Corticosteroid Injections and Risk of Fracture
ステロイド注射は骨折リスクを上昇させるか?
Sytsma TT Thomas S Fischer KM Greenlund LS
Division of Community Internal Medicine, Geriatrics, and Palliative Care, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota
JAMA Netw Open. 2024;7(5):e2414316
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<サマリー>
ステロイド注射(CSI)は、筋骨格系疾患の疼痛緩和に関して重要な手段であるが、骨折リスクに対する長期的影響は不明である。本研究では、累積CSI投与量がその後、骨折リスクと関連するかを評価した。骨粗鬆症の診断を受けた患者を含めて骨折との関連性は認められなかった。
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P:2018年5月1日〜2022年7月1日までCSIを受けた成人患者7197人
E:トリアムシノロン80mg相当以上のCSIを受けた患者
C:トリアムシノロン80mg相当以下のCSIを受けた患者
O:骨折
<セッティング>
・ミネソタ州オルムステッドに住む18歳以上の成人
・メイヨークリニックにてプライマリケアを受けている患者
・電子記録を用いて特定
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・後ろ向きコホート研究
<Population、およびその定義>
・2018年5月1日から2022年7月1日までに任意のCSIを受けた患者
<主な要因、および、その定義>
・ステロイド注射
・その定義:メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、またはデキサメタゾン)
・CSIコルチコステロイドの等価量は以下のように変換
メチルプレドニゾロン1mg = トリアムシノロン1mg = ベタメタゾン0.2mg = デキサメタゾン0.2mg。
・チャールソン併存疾患指数を用いて併存疾患を定量化:ICD-9およびICD-10コードを使用して収集
・経口コルチコステロイドの使用は、処方箋に基づいて判定し、総量は以下のように変換
プレドニゾロン1mg = プレドニゾン1mg = デキサメタゾン0.15mg = ヒドロコルチゾン4.0mg = メチルプレドニゾロン0.8mg
・プレドニゾン使用量が1日あたり2.5mgを超えず、かつ30日を超える場合、および1日あたり2.5mgを超え、30日以内の場合は研究にinclude
・除外:経口プレドニゾン等価量が1日あたり2.5mgを超え、かつ30日を超える処方歴のある患者
<主なアウトカム、および、その定義>
・主要評価項目:骨折
・副次評価項目:骨折リスクが高くない(=非骨粗鬆症グループ)の患者における骨折リスク
<交絡因子、および、その定義>
・初回診断後も注射を受けたため、注射されたCSI累積量には時間変動共変量が考慮
・人口統計学的要因(初回注射時の年齢、性別、人種と民族)、チャールソン併存疾患指数、研究期間前のCSIの数、および過去の骨折(2012-2018年)
<解析方法>
・分析は3つの異なるデータセットで行われた
全体のグループ
非骨粗鬆症サブグループ(=非高リスク群)
骨粗鬆症サブグループ
・CSI累積量の違いは、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて分析
・死亡は競合イベントとして扱われ、原因別ハザードモデルを用いて、骨折が死亡の前に発生した場合、その患者は骨折時点で停止
<結果>
・平均年齢:64.4歳[14.6歳];女性4,435人[61.6%]、男性2,762人[38.4%])
・人種:174人(2.4%)アジア系、183人(2.5%)黒人、6,667人(92.6%)白人、102人(1.4%)その他
・チャールソン併存疾患指数:平均1.1(SD1.9 )
・累積CSI総投与量:トリアムシノロン換算で平均141.8 mg(SD159.0 mg )(表1)
・総CSIsは33,684回で、そのうちほとんどの患者は大関節(n = 15,040)、脊椎の関節面(n = 6,356)(表2)
・CSIsを受けた患者のほとんどは、変形性関節症または滑液包炎の診断(6,361人、88.4%)、これらの患者の一部は研究期間中に急性の結晶性関節炎のエピソードもあり(痛風また偽痛風、n = 412)。
・さらに、変形性関節症のない30人の患者が結晶性関節炎の既往あり
・変形性関節症群の一部には急性の関節痛のエピソード(膝の半月板損傷や肩の癒着性関節包炎を含む、n = 468)、血腫(n = 28)
・変形性関節症のない患者では、60人が膝の半月板損傷や肩の癒着性関節包炎、2人が血腫
・全体の少数(593人、8.2%)は炎症性関節炎を持ち、主に関節リウマチ(n = 544)(Table 4)。
・研究期間中、346人の患者(4.8%)で新規骨折(うち149件(43.1%)が典型的な骨粗鬆症の部位での骨折(表3)。
・初回CSIから骨折までの平均時間は329日(表3)。
・サブグループ分析:非高リスク群4,741人
骨折は109件(2.3%)のみで、そのうち25件(22.9%)が典型的な骨粗鬆症骨折の部位
・サブグループ分析:骨粗鬆症群1,845人
骨折は222件(12.0%)、そのうち102件(45.9%)が典型的な骨粗鬆症骨折の部位(表3)
・全体の骨折は累積CSI投与量の四分位で解析され、その4群で骨折率に差は見られず
・既知の骨折リスク因子を調整したCox比例ハザード回帰モデルでは、累積CSIの投与量全体にわたる骨折リスクとの関連はみとめず(調整ハザード比、1.04 [95% CI、0.96-1.11])(表4)。
・非骨粗鬆症群(調整ハザード比、1.11 [95% CI、0.98-1.26])や骨粗鬆症群(調整ハザード比、1.01 [95% CI、0.90-1.11])でも骨折リスクとの関連は認めず(表4およびsupTable 5)
<Limitation>
・臨床的に明らかな骨折のみが指摘され、臨床症状に乏しい骨折が含まれていない点
・主に白人を対象としている点
・ステロイド製剤ごとの比較がされておらず、製剤による体内での移行性の違いが検討されていない点
・トリアムシノロンの80mgをカットオフとしており、極めて少量での検討となっている。そのため、大量の場合や、ある時期に集中的に注射した場合などはこの結果を適応してよいかは疑問
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・筋骨格系の疼痛を訴える患者さんに対して、日常臨床において疼痛緩和目的にCSIを躊躇しなくてよい(少なくとも少量の場合)
<この論文の好ましい点>
・サンプルサイズが大きい点
・経口ステロイド投与されている患者が除外されている点
・すでに骨粗鬆症と診断されている患者が含まれている点
文責:笹倉知佳