患者におけるIL-6isの患者数が少ない

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・JAK阻害薬を含めた腎機能障害患者における最適な治療選択肢の模索
・HD患者のみならずPD患者でも同じことがいえるか
・HD患者において、IL-6阻害薬は本当に安全に使用できるか?

 

文責:河森一毅

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始